本特集記事では、去る23日に行われたLGディスプレイ社の(第一四半期決算発表後の)カンファレンスコールにおける質疑応答内容を日本語訳し掲載する。同社は次世代ディスプレイであるOLED TV用の大型パネルを独占供給するが、新型コロナウイルスの影響などにより、広州にあるOLED工場を現在も量産開始できていない。このままでは経営危機にも発展するという見方が内外メディアでも持ち上がるなか、同社幹部はどのように現状を見、どのように打開しようとしているのか?(答弁者:ソ・ドンフィLGディスプレイCFO)(可読性確保のため一部意訳あり)
(参考記事:「LGDのQ1売上、前年同期比20%減」)
(参考記事:「[特集]LGの有機ELパネル供給に狂い。五輪商戦を前に不安広がる」)
Q1.新型コロナウイルスによる広州工場の(量産開始)遅延が発生しているが、今年の大型OLEDパネル出荷量の目標に変化はあるか?
→A:広州のOLED工場はコロナの影響で、最終調整にエンジニアを十分に投入できなかった。そのため第2四半期中に調整作業を行う予定である。広州工場の稼働に関係なく、コロナで第2四半期は需要減少が予想される。米国や欧州など先進国市場の流通閉鎖に伴うものだ。あと、多くのセットメーカーの工場が消費地の近くにあるが、ほとんど生産中止状態になっている。そのため、生産削減は避けられないものと見られる。第2四半期の影響が下半期には改善されるかどうかを綿密に分析している。とはいえ第2四半期の需要減少の影響は大きいだろう。年間で見ると、当初予想していた数値より10%台の需要削減は避けられないと予想している。
Q2.プラスチックOLED(P-OLED)の損益改善はいつごろと予想しているか?
→A:前回のIR説明において下半期にかなりの取扱量を確保し業績回復が可能であると述べた。現在まで取引先との間で、開発・発売予定について緊密な協議を行っているが、まだ具体的な変化はない。コロナの影響はあるが、下半期には、上半期と比べ2倍以上の売上を上げることができる予想している。そのために努力する。
Q3.最近PC向けの需要が急増しているが、坡州(パジュ)のP-8ラインにおいて、需要が乏しいTVの代わりにIT用パネルの割当(生産)を拡大すれば収益を改善できるのでは?
→A:昨年以来、坡州第8工場の汎用TVラインは撤収している。IT専用ラインとして第8工場を運営中だが、商業用TVなどは少量生産している。状況を見て、IT用についても、もう少し生産能力確保する努力はしている。特に、パネルの問題ではなく、バックエンド側、モジュール側のキャパが問題になり得る。最近需要が急増している。モジュールラインのキャパ確保のため、主に中国の南京工場になるが、他の製品を生産していた人材を転換したり、他の製品のラインをIT用に切り替えて生産したりするなど、バックエンド側のキャパを確保し、特に資材調達に問題がないよう万全を期している。
Q4. IT用(パネル)の需要が好調のようだが、従来製品と比べてどの程度好調なのか?
→A:第2四半期には前年同期比20〜30%水準の伸びになると判断している。その後の変動はあり得るが、前年比20〜30%以上の需要の増加が予想される。ただ下半期以降のIT需要については意見が分かれる。第2四半期に大幅な需要の増加があったので、下半期には下がるという見方がある一方、製品のアップグレードなどで下半期も需要が強いという見方がある。第2四半期の増加量については、生産体制を弾力的に運営することで対応する計画である。下半期以降の需要の変化については、今から綿密に観察をしながら、当社の強みが発揮できるように準備する。
Q5. TVの業績があまりにも悪いため、中国の競合他社が攻勢をかけてくるのではないか?製品の差別化戦略をどのように考えているのか?
→A:需要の増加のなかには、エンドタイプのものもたくさん増えている。代表的なのがTN方式だが、私たちは、TN方式をやらない。私達が集中する分野であるIPS、オキサイドなどは取引先との結束がかなり強い。中国企業が短期間で同分野にキャパを増やし参入できる状況ではない。私たちのオキサイド、IPS技術基盤の需要は十分に確保できると判断している。
Q6.国内競合他社(サムスンディスプレイ)がLCD工場を予想より速く、より大胆に撤収するようだ。(これにより)LGディスプレイの戦略に変化はあるか?下半期のLCD需給はどのように考えているか?
→A:競合他社がLCD工場を撤収しても私たちの戦略に与える影響はほとんどないだろう。私たちはLCD TVの汎用製品は、もはや国内では生産していないと既に申し上げたとおりだ。国内工場は、ほぼIT用を中心に稼働している。競合他社とは、LCD製品のポートフォリオが根本的に異なるため、TV中心の競合他社工場が調整されるからといって、当社の戦略をあえて変える必要はない。
市場への影響はあるだろう。市場の状況は複雑である。コロナによる需要の減少要因があり、競合他社の工場閉鎖の影響も働く。短期的な影響に加えて、全体的なLCD需給状況を見ると、かなり多くのファブが第10世代を中心に準備がされている。現在、ノーマルな状況でも、供給が需要を超過する形になっており、短期的な影響は生じるだろう。しかし、中長期の観点から考えると、必ずしもそうではないと判断する。
Q7.第2四半期のOLED TVの需要減少幅が大きいようだが、第3四半期の見通しも明らかではない。ラインナップや目標量、OLEDパネルの比重の変化があるのか聞きたい。
→A:販売予想については、当初見込み比10%台の需要減少が予想される。しかし、OLED TVの事業戦略を変えるつもりはない。コロナ禍の市場を分析したところ、いくつかの先進国、特に欧米では、オンラインによる販売が活性化していることが確認された。一部で相当な需要低迷が予想されるが、オフラインでの流通支障をいかにオンラインで補えるか深く研究しているところだ。積極的に活用していきたい。
Q8.コロナが第2四半期に終息したとして、第3四半期にTV需要が回復すれば、中国のLCD TVメーカーが積極的に攻勢に出てくる可能性が大きいはずだ。大型OLED TVはプレミアム戦略であるため、価格競争力が劣り、需要が弱まる可能性があるという見方もあるがどう思うか?
→A:すでに第1四半期にも、一部で価格反騰があったが、ほとんどのTV用LCDパネルがキャッシュコスト(減価償却費を除くコスト)に近いレベルで、弊社でも中国企業でもオペレーティングされてきた。少しの価格反騰はあったが、下半期にその部分を大幅に犠牲にし、さらに相当なレベルの販価引き下げに出てくるかは、その時にならないと分からない。いずれにせよ、販売価格の下落によるLCDの積極展開は、常に可能性があることなので、十分に念頭に置いてOLED事業戦略を展開していかなければならならない。我々のOLEDの新規顧客は以前より増えている。今年は、ファーウェイ、米ビジオ、日本のシャープなど、かなりのブランドポジションを持った企業たちが加わった。販売能力のある新規取引先も発掘した。そのような要素と広州OLED工場の稼働が伴えば、LCD販価価格に関係なく、OLED戦略を十分に推進することができるだろう。
Q9. LGディスプレイが、中長期的に注力する製品は、OLED TVのパネルである。昨年パネルを300万枚以上供給した。今年は二倍の600万枚が市場の期待値だ。中国における生産支障の問題と世界経済の調整という懸念はあるが、500万〜600万台の生産量を達成することはできそうか?そして、800万台、1000万台はいつごろ可能か?そして、しっかりとした利益を生み出せるのはいつごろになりそうか?
→A:今年は10%以上の需要減少が予想されると既に申し上げたが、コロナが下半期以降にどのような展開になるかによって、需要の変動幅が大きく、具体的な数字を断定的に言うことは難しい。
今後、OLEDの販売数が800万枚~1000万枚に到達するのがいつかについては、もちろん生産の裏付けが必要な話にはなるが、いずれにせよコロナが今年中に完全に終息するか、来年以降には影響が生じないかなど、かなり多くの前提を仮定して申し上げるしかできない状況だ。なので、次の機会に申し上げることが適切であり、(そのときに)長期の販売、生産目標と絡めて報告できればと思う。何か申し上げるにはあまりにも変数が多い状況なので。OLED TVの黒字転換についても同様だ。坡州の工場も減価償却負担が発生した。広州工場が稼動すれば、こちらもかなりの初期固定費負担がある。両工場を連結して見る必要がある。これは当社のキャパをフル稼働できる時点がいつかということにも関連する。それがいつになると言える状況ではない。なので、将来の予測が可能となった時点で再度申し上げたいと思う。
Q10.第1四半期は設備投資規模が減価償却費を下回っているが、今後もこの流れが続くと見てよいのか?四半期ごとの設備投資負担が1兆ウォン以下に安定し、四半期減価償却費は1兆ウォン以上となっており、キャッシュフローが改善している。為替も有利に働いており、今回は税金の還付もあるようだが、全体の財務構造やキャッシュフローが本格的に改善されていると見てよいか?
→A:第1四半期のIR報告時に、相当な資産償却にもかかわらずEBITDAの範囲内で設備投資を実施することにより、財務比率を改善することができると述べたことがある。ご質問のように減価償却費の範囲内で設備投資を執行することに、当分の間、大きな変化はないだろう。短期的な四半期状況ではなく、今年、来年を見通し、ある程度の投資は遂行したので、どのようにROIを最大化するのかという観点が重要である。投資規模は償却費の範囲内で、当分の間執行する。しかし、第2四半期のTV、携帯電話などの需要縮小は、一部のIT需要で埋め合わせができるとはいえ、全体的には非常に難しい状況だ。この状況が第3四半期まで続くか可能性もある。このような点が克服されてこそ設備投資を償却費の範囲内に収め、財務構造が改善される効果を十分に見せることができるだろう。当面2四半期の困難をどのように克服するかがCFOとしては大きな課題である。
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