[特集]韓国への輸出規制から2年…実益ない日韓対立はいつまで続くか

韓国の複数メディアが、2年前の2019年に始まった韓国に対する半導体・ディスプレイ関連素材3品目の輸出規制の韓国への影響が、結果としてごくわずかだったことを報じている。

コロナ前の安倍政権時代に、あくまで輸出管理上の運用見直しであるとの体で実施された輸出規制から2年が経過したが、その間日韓関係はすっかり冷え切ってしまった。さらに追い打ちをかけるようにコロナが流行し、海外渡航が制限されることで、日韓を含めたすべての海外ビジネスには急ブレーキがかかってしまった。

未だにぎくしゃくしている日韓関係だが、韓国の財界では、日本の岸田政権発足をきっかけに、互いに実益のない経済対立を終わらせるべきだという声が上がっている。

5日、韓国の全国経済人連合会(全経連)と貿易協会によると、2019年7月の半導体・ディスプレイ関連素材3品目(フォトレジスト、フッ化水素、フッ化ポリイミド)に対する韓国の対日輸入総額は、規制前2年間の7,295億ドル(約81兆2,632億円)から規制後2年間で7,246億ドル(約80兆7,174億円)となり、0.67%の減少にとどまった。特に素材3品目に対する対日輸入依存度も、規制前の75.9%から規制後74.6%となり、1.3ポイント減少した。

3品目の対日輸入構造に大きな変化がなかったのは、韓国政府や韓国企業が日本の規制措置に迅速に対応し、日本政府も2019年8月にフォトレジストに対する輸出を2回許可、同年12月にはフォトレジスト1種に限り輸出規制を個別許可から特定包括許可に緩和した結果だと思われると全経連は説明した。

一方、フッ化水素は、日本の輸出規制後、関連企業が台湾や中国に輸入先を代替し、今年上半期の対日輸入依存度は2019年の上半期に比べ31.7ポイント減少した。これは、輸出規制前は韓国内の関連企業は7ナノ級超微細プロセス用の超高純度フッ化水素の安定性を確保するため、高純度の日本産を使用していたが、輸出規制後、中国産フッ化水素も品質テストを行い活用、また研究開発と品質テストを経た韓国産フッ化水素の活用も拡大したためだと分析される。

日本の輸出規制後2年間で、韓国の部品・素材全体の輸入は0.23%増加した中、対日輸入は4.1%減少したという。また日本の対韓直接投資は、輸出規制直後に日本企業の対韓投資心理が急激に冷え込み、規制前2年間の21.9億ドル(約2,440億円)から規制後2年間で15.7億ドル(約1,749億円)となり、28.5%も減少した。

これはもちろんコロナによる影響もぬぐえないが、輸出規制に端を発した日韓関係悪化の心理的なハードルが上がったことや、韓国企業による対日政策の変化、国産化も含めた代替案を模索した結果であると思われる。

一方、同じ期間の韓国の対日直接投資は、2017年11月のSKハイニックスをはじめとする日米韓連合の東芝メモリ買収決定後、後続投資が行われたことにより24.4%増加した。

輸出規制から2年間、日韓両政府はそれぞれの立場で国益を最優先に政策を打ち出してきたが、その中で浮かび上がってきたのは、韓国企業や政府による「国産化」の動きと、日本企業も含めた「脱日本」という動きである。

住友化学は9月1日、サムスン電子やSKハイニックスなど韓国の半導体大手企業にフォトレジストを安定的に供給するため、100億円以上を投じて韓国に新しい工場を建設することを発表した。工場は9月から着工し、24年から生産を開始する計画だという。2019年の輸出規制後、関連日本企業の韓国投資としては最大規模になる見通しだ。

韓国の新工場で生産される予定のフッ化アルゴン(ArF)フォトレジストは、半導体ウェハーの基盤回路をより細かく描く際に使われる先端素材で、住友化学はこれまで大阪工場でのみこの素材を生産してきた。今回の新工場建設により、住友化学のフッ化アルゴンフォトレジスト生産能力は2019年の2.5倍に増える見通しとなる。フォトレジスト市場で世界4位のメーカーである住友化学が海外で初めてフッ化アルゴン·フォトレジストを直接生産することを決めたのは、韓国のサムスン電子やSKハイニックスといった半導体大手各社が分散生産を要請したためだと、日本経済新聞は伝えている。

日本の部品素材大手にとって、韓国のサムスングループやSKグループはいわば上得意客であり、取引を増やすことは日本企業に大きな利益をもたらすこととなる。半導体関連業界にとっては輸出規制が一つのきっかけとなり、結果として、韓国企業による「国産化」や「脱日本」の構図が一つの解となりつつある。

事実、住友化学以外にも、東京応化やダイキン工業といった日本の大手企業が、韓国での生産拡大や直接投資を決めている。一方でそうした動きに対応できていないステラケミファや森田化学は、日本政府の輸出規制措置後、輸出に困難をきたし、対韓国向け売上が大幅に減少する結果となった。

今後も輸出規制が続くのか、もしくは岸田政権で日韓の歩み寄りから輸出規制の見直しが行われるのか、現時点ではまだ先が見えないが、この2年間で主要3品目の取引に大きな影響が出なかったのは、日本企業や日本政府にとっても内心ほっとした面もあるのではないか。他方で先端技術をもって韓国へ進出する動きは、2年前の安倍政権にとっては想定外だったのかも知れない。

米中対立が増す中、今まで以上に「経済安保」が重要なキーワードとなってきているが、岸田政権では日本の最先端技術の流出を防ぎつつ、様々な規制の中でグローバル環境下で経済活動を拡大していくことのかじ取りの難しさが伺える。誰が得したのか、未だ掴みどころのない輸出規制に端を発した実益のない日韓対立はいつまで続くのか。世界的に半導体不足の深刻さが増している環境下で、3年目に突入した輸出規制だが、日韓政府や企業を取り巻く今後の行方が気になるところである。

金 世永(コリアマーケティング株式会社 代表取締役)

参考記事:日本の輸出規制「半導体・ディスプレイの核心素材依存度に変化なし」
参考記事:韓国環境部、日本の輸出規制への対応の一環として半導体用超純水の国産化協議体を本格稼働
参考記事:韓国副首相「日本の輸出規制3品目は供給が改善、生産支障なかった」

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