「最近の市場を見ると、サムスン電子がM&A(合併·買収)のゴールデンタイムをすでに逃したのではないかという感がぬぐい切れません」
半導体業界の関係者は10日、業界最大規模の取引で注目されているエヌビディア(NVIDIA)のARM買収が英国と中国政府に続きEU(欧州連合)の牽制に阻まれたというニュースと関連し、このように述べた。サムスン電子が今年に入り、新成長エンジンの確保に向け、3年以内に意義あるM&A成果を出すと予告したが、状況は容易ではないという意味だ。最近、半導体業界のM&Aで最大の変化の要因はメーカー間交渉ではなく、各国政府の承認審査に変わった。半導体産業が経済を超えて各国の安保資産として浮上し、「ビッグディール」による偏り現象に対する相互牽制が強まっているのだ。
企業間契約が締結されたM&Aが世界主要国の反独占審査機関の承認拒否で反故になる事例が相次いでいる。半導体メーカー間のM&A(買収合併)は、市場の独占を防止するため、主要国の審査機関の承認を得る。主に米国、中国、韓国、日本、英国など6~7カ国で行われる審査で、1社でも不許可と判断されれば取引が中断される。特に、世界1位の半導体消費国である中国が承認を拒否した場合、中国市場をあきらめなければならないという点で、事実上の取引が不可能だ。
代表的な事例が米アプライド·マテリアルズによる日本のKOKUSAI ELECTRIC(Kokusai Electric Corporation)買収が失敗したことだ。中国政府の審査がこれといった理由もなく9カ月以上遅延したため、今年3月に取引が中断された。業界では、中国政府が米国の輸出規制によって中国企業の半導体装備調達がさらに困難になることを憂慮して審査を先送りしたものと見ている。
2018年、米通信半導体メーカー·クアルコムのオランダの車両向け半導体メーカー·NXPの買収も、中国政府の承認が遅れたことにより白紙化された。専門家らは、最近推進されている米ウェスタンデジタルによる日本のキオクシア(Kioxia)買収も、両社間の契約が成立しても中国政府の壁を越えるのは容易ではないと見ている。
最近、米国や英国、EUなどもM&Aにブレーキをかけている。昨年末から世界的な半導体供給不足事態を経験し、自国の半導体供給網維持戦略が優先課題に浮上した影響と分析される。
英競争当局は最近、エヌビディアのARM買収を巡り、「独占の恐れがある」とし、第2段階の深層調査に乗り出すと明らかにしている。EUでも、エヌビディアが規制承認を申請する前から否定的な意見が出ている。イギリスとEUは、エヌビディアがARMを買収する場合、システム半導体の知的財産権の主導権まで米国に渡ってしまうのではないかと懸念しているという。
各国政府の反対により半導体M&Aが相次いで霧散となり、サムスン電子をはじめ韓国国内メーカーのM&A戦略にも赤信号が灯っている。サムスン電子の場合、先月のイ・ジェヨン副会長の復帰とあいまって、3年以内にM&Aの成果を出すという方針を再確認したが、国際政治リスクにぶつかる可能性が高くなった。インテルNANDフラッシュ事業部の買収をめぐって、中国政府の承認だけを残しているSKハイニックスも焦りを隠せない様子だ。
世界的な半導体不足現象で半導体会社の価値が跳ね上がっているという点も、M&Aの壁を高めている要因の一つに挙げられる。クアルコムによるNXP買収の白紙化も、中国の承認が遅れる間、NXPの株価が高騰したのが主な原因だった。
業界のある関係者は「サムスン電子の立場では3~4年前、世界市場でM&Aが行われていた際、司法リスクなどと重なった対内外の悪材料によって機会を失ったことが何よりも痛恨である」と話した。
(本記事は韓国マネートゥデイ社の記事を翻訳・編集しております)
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