[特集]日韓報道からみる、最近のアップルの有機ELパネル調達動向

今月に入り、アップルのiPhoneとOLED(有機EL)パネルに関して、いくつからの気になる報道が日本と韓国で報じられている。アップルはスマホ市場で世界3位のメーカーであり、パネル業界への影響は小さくない。主な報道について以下に紹介する。
 

●iPhoneがすべて有機EL採用に?

日本経済新聞は8日、複数の部品サプライヤー関係者のコメントを基に、今年下半期に発売される5G(第5世代移動通信)に対応した新型iPhone4機種すべてにOLED(有機EL)パネルを搭載すると報じた。画面サイズは5.4インチ・6.1インチ・6.7インチの三種類であり、主にサムスンが供給すると伝えた。

OLEDは、自己発光性、すなわち自ら光を出す性質の有機化合物を使用して画面を表示する。既存の液晶ディスプレイ(LCD)とは異なり、バックライトを使用せず高コントラスト比により色鮮やかな映像を実現する。様々な形状への加工もしやすい。

アップルは2017年から液晶とOLEDを併用。昨年出したiPhone11シリーズでは、最上位機種のみOLEDが搭載された。OLEDパネルの価格が液晶パネルよりも2倍近く高いからである。

日経新聞は、OLEDを採用するメリットとして、液晶より軽い点にあるとし、「次世代通信規格「5G」に対応すると消費電力が増えるため、大型のバッテリーを採用することになります。有機ELを採用すれば端末全体の重量を抑えることが可能」であると説明した。

(参考記事:「中小型OLEDパネル昨年6憶台突破。韓国が8割も中国勢が急成長」)

しかし、「スマホ市場で世界3位にあるアップルの有機ELシフトは、パネル関連企業の勢力図を塗り替えかねない」とし、スマホ向けOLEDパネルの約9割を握るとされるサムスンの存在について強調した。日経の記事は韓国でも注目が高く、確認できるだけで30紙以上が引用報道した。
 

アップルは「タッチ一体型」パネルを希望か

韓国の専門メディアである「電子新聞」(etnews)は19日、アップルが来年からiPhone全モデルに「タッチ一体型」OLEDディスプレイを搭載すると報じた。

同紙は、業界情報として、「アップルが2021年のiPhone用ディスプレイ規格にタッチ一体型OLEDを注文した」と伝えた。

既存のタッチ入力は、パネルにタッチセンサーフィルムを付着する方式で実装される。しかし、タッチ一体型は、別のフィルムを使用せずにパネル内部にタッチセンサーを入れる。既存のパネルよりディスプレイを薄くし、コストを低減することができるという。

同紙によると、アップルは「今年の秋に発売するiPhoneの12(仮称)に初めてタッチ一体型を導入する」とされ、「iPhoneの12に適用される△5.4インチ△6.1インチ△6.7インチパネルのうち5.4インチと6.7インチのパネルがタッチ一体型に作られる」と伝えた。

このタッチ一体型OLEDはサムスンディスプレイが供給するという。同社は「ワイオクタ(Y-OCTA)」と呼ばれるタッチ一体型OLED技術を保有している。一方で、6.1インチパネルについては、サムスンディスプレイの他にLGディスプレイも納品するするという。

LGディスプレイは最近、中小型OLED生産ラインの坡州E6にタッチ一体型OLED生産のための装置を構築し始めているとされる。同社のタッチ一体型OLED技術は「TOC(Touch On Cell)」であるとされ、すでにファーウェイの「P40 Pro」にも供給したと伝えられている。
 

アップルからサムスンへの「OLED違約金」の存在

13日(現地時間)、ディスプレイ専門調査会社DSCCは報告書において、「アップルがサムスン電子と約束した有機発光ダイオード(OLED)を一定量購入できなかったとして補償した金額は1兆1400億ウォン(9億5000万ドル)」であると言及した。ITメディアであるCNETがこれを報じ、日韓メディアも引用報道した。

(参考記事:「アップルからの違約金、サムスンのQ2実績を押上げか?」)

伝えられるところによると、アップルと(サムスン電子の子会社である)サムスンディスプレイが契約した内容は、アップルがiPhoneの製造用に一定量を確保するが、実際の注文数が減れば、サムスンが被る損失についてアップルが違約金を支払うという内容であったという。

アップルによるOLEDの購入が目標数に達しなかったのは、新型コロナウイルス感染症の影響により、iPhoneの販売台数が前年より減ったためと推定されている。アップル側は昨年も一定額の違約金をサムスン電子に支払ったとされる。

韓国各紙によると、同違約金の取り決めについては両社とも明らかにしていなかったとされる。サムスン電子の直近(第二四半期)の営業利益が、証券各社の予想平均に比べ1兆ウォン以上高かったことから、アーニングサプライズの原因はアップルからの違約金によるものだったようだと報じられた。

一方で、韓国経済新聞は16日、アップルによる違約金の支払義務は今年限りであるとした上で、「サムスンディスプレイへの違約金の支払いが終わる今年は、LGディスプレイ、中国BOEなどがアップルにOLEDパネル出荷しようと本格的に乗り出す。これに対して一部では、Appleが部品メーカーの多様化を本格化させたとの観測もある」と伝えている。

BOEについては、以前からアップルへのパネル供給可能性が取り沙汰されてきたが、先に挙げた電子新聞(19日)によると、「BOEはまだアップルの品質基準を満たすことができておらず、タッチフィルムタイプOLEDも納品していない」とし、「タッチ一体型OLED量産はBOEにはまた別のハードルとして作用する可能性が強い」と報じている。
 
 

執筆:イ・ダリョン=編集長

 
 

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