[特集]供給力を拡大する韓国のバッテリー素材企業

 
「コリアンスリー」こと、韓国のEVバッテリー3社が好調だ。新型コロナウイルスの影響もあるとはいえ、LG化学、サムスンSDI、SKイノベーションの世界市場シェアが40%を超えた。これらの企業はさらなる生産能力の拡大を準備中だ。それに並行し、各社にバッテリー素材を供給するメーカーも動きが活発だ。

(参考記事:「コリアンスリーの世界EV電池シェア40%突破」)
(参考記事:「[特集]”コリアンスリー”によるEV電池・正極材の確保競争」)

市場調査会社SNEリサーチによると、LG化学は2020年2月のランキングにおいて、バッテリーの使用量が世界2位になった。市場シェアで29.6%、使用量は1705.2メガワット時(MWh)だった。前年同月比156.0%増の水準である。

LG化学は今年1月にすでに22.9%のシェアを占め、中国のCATLを抜き市場2位になっていた。 2カ月連続で2位を維持しており、首位パナソニックとのギャップも縮めた。サムスンSDI(5位)とSKイノベーション(6位)もランクを上げた。両社は、それぞれ6.5%、5.9%の市場シェアを占めた。コリアンスリーはすべてTOP10に入る。

コリアンスリーにバッテリー素材を収めるメーカーもこれに並行し供給力を拡大させている。韓国の素材メーカーは、エコプロビーエム、ポスコケミカル、高麗亜鉛、ロッテアルミニウム、KCFT、ドゥサンソルースなどがある。各社とも素材工場の増設を準備中だ。
 

正極材イメージ(LG化学提供)

エコプロビーエム
エコプロビーエムは韓国の浦項(ポハン)に正極材工場を設立する計画だ。SKイノベーションと正極材供給契約を締結したことによる動きだ。金額にして2兆7412億ウォン(約2400億円)の契約であり、これにより既存の生産拠点である忠清北道の清州(チョンジュ)に加え新たなラインの構築が必要となった。清州工場は3つの生産ラインを備え、年間生産能力は2万6000トン(t)の規模だ。

(参考記事:「SKイノ専用の工場建設、正極材企業の韓国エコプロビーエム社」)

エコプロビーエムはサムスンSDIとの間で正極材の合弁法人「エコプロイーエム」(ECOPRO EM)を設立することで合意している。両社は、それぞれ720億ウォン(約64億円)、480億ウォン(約43億円)を出資する。浦項にサムスンSDI専用のラインも設置する計画だ。

(参考記事:「サムスンSDIが正極材で合弁会社設立、次世代バッテリー「Zen5」に供給へ」)
(参考記事:「エコプロビーエム社、NCMA正極材を生産へ」)
 
ポスコケミカル
ポスコケミカルはLG化学と1兆8533億ウォン規模の正極材供給契約を締結した。このため、全裸南道の光陽(クァンヤン)にある栗村(イッチョン)産業団地に16万5203平方メートル(㎡)の工場を段階的に設立し、年産9万t規模の正極材を生産する計画だ。同社は正極材の原料であるフリーカーソル(前駆体)の安定確保のため、中国のファユコバルト(Huayou Cobalt/华友钴业)とも長期供給契約を結んでいる。

(参考記事:「ポスコがLG化学へのEVバッテリー素材供給を正式発表。1兆8533憶ウォン規模」)
(参考記事:「ポスコケミカル、华友钴业とフリーカーソルの長期供給契約むすぶ」)

ポスコケミカルは負極材への投資も進めている。同社は2177億ウォン(約200億円)を投じ人工黒鉛系負極材の生産工場を新設する。同工場は、年産1万6000t規模で、慶尚北道の浦項ブルーバレー国家産業団地に建設される。敷地規模は7万8535平方メートル(㎡)だ。

(参考記事:「ポスコケミカル、人造黒鉛負極材の生産拡大へ」)
 

高麗亜鉛
高麗亜鉛は、バッテリー素材の電解銅箔事業に進出する。蔚山(ウルサン)広域市との間で「電解銅箔の生産工場の新設」のMOUを締結した。同工場は、2022年10月までに、温山(オンサン)国家産業団地の近くに設立される。年産1万3000tとされる。
 
ロッテアルミニウム
ロッテアルミニウムはハンガリーのタタバーニャ(Tatabánya)産業団地内に正極箔の生産工場を建設する。投資金額は1100億ウォン(約100億円)、敷地規模は6万㎡である。今月着工し、2021年上半期に完成予定であるという。年産1万8000tとされる。

(参考記事:「ロッテアルミニウムが正極箔の工場設立へ、ハンガリーに」)
 
ドゥサンソルース
ドゥサンソルースもロッテアルミニウムと同じくタタバーニャ産業団地内に年間5万t規模の電池泊工場を設立している。同社をめぐっては、サムスンSDI、SKイノベーション、ポスコの三社間で買収争奪戦が繰り広げられているようだ。ドゥサン社の売上高は昨年2,582億ウォン(約230億円)、営業利益は382億ウォン(約34億円)だった。買収価格は最大で1兆5千億ウォン(約1400億円)に迫るだろうと予想されている。

(参考記事:「韓国ドゥサン社がEVバッテリー銅箔をルクセンブルグで生産、ハンガリーでも」)
(参考記事:「サムスン・SK・ポスコがドゥサン社をめぐり争奪戦か?銅箔・CPLなど生産」)
 

KCFTの工場全景

KCFT
SKCが買収した銅箔製造企業・KCFTは第5工場の増設投資を決定した。投資金額は815億ウォン(約72億円)で、昨年行われた先行投資分を加えると、合計1200億ウォン(約106億円)規模だ。今回の決定によりKCFTは来る2021年第3四半期までに井邑(チョンウプ)工場に年産1万トンの工場を建てる。 2022年初めの商業化が目標だ。第5工場完成後にKCFTの銅箔年産規模は4万tとなる。同社は世界で最も薄いとされる4㎛の銅箔生産技術を有している。

(参考記事:「SKCがEV車バッテリー用銅箔企業を買収」)

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