5年後、スマートフォンOLED(有機発光ダイオード)市場で、中国メーカーのシェアが韓国を超える可能性が高いという見通しが出た。中国の激しい追撃速度に備えるため、顧客の多角化、技術の高度化などの努力が必要だという分析だ。韓国メディア「イートゥデイ」が報じた。
11月19日、ディスプレイ専門の市場調査会社ユビリサーチがオンラインで開催した「2021年下半期OLEDオンラインセミナー」で、ユビリサーチのイ・チュンフン代表は、「今年におけるスマートフォンOLEDの国別出荷量では、韓国が79%、中国が21%をシェアしているが、5年後には中国の出荷量シェアが50%を超える可能性がある」と明らかにした。
根拠は、昨年を分岐点に、急激に成長し始めた中国スマートフォンメーカーの躍進だ。イ代表は「(スマートフォン)セットメーカーがある国で、部品・素材・産業が発達するのは自然なこと」とし「企業別に見ると、アップルやサムスン電子の2強構図だが、国別でみると中国スマートフォンメーカーのOLED購買量が遥かに多い」と述べた。
今年の第3四半期基準で、アップルのスマートフォンOLEDの購買量は5230万台、サムスン電子は4390万台を記録した。Xiaomi・OPPO・Vivoなど中国スマートフォンメーカーのOLED購買量は、合わせて6600万台水準まで上がった。
今年LG電子がスマートフォン事業から撤退したため、有意義な韓国セットメーカーはサムスン電子しか残っていない。イ代表は「こうした場合、パネル製造技術や部品・素材・技術が中国に多く吸収される可能性がある」と見通した。
ディスプレイ業界を重点的に見ても、このような傾向ははっきりしている。今年からアップルにOLEDを供給し始めたBOEは、アップルへ供給している会社の中でシェア2位のため、B7、B11、B12など、多数の工場をアップル専用に転換している。
イ代表は、BOEのアップル対象の物量が急激に増える場合、LGディスプレイには危険要因として働く可能性があると見込んだ。中小型ディスプレイで後発走者であるLGディスプレイの場合、スマートフォン用OLEDの顧客はアップルだけだ。イ代表は「顧客の多角化を試みなければ、(この事業で)リスクが増加する可能性もある」とし「今年まではそれほどリスク要因が大きくないが、来年の第4四半期以降が問題だ」と指摘した。
スマートフォンOLED市場も、変化に伴う各企業の対応方向が紹介された。サムスンディスプレイのノートパソコン用OLED市場の開拓が代表的な例だ。イ代表は、最近スマートフォン市場で、リジッド(rigid) OLED市場の縮小による売上減少分を、ノートパソコン用OLED販売で十分に相殺していると見込んだ。
彼は「2018年までは、リジッド OLEDのシェアがフレキシブル製品を圧倒していたが、昨年からフレキシブルOLEDのシェアが50%を超え始めた」とし「この市場は、徐々に減るため、サムスンディスプレイはモニター、ノートパソコンなどのIT市場に集中している。IT OLED販売量の増加で、リジッドOLEDの売上減少は十分に補完されている」と分析した。
現在、ノートパソコン用OLEDパネルはサムスンディスプレイだけが生産しているが、今年450万台の出荷量水準まで市場が拡大される見込みだ。
LGディスプレイが主導する大型OLED市場は、2023年に1000万台を超えるものと予測される。ただ、2025年以降、市場の成長性に限界が生じかねないという分析が出た。従来の成長率を維持すれば、その時点を基点に、OLEDテレビ規模は1700万台を超えることになるが、これは世界のプレミアムテレビ市場規模を上回ることになるからだ。
イ代表は「(OLEDテレビ)の価格が下がらないと1500万台以上の市場は成立しにくい」とし「以前と違ってLGディスプレイのP10投資のニュースがあまり聞こえない理由だ」と説明した。
サムスンディスプレイが量産を始めたQD OLEDの出荷量は、来年は70万台水準と予想した。50万台をサムスン電子が、10~20万台をソニーがシェアするものと見られる。ただ、まだ市場開花の可能性が予測できず、有意義な増設の可能性は低いと見ている。その代わり、IT用の第8.5世代ラインに対する投資が2022年の下半期から始まり、工場は2023年の下半期から稼働する見込みだ。
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