韓国のディスプレイ業界が、OLED事業の拡大を通してコロナ禍収束後に備えている。コロナ特需を享受していた液晶表示装置(LCD)の価格が、下半期に入り下落に転じたことによりプレミアム級であるOLEDに事業の中心を素早く移しているという。韓国メディアの「聯合インフォマックス」が報じた。
26日、業界によると、サムスンディスプレイは今月末に量子ドット(QD)ディスプレイ製品の量産を始める。
QDディスプレイは、OLEDなどの発光源が光エネルギーを出し、QDが色を出せるようにする技術で、白色素子を発光源としているLGディスプレイのW-OLED方式とは差がある。
サムスンディスプレイは、2019年10月にQD生産ライン(Q1)投資を公式化した後、昨年上半期にQD生産ラインのクリーンルームの工事を終えた。また、昨年下半期にセットアップを終え、今年段階的な試運転を行った。
サムスンディスプレイのQDディスプレイ生産能力は、8.5世代マザーガラス基準で月3万枚で、これは55インチと65インチのテレビを約100万台製造できる規模だ。
生産するテレビパネルのサイズは、55インチ・65インチ・78インチ・82インチなどになる見通しで、モジュール化作業などを経て、顧客会社であるサムスン電子などに供給する予定だ。
サムスン電子は、該当パネルを採用したテレビを来年1月にアメリカのラスベガスで開かれる世界最大の電子・IT展示会である「CES 2022」で披露すると予想される。
当初、OLEDテレビを生産しないとしていたサムスン電子が、QDディスプレイテレビの発売に乗り出したのは、需要が高まるプレミアムテレビ市場における立場を強化する必要性が高まったためだ。
世界テレビ市場でコロナ後にピークアウトが本格化し、プレミアムテレビに事業を転換する必要性が高まっている。
市場調査会社オムディアによると、今年第3四半期の世界テレビ市場はピークアウトが本格化し、昨年第3四半期の出荷量6290万9千台より20%以上減少した5039万8千台となった。
一方、今年第3四半期のOLEDテレビの出荷量は153万9千台で、前年同期比65%増加した。
オムディアは、季節的な繫盛期である今年第4四半期には、OLEDテレビの出荷量が200万台を突破すると予想した。また、今年のOLEDテレビの市場規模は前年比80%増加した650万台に達し、LG電子が約60%を占めると見ている。
LGのOLEDテレビは、今年第3四半期に超高速成長し、2013年の初発売以降、累積出荷数が1千万台を突破した。
2019年に累積500万台を超えるまでに7年近くかかったが、その後1千万台を突破するまでは2年もかからなかったことからも急速に成長していることがわかる。
プレミアムテレビであるOLEDテレビは、平均販売価格がLCDテレビよりはるかに高い。今年第3四半期に世界テレビ市場で販売されたLGのOLEDテレビの平均販売価格(ASP)は、1863.5ドル(約21万2728円)で、世界市場で販売されるLCDテレビのASPである643.5ドル(約7万3459円)の3倍に及ぶ。
一番手であるLGディスプレイは、サムスンディスプレイのOLEDパネルの出荷量を警戒しながらも、市場拡大という面では肯定的に捉えている様子だ。
LG電子は、先月行った第3四半期カンファレンスで「新たな競争形態により若干競争が激化する部分があるだろう」としながらも、「OLED生態系の拡大という観点から、市場に肯定的な要素もあると判断される」とした。
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