二酸化炭素とメタンを反応させ、水素を生産する新しい触媒が開発された。温室効果ガスを分解し、環境にやさしいエネルギーを生産できる、一石二鳥の技術として注目を集めている。
ウルサン科学技術大学校(UNIST)エネルギー化学工学部のキム・ゴンテ教授の研究チームは、性能と安定性の優れたメタンドライリフォーミング用触媒の開発に成功した。メタンドライリフォーミングは、温室効果ガスであるメタンと二酸化炭素を化学反応させ、水素と工業原料として使われる一酸化炭素を生産する技術である。触媒を用いることで、化学反応に消耗されるエネルギーを減らすことができる。
今回、研究チームが開発した触媒は、表面に三元合金(Ternary alloy)ナノ粒子が生えている構造である。合金ナノ粒子に3種類の金属元素(コバルト、ニッケル、鉄)が含まれているため、既存の触媒よりもメタン分解(解離)反応をより良く促進する。
第一著者のジュ・サンウク研究員は、「合金ナノ粒子がメタンの化学結合をより緩くし、分解を促進する」と説明し、「この現象の原因は、鉄の添加によって現れた合金ナノ粒子の電子構造変化(d-band shift)にある」と述べた。
今回開発された触媒1gを使うと、900℃で1秒あたり1.2×1019個のメタン分子を変換することができる。これは、既存の単相触媒に対して約84.8%増加した数値である。また、750℃で350時間以上作動するなど、優れた安定性を見せた。
一般的に、メタンドライリフォーミングにはニッケル金属基盤触媒を用いることが多い。ニッケル金属基盤触媒は優れた性能を持つが、高温で触媒粒子同士が固まる問題や、反応を繰り返すことで触媒表面に固体炭素が積もる問題がある。
研究チームが開発した触媒は、「スマート自己再生(溶出、exsolution)触媒」の一種である。触媒粒子の内部の金属元素が反応を繰り返し、表面に湧き上がる溶出現象を利用している。溶出現象によって表面の金属ナノ粒子が再生されるため、触媒の性能が長く維持される。特に、ニッケル(Ni)またはコバルト(Co)金属を溶出させることで、ナノ粒子合金が作られ、性能が向上する。
この研究は、触媒粒子の表面に鉄を薄くコーティングすることで、ニッケルとコバルト金属がより表面に浮き上がるようにした。また、溶出したニッケル、コバルト粒子が鉄と混ざり、新たな三元合金が形成され、性能がさらに向上した。この三元合金は今回初めて発見された。
UNISTエネルギー工学科のオ・ジンギョン修士課程研究員は、「新しく開発した方法(Topotactic exsolution)を利用し、三元触媒を作ったことにとどまらず、単位面積当たり約200個以上の合金ナノ触媒粒子を作り、メタンドライリフォーミング触媒の反応性を高めることができた」と説明した。
キム・ゴンテ教授は、「メタンドライリフォーミングを通じて、安定的に合成ガスと水素を生産するためには、触媒の活性と安定性が必要である」と述べ、「2つの条件を同時に満たす触媒物質を開発した今回の研究は、メタンドライリフォーミングの商用化に寄与するはず」と予測した。
この研究には、ポハン工科大学校のハン・ジョンウ教授も参加した。この研究は5月7日、化学分野の国際ジャーナル、アンゲヴァンテ・ケミー(Angewandte Chemie International Edition)にオンライン掲載され、今後正式出版される予定である。(論文題目: Enhancing Thermocatalytic Activities by Upshifting the d-Band Center of Exsolved Co-Ni-Fe Ternary Alloy Nanoparticles for the Dry Reforming of Methane)