ファウンドリを含むシステム半導体で1位の座に立つというサムスン電子の「ビジョン2030」に赤信号が灯った。ファウンドリ(半導体受託生産)で1位のTSMCとの差は依然として縮まらず、メモリー半導体はスーパーサイクルが予想より早く終わり、下落傾向を見せるだろうという懸念も出ている。サムスン電子のイ·ジェヨン副会長の経営復帰と共に、現金100兆ウォン(約9兆3057億円)以上を保有するサムスン電子の反撃に関心が集まっている。
今年に入って、ファウンドリ市場では類を見ない激しい競争が繰り広げられている。供給不足の状況でTSMCは存在感をさらに高めた。さらにインテルがファウンドリに再進出し、首位追撃の意志を示した。最近ではTSMCとインテルとの間で技術競争が繰り広げられている。インテルは2025年までに2ナノ工程の「インテル20A」を量産し、クアルコムチップセットを作ると宣言した。これまでTSMCとサムスン電子にリードされていた超微細工程で再び主導権を握るという宣戦布告だった。TSMCも業界で初めて来年に3ナノ工程量産を宣言して対応した。Appleなど主要顧客も確保した。ファウンドリ競争が熾烈な状況で、サムスン電子だけがこれといった動きを見せなかった。サムスン電子は、米ファウンドリ工場に170億ドル(約1兆8580億円)の投資を発表したが、最終候補地を決めることはできなかった。システム半導体トップの前進基地である平沢(ピョンテク) キャンパスの3ライン投資も確定できなかった。車両向け半導体企業など、意味ある買収合併(M&A)のニュースも発表されなかった。TSMCとともに業界で5ナノ工程を量産しているサムスン電子だが、その差はさらに広がった。市場調査会社トレンドフォースによると、第2四半期のファウンドリ市場シェアはTSMCが55%、サムスン電子が17%だった。
サムスン電子はメモリー半導体の業績好調で、第2四半期にインテルを抜いて半導体の売上1位になった。しかしモルガン·スタンレーなど世界の主要投資会社は「メモリー業種に冬来たる」という報告書などを通じ、メモリー半導体業況に対する懸念を示した。メモリー半導体はサムスン電子半導体事業の売上で70%以上の比重を占めている。メモリーが揺らげば、サムスン電子全体の状況が厳しくなりかねない。
サムスン電子が半導体がトップの座を維持するためには、トップのイ副会長の決断が重要となる。サムスン電子は第2四半期基準で111兆ウォン(約10兆3293億円)以上の現金を保有している。16日、ある財界関係者は「半導体投資は一度に数十兆ウォン(数兆円)以上が必要だが、経営専門家レベルで行うのは難しい」とし「ファウンドリ追撃とメモリートップシェア維持のどちらも見逃せない状況」と述べた。「選択と集中」をしなければならない状況という点で、最高決定権者であるイ副会長の決定が重要だということだ。
今月13日に仮釈放されたイ副会長は、ビジョン2030の再検討に乗り出すものと予想される。最初、計画を発表した時より半導体市場の競争がさらに激しくなっただけに、投資の規模と方向を新たに設定するものと予想される。具体的な投資確定のため素早い動きをすることもあり得る。米ファウンドリ工場投資決定のため、米国を訪れる可能性もある。半導体と共にワクチン確保においても役割を果たさなければならない状況のため、秋夕前後にイ副会長が米国出張に出るという観測が出ている。そのほか、平沢(ピョンテク) キャンパスや水原(スウォン)本社などを訪れ、半導体やスマートフォンなど事業全般を見直し、1位を守るための戦略再検討を行うものと見られる。サムスン電子関係者は「イ副会長がどの事業所をいつ訪れるかはまだ決まっていない」と述べた。(韓国国民日報の記事を翻訳・編集)
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