ロッテケミカルは6日、「バナジウムイオンバッテリー」製造企業のスタンダードエナジー(Standard Energy)の持ち分約15%(約650億ウォン、約63億円の投資)を確保し、2番目の大株主になったと発表した。両社は昨年11月、戦略的パートナー関係を構築した後、持分の投資方式や協力策などの議論を経て、最終的な投資金額などを決定した。韓国メディア「市場経済」が報じた。(写真:ロッテケミカル)
ロッテケミカルが投資したスタンダードエナジーは、KAISTや米MITの研究チームが2013年に設立した韓国のバッテリー専門企業だ。同社は世界で初めてバナジウムイオンバッテリーを開発し、業界の高い関心を受けている。バナジウムイオンバッテリーはリチウムイオンバッテリーと違い、「水基盤」電解液を使用し発火危険性を根本的に遮断した。現在、市場の主力製品であるリチウムイオン系バッテリーは、高いエネルギー密度と高出力にもかかわらず高温・高圧環境でのバッテリーセルの膨張、可燃性液状電解液の流出(液漏れ)、および火災・爆発リスクを抱えている。
リチウムイオンバッテリーの発火危険を高める主な原因としては、正極と負極の直接接触を遮断する分離膜の毀損と共に、バッテリーセル内部を満たしている液状電解液の不安定性が挙げられる。液状電解液は正極、負極と物理・化学的に結合してリチウムイオンの通路の役割をする。正極、負極と密接に結合でき、バッテリーの高いエネルギー密度と高出力を担保する。問題は液状電解液が火災に弱いという点だ。特にバッテリーセル内部の温度と圧力が急激に上昇すれば、液状電解液の発火リスクは大きく増加する。
リチウムイオンバッテリーのこのような短所解決のため、代案として提示されたモデルが、全固体バッテリーとバナジウムイオンバッテリーだ。全固体バッテリーは電解液そのものを固体素材にし、火災・爆発の危険性を根本的に解決できるという特長があるが、液状電解液水準のイオン伝導度を実現する素材が見つからず、開発が難航している。
一方、バナジウムイオンバッテリーは可燃性素材の代わりに、水を基盤にした電解液を使うという点で差別化される。高い安定性と高い耐久性をもとに高効率・高出力が可能で、エネルギー貯蔵装置(ESS)を構成する次世代バッテリーとして期待を高めている。
ロッテケミカルは2011年からバナジウム、亜鉛流れ電池などESS用二次電池の素材を研究している。2019年からはバナジウムイオンバッテリー用電解液事業も推進中だ。
両社は今回の投資を契機に戦略的シナジー拡大を狙っている。今後、ロッテグループやロッテケミカルの国内外拠点網を活用した電気車(EV)充電所、UAM(都心航空交通)の開発、再生エネルギー活用事業でも協力を強化するという。
ロッテケミカル基礎素材事業部門のファン・ジング代表理事は「炭素中立社会では太陽光、風力などの新再生エネルギーの発展とともに生産された電気を安全に貯蔵して使用できる環境づくりが必要だ」とし「炭素中立、水素社会への参入などに備え先制的投資を拡大し、先進技術企業との協力関係を構築してグローバル技術競争時代に積極的に備える」と強調した。
スタンダードエナジーのキム・ブギ代表は「投資契約を皮切りに両社がESSとバッテリー分野での技術的協力内容をさらに具体化し、協力関係をさらに強固にすることを期待する」と述べた。
市場分析機関によると、グローバルESSバッテリー市場規模は、2026年に約120兆ウォン(約1060億ドル、約12兆円)水準まで成長すると見込まれる。
ロッテケミカルは昨年、高機能・バッテリー素材分野に本格進出した。会社は昨年5月に約2100億ウォン(約202億円)を投資し、電気自動車バッテリー用電解液有機溶媒ECとDMC生産施設を忠清南道大山(チュンチョンナムド・テサン)工場に建設している。完工の目標時点は2023年下半期だ。バッテリー主要4大素材(正極・負極・分離膜・電解液)の一つである分離膜事業は、2025年には10万トン、売上高2000億ウォン(約192億円)規模に拡大する計画だ。
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