電気自動車(EV)市場が急激に成長する中、より安全で性能の高いバッテリーを作るための技術発展にも拍車がかかっているとの記事を韓国メディア「産業経済新聞」が報じた。
最近、全固体およびリチウムメタルバッテリーなど、次世代技術が注目されている中、韓国バッテリー業界は独自の研究施設と有数の技術会社との共同研究を通じ、未来技術の確保に取り組んでいる。
9日、関連業界によると、最近、米国のバッテリースタートアップであるソリッドエナジーシステム(SES)が電気車用ハイブリッドリチウムメタルバッテリーセル「アポロ(Apollo™)」を公開した。
アポロは107Ahの容量で、重さはわずか0.982キロに過ぎない。エネルギー密度は417Wh/kg及び935Wh/Lに達する。該当バッテリーを使えば、一度の充電で700キロ以上走る電気車を作ることができる。また、12分で10%から90%まで高速充電も可能だ。
SESは2025年にハイブリッドリチウムメタルバッテリーの商用化を目標としている。リチウムメタルバッテリーは液体と固体の電解液を持つ「ハイブリッドバッテリー」で、高いエネルギー密度と大量量産の容易性など全ての長所を持っている。
SESは現在、中国上海にパイロット設備を建設中であり、多様なサンプル最適化を経て量産品を完成車に供給する計画を持っている。SESは韓国のSK(株)をはじめ現代(ヒュンダイ)自動車、起亜(キア)、LGテクノロジーベンチャーズなどから投資を受けた。
現在、電気自動車バッテリーの主流であるリチウムイオンバッテリーの安全性の限界を補完し、エネルギー密度を極大化できることから、「夢のバッテリー」と呼ばれる全固体バッテリーの研究も成果が出ている。
トヨタは最近、全固体バッテリーを搭載した電気車モデルを公開した。トヨタは全固体バッテリーの分野で圧倒的な量の特許を確保しており、技術面で最も進んでいると評価されている。トヨタは2025年、ハイブリッド車に全固体バッテリーを搭載、商用化する計画だ。
韓国内バッテリーメーカー各社も同様に、全固体バッテリー技術の研究に熱中している。
SKイノベーションは最近、全固体バッテリー技術を保有している米ソリッドパワーに投資し、次世代全固体バッテリーの開発や生産に力を合わせることにした。
両社は既存のニッケル·コバルト·マンガン(NCM)正極材とシリコン負極材を適用し、既存のリチウムイオンバッテリーより30%以上エネルギー密度を高めた全固体バッテリーの開発に乗り出す。
サムスンSDIは2027年、全固体バッテリーの量産を目標にしている。2023年には小型バッテリー、2025年には中大型バッテリーの技術および安全性検証を予定している。
サムスンSDIがサムスン電子総合技術院などと共同開発した全固体バッテリーは、1回の充電で走行距離800キロ、1000回以上の充電が可能なスペックを誇る。特に、全固体バッテリーの最大難題である「デンドライト(リチウムが負極表面に積体して木の枝状の結晶に溜まる現象)」を抑制する技術で進んでいる。
LGエナジーソリューションは、米サンディエゴ大学との共同研究で、常温でも早いスピードで充電が可能な長寿命全固体バッテリー技術を開発した。
従来の全固体バッテリーの場合、温度に敏感で、60度またはそれ以上の高温環境でのみ充電できる上、充電速度も非常に遅かった。今回、研究チームが開発した技術では、500回以上の充電や放電後も、80%以上の残存容量を維持し、現在のリチウムイオンバッテリーと比べ、エネルギー密度を40%ほど高めることが可能だった。
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