市場調査会社「ICインサイツ」によると、2010年に635億ドル(約76兆ウォン、約7兆2108億円)だった世界のファブレス(半導体設計会社)の売上は2020年に1300億ドル(約155兆ウォン、約14兆7622億円)と10年間で倍増した。未来の成長性が高いファウンドリ(半導体委託生産企業)とともにシステム半導体生態系を支えている。韓国政府は次世代の「食いぶち=収益源」としてシステム半導体を取り上げたが、韓国内の「ファブレス」は20年間成長が止まっている。韓国メディア「TECH WORLD」が報じた。
グローバルファブレス市場で、国内ファブレスのシェアは1%台だ。2001年(0.7%)と比べれば、足踏み状態だ。遅々として進まない成果は売上にそのまま表れた。2020年、年間売上が1000億ウォン(約96億円)を超えた韓国内ファブレスは、LXセミコンやエディテクノロジー、済州(チェジュ)半導体、アボブ半導体、アナパス、テレチップスのわずか6社だった。国内ファブレス上場会社の中で売上基準上位20社の昨年の売上合計推定値は2兆5000億ウォン(約2400億円)だ。前年より14%増えた数値だが、昨年、米国のAMD第4四半期の売上(約3兆6400億ウォン、約3495億円)の70%水準だ。
米国は2020年売上基準1位クアルコム、2位ブロードコム、3位エヌビディア、5位AMDといった世界最高のファブレスを保有し、システム半導体市場の60%を掌握している。ファウンドリ王国の台湾は、2020年の売上基準で4位のメディアテック、8位のノバテック、9位のリアルテックを育成し、ファブレスでもグローバルな影響力を示している。台湾半導体産業協会(TSIA)によると、今年第1四半期全体の台湾ファブレスの売上は、約10兆4704億ウォン(約1兆52億円)で前年同期より49.1%成長した。TSIAは、今年台湾のファブレス市場が昨年より30.5%さらに成長するものと予測した。
一方、韓国は順位圏に入れなかった。韓国業界は2000年代初め、システム半導体産業に進出した。当時は、多様なマルチメディアチップの需要で、国内のファブレスがしばらく栄えた。 しかしチップ一つにさらに多くの機能を含むシステムオンチップ(SoC)やアプリケーションプロセッサー(AP)のように高性能・高付加半導体に市場が再編された。これに対応できたのはサムスン電子だけだった。LG電子も独自AP開発に失敗するほど技術への参入障壁が高く、中小ファブレスもやはりこれを越えることができず、システム半導体産業の規模はむしろ小さくなった。
政府はファブレス育成のため、1998年の「システムIC(集積回路)2010」に続き、2011年の「システムIC2015」を国策事業として推進した。「全世界のシステム半導体シェア7%」を目標に掲げたが結局失敗に終わった。政府は1998年から2011年にかけて、年平均予算182億ウォン(約18億円)を同事業に投入したが、2011年からは150億ウォン(約14億円)へと予算を削減してしまった。このような予算削減が半導体設計人材の養成と研究開発(R&D)インフラを崩壊させた主な原因に挙げられる。2019年のシステム半導体支援政策は、サムスンの減税にのみ重点を置き、中小ファブレスは支援対象から外されたのと同様だった。
政府は中小ベンチャー企業部(中企部)と共に今年11月18日、中小ファブレスのための支援策を発表した。政府は、共同IP(設計資産)プラットフォームやファブレスラボハブ(Lab Hub)、大中小共生協議体を構築し、2022年から一括発注やコンソーシアム型技術開発事業を導入すると明らかにした。これにより中小ファブレスのファウンドリ需給難を解消し、設計から生産・販売に至るまであらゆる周期に対して支援するという計画だ。
共同IPプラットフォームはIP国産化開発と海外IP購入・提供プラットフォームとして運営される。初級人材養成のための短期教育課程を来年上半期に新設し、ファブレス創業教育と実習空間を1ヵ所に連携した「ファブレスラボハブ(Lab Hub)」がオープンする。
中小ファブレスのファウンドリ活用環境も改善される。中小企業部は複数のファブリスが共同で発注する一括発注を来年から導入し、これに向けファウンドリと協力関係を持っているデザインハウスがこれに参加する。
大中小共生協議体には国内ファウンドリが全て参加し、ファブレスの年間試作品委託需要を定期的に調査し、ファウンドリ工程に反映する。また、政府は施設と装備を支援して構築した公共ナノファブ機能を強化する。これで中小ファブレスの試作品需要が一部満たされるものと見られる。
コンソーシアム型技術開発事業には、中堅ファブレスのR&D課題に、4つ以内の中小ファブレスが共同で参加する。これまでの短期・小口の個別企業支援に対する限界を補完するためだ。中小企業部は来年に10課題を選定し、4年間、最大40億ウォン(約4億円)のR&D資金を支援する。
システム半導体は最近、データ競争が激しくなり、人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)へと、使用分野が拡大している。まだファウンドリほど市場支配力の高いメーカーがなく、技術力で主導権を握る場合、国内のファブレスにもチャンスが開かれる可能性がある。米国と台湾は、半導体人材の養成拠点を設け、グローバルファウンドリとファブレスを誕生させた。ファブレスの核心力量は半導体の設計人材だ。ファウンドリのように大規模な設備投資が必要ではない。台湾政府のように大規模な科学研究団地を基盤に人材養成に力を入れ、海外留学中の人材を自国に誘引するなど、持続的な人材育成策が必要だ。
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