ソールブレイン(솔브레인/SoulBrain Co Ltd)は、半導体およびディスプレイ工程用の化学素材を扱う企業であり、同分野では韓国の代表的な企業である。同社の社名は日本では「ソウルブレイン」や「ソウルブレーン」「ソールブレーン」等と訳も様々であるが、本メディアでは「ソールブレイン」と訳することとする。同社は韓国の株式市場でも人気銘柄であり、株価の上下動も激しい。
半導体素材事業では、エッチング液と洗浄液、CMP Slurry、Precursorなど、半導体製造の主要工程に必要な様々な化学素材を供給しており、同国でトップシェアを握っているとされる。半導体の微細化工程を行う企業には高純度フッ化水素も供給している。ディスプレイ部門、LCDとOLEDパネルの超薄膜工程に必要なエッチング等の有機素材を供給する。
ソールブレインは、サムスン電子やSKハイニクスなどの主要企業の半導体素材を供給している。現在、サムスンはオランダASML社のEUV装置を導入し、微細工程に大金を投じているが、ソールブレインはEUV装置での半導体製造工程に必要な化学物質も供給する。ソールブレイン全体の売上高のうち、半導体部門が58%を占めており、その中で微細工程のエッチング部門が86%を占めている。同部門は総売上高でも49%も占めている。
半導体以外でも、サムスンディスプレイやLGディスプレイにディスプレイ表示素材を供給している。ディスプレイ事業は全体の31%を占める。また、EVバッテリー用の電解液の製造事業も展開しており、その他も含めて事業全体の11%を占める。
ソールブレインが脚光を浴び始めたのは、昨年、日本が対韓国輸出規制(輸出管理強化)を行ってからだ。フッ化水素・フッ化ポリイミド、EUV用フォトレジストの3品目を規制対象にしたことから、韓国社会に衝撃が走った。そのような状況のなか、12月にソールブレイン社が高純度(12ナイン)フッ化水素の量産能力を構築したと発表したことから、大々的にその社名が報じられるようになった。これには、半導体周辺産業の国産化を掲げる韓国政府も積極的にバックアップしており、許認可などを異例のスピードで与えたとされる。

(写真:ソールブレインを訪れたソン・ユンモ産業省長官=同省提供)
同社の株価は昨年6月の46,000ウォンから今年1月には103,300ウォンを記録するなど、約半年で2倍以上に株価が上昇。「国産化」の代表株として取り扱われた。その後、3月まで株価は少なからず下がったが、3月半ばから持ち直し、4月9日現在で74,700ウォンまで回復している。昨年の売上は同社史上初めて1兆ウォン(約890億円)を突破した。営業利益は1740億ウォン(約156億円)だった。
半導体素材は日本企業が最も得意としてきた分野であり、韓国の対日依存度も高かった。フッ化水素に関しても、これまで日本が世界市場シェアの70%を占めていたとされ、サムスン電子、SKハイニックスなどの主要な半導体・ディスプレイ工場が集中している韓国市場に60%ほどを輸出してきたとされる。(韓国etnewsによる)
フッ化水素は、半導体工程中に溜まる不要な酸化膜を除去するために必須の素材であり、その純度において、99%の後に「9」が増えるたびに価格が20〜30%ほど上昇すると業界では言われているそうだ。それだけ高度の技術を要する分野で、12ナイン(99.9999999999%)の液体フッ化水素の量産設備を整えたと発表したのがソールブレインだ。韓国メディアなどによると、韓国内の需要の70〜80%を供給できるという。
韓国の電子専門メディア・ジイレック紙によると、同社のパク副社長は昨年7月の段階で、「6年前から(高純度フッ化水素の)精製工場を運用しており、既に独自精製した高純度の製品を半導体、ディスプレイメーカーに供給している」とし「数年間蓄積された精製の生産技術とノウハウをもとに、9月に第2工場の完工を目標にしている。顧客への供給量は支障がない」と述べていた。
ソールブレイン社は94年にステラケミファ社と「FECT」という会社を合弁で設立している。中央日報が昨年8月に報じたところによると「全体生産量の約70%は日本のステラケミファから高純度フッ化水素を輸入した後、添加剤などを混ぜてサムスン電子が希望する条件に合う製品を提供する。残りの30%程度は中国から原材料(無水フッ化水素)を輸入して純度を高める精製作業をして納品する」と伝えている。ステラケミファから輸入を担当するのがFECT社の役割のようだ。

(FECT社のロゴ)
最近は日本の半導体関連の素材企業の韓国進出や事業強化がよく報じられている。日本の輸出規制により、韓国政府や企業が同国産化を進めるなかでの対策であると韓国メディは伝えている。ソールブレインの12ナインフッ化水素については、同社の独自開発のように報じられているが、それ以外の可能性についても考えられるだろう。
今年3月に発表された事業報告書において同社は、「最近、半導体、ディスプレイ工程が急速に変化し、これらの顧客の技術の変化に対応できる改良された新規材料において熾烈な競争が展開されており、当社は顧客との継続協力関係を通じた新規物質の先取りを目標に努力している」と述べている。