サムスンディスプレイとLGディスプレイの2社が寡占していたスマートフォン用OLED(有機発光ダイオード)市場に変動が起きている。政府の支援を受ける中国メーカーが、サムスン電子とアップルのスマートフォンパネル市場でのシェアを高めている。業界は、韓国政府が支援しない場合、LCDのように、2025年まで中国メーカーにシェアを奪われる可能性があると分析している。韓国メディアsisaonが報じた。
10月18日、日本経済新聞や日経アジア等によれば、中国のディスプレイメーカーBOEがアップルの新モデル、iPhone 13にOLEDパネル(6.1インチ)を供給することになった。BOEのパネルはiPhone 13の修理用(リファビッシュ品)として使用されているが、今後の歩留まりや出荷量によっては一般製品や新製品にも搭載される可能性が高いという観測が出ている。日本経済新聞も、「BOEは出荷量を増やす予定」であるとの見通しを示した。
今まで、アップルのフラッグシップモデル(iPhoneシリーズ)に搭載されるOLEDパネルはサムスンとLGディスプレイが独占供給していた。業界によると、サムスンが7割程度、LGが3割程度のパネルを供給している。iPhone 13 ProとiPhone 13 Pro Max用パネルはサムスンディスプレイが、iPhone 13とiPhone 13 mini用のパネルは両社が供給している。
BOEはサムスン電子へのフレキシブルOLEDの供給も拡大している。今年度、Galaxy Mシリーズ(Galaxy M52など)に初めて納品し、来年度にはGalaxy Aシリーズ(Galaxy A73など)にもパネルを納品する予定だ。
BOEは現在、成都市と綿陽市を中心に6世代OLEDパネル生産ラインを運営し、重慶市にも工場を建てている。中国のディスプレイメーカーであるCSOTや天馬微電子なども昨年度から中型・小型OLEDへの投資を増やしている。これらの3企業が設備投資を完了すると、中国メーカーは6世代OLEDパネルを月に数十万枚追加生産できるようになる。
BOEなどの中国ディスプレイメーカーの成長の背景には中国政府の支援がある。中国政府が今年度3月に発表した「次世代情報技術産業育成と新型ディスプレイ産業発展を支援するための関税優待政策」によると、中国のメーカーは原料や消耗品などの輸入関税を免除される。輸入設備に対する増値税も、6年間分割で納付することができる。このような優待措置は2030年まで有効であり、既存の政策より長期的な政策になっている。中国のメディアは「OLED屈起(国を挙げて集中投資・育成の意味)」という表現を使っている。
中国のディスプレイメーカーは2018年第1四半期のLCD市場でサムスンとLGを追い抜き、テレビ用LCDパネル出荷量世界1位になった。韓国が2004年に日本を追い抜いてから14年目のことである。中国政府が2006年から「LCD屈起」でディスプレイ産業を育成させた成果である。
中国政府の支援を受けているBOEの進出拡大で、業界では、LCD市場のように、スマートフォンOLEDパネル市場も中国メーカーに奪われる可能性があると懸念している。普及モデルからフラグシップモデルに領域を段階的に広げていくディスプレイ産業の特徴を考慮すると、まずは普及モデルに集中しているLGディスプレイのシェアが減少すると予想される。スマートフォンOLEDパネル市場1位のサムスンディスプレイのシェアの減少も予想される。
市場分析会社のDSCCが実施した2020~2025年の年平均成長率調査によると、サムスンとLGの成長率はそれぞれ12%と19%であった。一方、中国のBOEは25%、CSOTは52%で、2倍以上であった。韓国の市場分析会社のUBIresearchは、昨年度は70~80%であったスマートフォンOLED市場でのサムスンディスプレイのシェアが、来年度は60%まで減少する可能性があると展望した。
市場分析会社オムディアのある研究員は、「韓国のOLED市場主導権に中国は大きな脅威になるはず」と分析した。
産業通商資源部のムン・スンウク長官は、先月の経済研究機関長との懇談会で、「ディスプレイ産業発展戦略を作る」と発言しているが、詳細はまだ発表されていない。
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