今年度の自動車メーカーの生産遅延の原因となった半導体チップの供給不足状況が、来年度まで長期化される可能性がある。市場では今まで、今年度末までには半導体不足問題が解消されると予想していた。しかし、供給網の問題が予想以上に深刻との分析から、「数年かけても克服が難しい構造的な大激変」が発生しているという展望が有力になっている。韓国経済新聞が報じた。
アメリカのウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は8月30日に、「アジア地域の半導体組立・テスト工程でのボトルネック現象がグローバル半導体不足事態の新たなトリガーになりつつある」と報じた。台湾のTSMCのような大型メーカーは、製造した半導体をマレーシアなどに位置する東南アジア企業に運送し、組立・テスト工程を行う。しかし、最近、東南アジア地域で新型コロナウイルスが拡散し、工場の正常的な稼働が難しくなっている。
WSJによると、組立・テスト工程はマージンの少ない事業構造であるため、生産設備の拡大が難しい。複数の専門家は、生産設備を拡充しても生産量の増加まで少なくとも9ヶ月かかると予測している。
また、自動車製造によく使われる半導体が低性能・低マージンのマイクロコントローラは、収益性が低いため、半導体メーカーが生産を避けている。市場分析会社のIHS Markitによると、グローバル半導体メーカーが発表している4000億ドル規模の生産拡大計画の中にマイクロコントローラはほぼ含まれていない。
IHS Markitはこのような状況を考慮し、来年度のグローバル自動車予想生産量を既存の8260万台から7410万台に10.3%下方修正した。コンサルティング企業のアリックスパートナーズは、半導体不足による今年度のグローバル自動車業界売上高損失額の推定値を既存(1010億ドル)から2倍以上(2100億ドル)引き上げた。
グローバル自動車メーカーらは生産の正常化のために、半導体の確保に力を入れながら、工場の稼動中止と再稼働を繰り返している。アメリカのゼネラルモーターズ(GM)は、メキシコのラモス工場でのシボレーの生産中断を2週間延長すると発表した。フォードはMUSTANGを生産するミシガン工場を来週から止める予定だ。
フィアット・クライスラーとプジョーシトロエンの合弁会社であるステランティスは、今月からイタリアのメルフィ工場を6日間のみ稼働することにした。メルフィ工場はステランティスがイタリアで運営する最も大きい生産施設である。
一部の自動車関連企業は、既に来年度の生産計画を再検討している。アメリカイリノイ州シカゴで自動車部品企業を運営するある経営者はWSJとのインタビューで、「来年度の生産規模を当初の計画から20%減らすことにした」と述べ、「顧客社である完成車メーカーの半導体供給状況があまりにも不安定で、これも確定してはいない」と説明した。
供給不足で半導体のチップ価格が高騰する「チップレーション」が発生する可能性もある。新型コロナウイルスの拡散による供給網崩壊、原材料価格、運営費の上昇など、様々な要因が複合的に作用した結果だ。
ロイターによると、TSMCは半導体チップの価格を最大20%引き上げる方案を検討している。インテルのパット・ゲルシンガー最高経営責任者は、「内燃機関自動車から自律走行車、電気自動車への転換が進むほど、半導体需要はより増加するはず」と述べ、「2019年には車両1台の製造に必要な半導体費用が全体費用の4%であったが、2030年には20%水準になるはず」と展望した。
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