昨年7月、日本の経済産業省は、半導体やディスプレイ製造工程で用いられるフッ化水素・フッ化ポリイミド・EUV用フォトレジトの3品目に関し、韓国への輸出管理を強化すると発表した。その後、日韓両国のメディアおよび関連産業を大きく揺り動かした事件だ。経産省は、輸出管理上の「ホワイト国」からも韓国を外し、異なるカテゴリー(グループB)に移した。
韓国側は、輸出規制であると大きく反発。その後、WTO(世界貿易機関)への提訴や、日韓間のGSOMIA(軍事情報包括保護協定)の破棄などを決定し、上記3品目の国産化および第三国調達、半導体産業の素材・部品・装置の国産化政策などを推進した。
一気に緊張した両国関係だが、米国の要請もあり、昨年12月の日韓首脳による会談と前後して軟化。12月16日に日本の経済産業省と韓国産業省(産業通商資源部)による輸出管理政策対話が行われた。20日には経済産業省が、3品目のうちフォトレジストに関しては(個別許可を包括許可に)緩和した。韓国側も、WTO提訴やGSOMIA終了の措置を「猶予」した状態だ。
その後、新型コロナウイルスの影響もあり、輸出管理政策対話は3月に一度しか行われていないが、韓国側は、日本側が輸出規制(輸出管理強化)の理由として提示した貿易管理制度の改善を実施した。
(参考記事:「韓国産業省「輸出規制理由すべて改善」、日本側に回答要請」)
韓国産業省は5月12日のブリーフィングにおいて、当時、日本側は、輸出規制について▲輸出管理の人材‧組織の脆弱性▲韓国の在来式武器キャッチオール規制の法的根拠が不十分▲3年間、日韓間の政策対話が開かれず信頼毀損などを根拠として挙げたと説明。
同省は、韓国の輸出統制制度の運営に問題がないことを強調しつつ、日本側が要求した方向での輸出管理体制も強化したとし、貿易安全保障に関わる組織の一元化や、専門性の強化、組織改編、関連法の立法予告などの施工したことを発表した。その上で、「輸出規制とホワイトリストの問題解決策と関連した日本側の具体的な立場を今月末までに返答してくれることを要請する」と述べた。
日本側はこれまで、対話は続けるという原則的な立場以外は特に発してはいない。29日、韓国メディア最大手の聯合ニュースTVは「期限は明後日(31日)だ」とし、「しかし、日本が態度を変える可能性は低く見える」と報じた。韓国側が期限を指定したことで、各紙でも「カウントダウン」のような報道が一部みられる。
日本側が具体的な回答をしなければどうなるのか?韓国の国営放送KBSは26日、返答がない場合には、WTO提訴とGSOMIA終了という選択肢が再び韓国政府の選択肢として浮上するという見方を示した。KBSは、「このうち、よりウェートが高いのはWTOに提訴する方策」と伝えた。
一方で、日本の警察庁公安部は26日、生物兵器製造に転用可能な噴霧乾燥装置「スプレードライヤ」を無許可で韓国企業に輸出したとして、横浜市の日本企業社長らを外為法違反の疑いで(再)逮捕した。共同通信によると、公安部は輸出先の韓国企業が装置をリチウム電池の製造に使っていた可能性があるとみている。
(参考記事:「警視庁、韓国への不正輸出疑いで化学機械メーカー社長ら逮捕」)
このことが日本政府の回答に影響するのか、現時点では分からないが、韓国紙もこの事件については報じており、中央日報は27日「今回の逮捕は、韓国政府が日本に要求した輸出規制(輸出管理強化)の回答期限を5日前に控え行われた」と伝えた。
日本経済新聞は20日、フッ化水素大手である日本企業のステラケミファと森田化学工業が、輸出管理厳格化の影響で、いずれも3割ほどフッ化水素の販売が減少したことを挙げ、「日韓政府のにらみ合いは日系企業の現場にしわ寄せをもたらしている」と伝えた。
他方で、米国は今月15日以降、ファーウェイをはじめとする中国企業などへの制裁強化措置を立て続けに発表した。これを巡っては外国企業も対応を求められ、世界の半導体業界に与える影響も小さくないと予想される。
韓国側が要請する期限が迫るなか、日本側の回答が注目される。