昨年から急上昇し始めた液晶表示装置(LCD)パネルの価格がピークに達し、下落傾向にある。LCD事業からの撤退を一度撤回し、延長を決めたサムスンディスプレイとLGディスプレイはLCDパネルの下落を受け、予定より時期を繰り上げて事業を打ち切る案を検討しているという。韓国メディア「イーデイリー」が報じた。
29日、ディスプレイ業界によると、サムスンディスプレイとLGディスプレイは、一度撤回したLCD事業からの撤退時期を内部的に調整している。「コロナ19パンデミック」の恩恵を受け、グローバルテレビの需要が増加し、一緒に値上がりしていたLCDパネルの価格が急落しているためだ。サムスンディスプレイは来年上半期、LCD事業から完全撤退する予定だ。LGディスプレイは、LCD事業からの撤退時期を調整しているという。業界関係者は「LCD価格の下落により、撤退時期を予想より繰り上げるものとみられる」と述べた。
LCDパネルは、昨年半ばから1年近く上昇していたが、今年7月のピークに達した後、4カ月連続で下落している。市場調査会社ウィッツビューによると、LCDパネルの価格は先月、月間22%前後に暴落し、今月の下半期から2~3%下落した。今年7月に228ドル(約2万6千円)だったLCDテレビパネルの価格(55インチ)は今月に130ドル(約1万5千円)まで下がった。下落幅が42%に達する。△50インチ(マイナス7.3%)、△55インチ(マイナス6.7%)、△65インチ(マイナス4.0%)、△75インチ(マイナス2.9%)などすべてのサイズのパネルで価格が下落した。業界ではこのような価格下落傾向が来年初めまで続くと見ている。
テレビ向けLCDパネル価格の下落原因は最近、「ウィズコロナ(段階的な日常回復)」段階へと移行し、グローバルテレビ需要が減り、セットメーカーの在庫調整が始まったためだ。実際、今年下半期の全世界のテレビ出荷量は1億1164万台で、前年同期より12.4%減少した。特に、LCD市場を掌握している中国のディスプレイメーカーが生産量をむしろ増やしていることから、供給過剰現象による価格下落がさらに激しくなる可能性があるという見通しも出ている。中国ディスプレイ会社のBOEやHKC、CSOTなどは政府支援を追い風に、原価以下でLCDパネルを供給している。
サムスンディスプレイとLGディスプレイは、LCD価格の下落にいち早く戦略修正に乗り出した。当初、サムスンディスプレイは韓国と中国の第7、8世代LCDラインをすべて整備し、LCD事業から撤退する予定だった。中国蘇州にある第8世代LCD生産ラインはすでに中国TCL CSOTに売却した状況だ。現在、第7·8世代の大型LCDラインのうち、忠清南道牙山(チュンチョンナムド・アサン)キャンパス内でL8-2のみが稼働している。
最近は、牙山キャンパス内のLCD生産ラインとして使ったL8-1内の設備空間を撤去している。この空間は第8世代有機発光ダイオード(OLED)ラインに転換する予定だ。第7世代ラインのL7-1は2016年に稼働を中断し、第6世代OLEDラインに転換、L7-2は第1四半期に稼働を中断し、第6世代OLEDラインに転換している。サムスンディスプレイは残りのL8-2ラインも来年上半期までに完全撤退し、下半期には8世代OLEDラインに転換する可能性が高い。
LGディスプレイも昨年、原価競争力の落ちる国内テレビ向けLCDパネルの生産ラインを撤退する計画だったが、これを見直し、生産を延長した。LGディスプレイは現在、追加の資源投入無しに、現在の設備を活用して延長生産を行っている。ただ最近は、テレビパネル物量の相当部分をノート型パソコン、タブレット、モニターなどの電子機器(IT)用物量に切り替え、徐々に生産量を減らしている。LGディスプレイは今年第3四半期の業績発表カンファレンスコールで、「LCDは第8世代パネル基準で2018年末比のキャパ(生産能力)が25%削減された」と明らかにした。
ただ、LGディスプレイはLCD事業の完全撤退ではなく、中国広州工場をメインテレビLCD生産工場として運営し、事業を続けていく方針だ。業界関係者は「昨年LCD販売価格が上昇し、ディスプレイ会社が事業撤退時点を先送りし、クロージング時点(撤退時点)を決められなかった」とし「価格が下がっているだけに市場状況を見極めながら事業を運営する」と述べた。
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