LGイノテックが重レアアース(希土類)の使用を最小化しながらも、性能は世界最高レベルに引き上げたマグネット(磁石)の開発に成功した。マグネットは、車両用モーターやスマートフォンカメラ、オーディオスピーカーはもちろん、風力発電機などにも欠かせない産業素材だ。全面的に中国からの輸入に依存している重レアアースの使用量を減らすと同時に、技術力でも日本のメーカーを追い抜いたもう一つの成功例だという評価が出ている。LGイノテックは、究極的には重レアアースを使用しないマグネットの開発を目標にしているという。韓国毎日経済が報じた。
LGイノテックは今月13日、マグネット専門企業であるソンリム先端産業と共に、世界で最も強い磁力を持つ「エコマグネット」の開発に成功したと明らかにした。
マグネットは駆動が必要な製品に装着され、磁石の押したり引いたりする力で動力を作り出す。磁力強化のため、レアアースの使用は必須だが、レアアース供給不足や高い価格、採掘過程での環境汚染や絶対的な中国依存度などが悩みの種となってきた。このため、生産不足の事態が発生したり、貿易・外交紛争などで、重レアアースの需給に支障が生じる場合、自動車メーカーなど韓国内外の企業は致命的な影響を受けざるを得ない。
これまでマグネット市場では、中国と日本のメーカーが高いシェアを有してきた。中国メーカーは、自国で生産するレアアースを基に、価格競争力を前面に出しながら市場シェアを高めてきた。重レアアースは宇宙や国防、先端武器の製造など、付加価値が高い分野で使われるが、レアアースに比べ埋蔵量が少なく、発掘も難しいために価値が高い。
日本のメーカーは技術競争力として、市場を攻略した。信越、TDK、日立メタルなどの日本のメーカーは、進んだ技術力で40年近く市場をリードしてきた。
LGイノテックが共同開発した製品は、重レアアースの使用量を従来に比べ60%ほど大きく減らしたのが特徴だ。同時に日本を抜き、家電および車両操向モーター用の磁石の性能を世界最高レベルの14.8kG(キロガウス・磁石の強さの単位)まで引き上げた。業界はこの磁石の技術的性能の限界値を15kGと見ており、現在まで実用化された日本のメーカーの製品性能は14.2~14.3kGにとどまっている。
また、エコマグネットを車両用操向モーターに適用すれば、モーターの出力は高めながらもサイズが小さくなり、軽量化に有利だ。磁石の性能が高く、モーターの大きさが小さくても、高い出力を出すことができるためだ。LGイノテックの関係者は「エコマグネットは、電費(電気自動車の燃費)向上のため、軽量化が急がれる電気自動車やハイブリッド車などに適している」とし「モーターの大きさを縮小しながら、最近、銅などの価格が上昇している原材料の費用も一緒に減らすことができる」と説明した。
エコマグネットを高画素スマートフォン用カメラに装着すると、アクチュエータ(焦点を合わせるためにレンズを動かす部品)の駆動力を約10%高めることができるため、きれいで鮮明な高画質の写真や映像を撮影することができる。最近、スマートフォンカメラの仕様が高まりながら、高画質撮影のためのレンズのサイズや大きさが増加し、アクチュエータ用の磁石も重要性が高まっている。
LGイノテックは、2017年からエコマグネットの開発に本格的に入った。従来の方式では日本の技術力を短期間で追いつくことができないと判断し、機械学習方式のシュミレーション技法を導入した。これを通じて、最少2年以上かかる開発期間を半分に短縮するのに成功した。
今後LGイノテックは、車両用操向モーターやスマートフォンアクチュエータなど、自社製品にエコマグネットを適用して差別化し、競争力の強化に乗り出す方針だ。適用分野もエアコンや冷蔵庫、ドローンや都心型フライングカー、発電機などへと迅速に拡大していく予定だ。さらにLGイノテックは、中国の依存度から自由になるために、レアアースを全く入れない「無レアアースマグネット」の開発にもスピードを出す計画だ。
LGイノテックだけでなくLGグループの主要系列会社は、素材・部品・装備分野の新技術開発や国産化に集中してきた。代表的な事例が、2019年LGディスプレイの半導体・ディスプレイ用のフッ化水素素材の国産化だ。当時、99%以上を日本から輸入していたフッ化水素を国産化するため、LGディスプレイは協力会社と共にテストや検証作業に集中し、約100日で100%国産化に成功した。
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