韓国内の研究チームがマンガンとニッケルだけで作ったバッテリー正極材を開発した。コバルトがないのにLFP素材よりエネルギー密度が約2倍高く、実用化されれば、バッテリーコストを下げることができると期待される。韓国メディア「毎日経済」が報じた。(写真:UNIST)
UNISTエネルギー化学工学科のチョ・ジェピル特訓教授が創業した「エスエムラボ」は17日、マンガンとニッケルのみで構成された単結晶正極材を世界で初めて開発することに成功したと明らかにした。
バッテリー正極材はバッテリー価格の35%以上を占める。国内企業各社は、正極材としてNCM(ニッケル・コバルト・マンガン)やNCA(ニッケル・コバルト・アルミ)を使うバッテリーを主に開発しているが、原材料であるコバルトの価格が高く、バッテリーコストを下げるのが難しかった。
最近、テスラやフォルクスワーゲンなどが、原材料価格の負担が少ないLFP(リチウムリン酸黄)バッテリーを採用した理由も、このような理由からだ。
しかし、LFPバッテリーの価格は、ほかのバッテリー価格より20%ほど安いだけだ。バッテリーのエネルギー密度が相対的に低く、似たような性能を出すためには量を増やさなければならないからだ。
LFP素材のエネルギー密度を高めるためには、正極材の粒子の大きさを適当に育てなければならない。普通、マンガンの含有量が高くなると、粒子の大きさを大きくしにくい。ところが、マンガン系素材は粒子一つの大きさが300ナノメートル(nm)より小さい多結晶形態で作られ商用化が難しかった。
エスエムラボは、独自開発した粒子成長促進剤を少量添加し、粒子一つの大きさをマイクロメーター水準に拡大するのに成功した。マンガン系電極素材の問題点である低い出力は伝導性コーティングを独自開発して克服した。
このように開発した素材は、LFP素材に比べてエネルギー密度が2倍以上高かった。安価なマンガンとニッケルが3:1の割合で混ざっただけで、高いコバルトの含量は0であるため、バッテリー原価の削減も期待できる。
チョ・ジェピル代表は「ライバル企業に比べ2年前にLFP代替材の正極材開発を世界で初めて成功した」とし「海外顧客企業との量産検証を経て2022年第4四半期からEV用バッテリー実証テストを計画している」と明らかにした。
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