日本の輸出規制から早くも2年半が過ぎた。2019年7月、韓国の大法院(日本の最高裁判所に相当)で日帝強制徴用賠償判決を言い渡すと、日本政府は事実上の報復措置として「半導体の核心素材」輸出規制を持ち出した。韓国の主力輸出製品である分野にメスを入れたのだ。日本の反撃に韓国は迂回輸入路確保、素材・部品・装備の国産化に全力投球した。日本産から「独立」すべきという言葉まで出た。韓国メディア「国民日報」が報じた。(写真:日韓貿易摩擦イメージ=国民日報)
韓国政府は昨年、対日輸入依存度が低下したという自主評価を出した。実際に韓国の素材・部品・装備(韓国ではこれらを略して「素・部・装」と呼んでいる)業界は「脱日本」に成功したのだろうか。
日本が輸出規制を行う品目はフッ化水素、フォトレジスト、フッ化ポリイミドだ。3日、韓国貿易協会によると、日本から輸入するフッ化水素の重量は、2019年の1万9835トンから2021年は6627トンへと、輸入額は2019年の3633万5000ドル(約45億円)から2021年は1252万ドル(約15億円)へと減少した。半導体生産に欠かせないフッ化水素は、対日依存度が高かった。2018年度だけでも全体輸入量(8万3327トン)の46%が日本産(3万8339トン)だった。
フッ化ポリイミドの場合、超薄膜ガラスに代えて以降は日本からの輸入がないと、韓国産業通商資源部(産業省)は明らかにした。ただ、フォトレジストは別の状況に置かれている。日本産フォトレジストの輸入量は、2019年の861トンから2021年は954トンに、輸入額は2019年の2億6842万ドル(約329億円)から2021年は3億6723万ドル(約450億円)へと増えた。
素材・部品・装備業界の「脱日本」は大きく二つの軸から成り立っている。最初の軸は国産化だ。韓国政府は各種の支援を集中して企業の研究・開発を督励した。政府は2019年8月、「素材・部品・装備の競争力強化対策」をまとめ、輸入先の多角化、技術国産化、在庫の拡充、設備増設などのために2兆1000億ウォン(約2110億円)規模の「素材・部品・装備特別会計」を新設した。
以後、サムスン電子が出資したソールブレイン(Solbrain)は、中国から原料の無水フッ酸を持ち込んで、直接フッ化水素を生産している。ソールブレインは元々、日本からフッ化水素を輸入して精製するメーカーだった。SKマテリアルズは気体型フッ化水素(エッチングガス)の製造に乗り出し、1年足らずで超高純度エッチングガスの量産を開始した。イーエヌエフテクノロジーも、高純度フッ化水素を自主生産している。ラムテクノロジーもフッ化水素の国産化に成功した。
「3大品目」の他にも様々な素材・部品・装備分野で国産化を進展させている。半導体ウェハー洗浄やエッチング工程に使う高純度塩化水素(HCI)は、白光(ペククァン)産業でサムスン電子と国産化作業を行っている。東進(ドンジン)セミケムは、半導体生産ラインに汎用するフッ化アルゴン(ArF)フォトレジストを国産化し、2020年末からサムスン電子のDRAM生産ラインに供給している。
韓国産業省によると、100大核心品目の対日依存度は、2019年30.9%から昨年は24.9%へ下がった。素材・部品・装備産業の対日依存度も2019年の17.1%から昨年は過去最低水準の15.9%へ縮小された。韓国の素材・部品・装備上場企業の昨年1~9月の売上は2019年同期比20.8%増えた。昨年、素材・部品・装備産業の貿易黒字規模は、ほかの産業の3.9倍に達した。
もう一つの軸は地域・国家別供給網の多角化だ。最近、グローバル供給網再編の流れに乗って、韓国の素材・部品・装備産業の競争力強化、輸入先多角化は共にスピードを出している。
フォトレジストの場合、ベルギーなどへ輸入先を変更して対日依存度を50%以下に下げた。海外企業の韓国内生産・投資を積極的に誘導した。米化学素材企業のデュポンは2020年1月、忠清南道天安(チュンチョンナムド・チョンアン)に極紫外線フォトレジストの開発や生産工場を建設するため、2800万ドル(約34億円)を投資すると発表した。
素材・部品・装備分野である程度「独立」を成し遂げたが、限界が依然として残っているという指摘も共存する。
日本経済新聞は昨年8月2日付の報道で、韓国政府が主張した「脱日本」は部分的に進められたにすぎないと指摘した。フォトレジストの場合、ベルギー産の輸入が増えたというが、日本JSRのベルギー子会社からフォトレジストを購入しているため、事実上日本産製品を使うことに変わりはないと主張した。
フッ化ポリイミドも、「韓国政府は代替素材(超薄膜ガラス)を採用し、日本産の輸入はないと主張しているが、日本経済が超薄膜ガラスを採用したのは、サムスン電子の一部のスマートフォンに過ぎず、対日輸入額もかえって伸びている」と報じた。
さらに大きな問題は精密工程・技術で日本依存度がまだ高いということだ。対外経済政策研究院の調査によると、半導体用レーザー切断機はこの2年連続、日本から100%輸入した。フォトレジスト塗布・現像機、半導体ウェハーエッチングなどのための噴射機、ウェハーを個別チップに切断する機器もすべて日本産の輸入割合が90%を超える。
漢陽(ハンヤン)大融合電子工学部のパク・ジェグン教授は「素材・部品・装備支援政策で供給網の安定に1次的に成功したが、米国などに比べると国内の素材・部品・装備企業の初期生産育成のための投資が相対的に足りなかった。供給網安定のために海外企業の国内生産を誘導した支援策が国内の素材・部品・装備企業にはむしろ逆差別になった側面もある」とし「より中長期的に政策を立てなければならない」と評価した。
一方、韓日両国が貿易戦争、輸出規制の対立を終え、素材・部品・装備分野で協力して共同発展を図るべきだという提案も出ている。国立外交院外交安保研究所のキム・ヤンヒ経済通商研究部長は「世界が半導体産業育成に全力投球している。韓日両国は輸出規制懸案に縛られず、多層的で未来志向的な半導体協力に乗り出さなければならない」と述べた。
参考記事:韓国企業、日本から全量輸入していたフォトレジスト用原料の国産化に成功
参考記事:日本の輸出規制から2年、韓国の素材・部品・装備は内製化へ対応進む
参考記事:[特集]韓国への輸出規制から2年…実益ない日韓対立はいつまで続くか