「今回の状況について色々なチャンネルを通じてモニタリングしているが、いつもの状況とは様相が違うと判断される。」
韓国の産業界で米国発の経済リスクが高まり、企業が緊張している。特に今年に入って尋常でない歩みを見せている米国連邦準備制度(FRB)の基準金利の引き上げにより全世界金融および経済を強打し、今年下半期の韓国企業の輸出戦線において非常事態が起きている。韓国メディア「グローバル経済新聞」が報じた。(写真:iStock)
原文記事:https://www.getnews.co.kr/news/articleView.html?idxno=588238
18日、業界などによると、サムスン電子・現代(ヒュンダイ)自動車・起亜(キア)自動車・SKハイニックス・LG電子などの主要輸出企業は今月15日(韓国時間)、米連邦公開市場委員会(FOMC)定例会議後、独自タスクフォースチーム(TF)ならびに海外法人などを通じて国際金融市場の動向などに対するモニタリングを強化し、対応戦略作りに苦心している雰囲気だ。
何よりもこれらの企業は米国連邦準備制度が今回「ジャイアントステップ(1回に0.75%引き上げ)」を断行し、現地はもちろんグローバル市場での輸出拡大戦略支障とマージン縮小などを憂慮している。ただし、企業各社は今回の措置が現在のドル高局面と相まって輸出製品の価格競争力を高める好材料として作用すると見ているが、長期的には悪材料に転換する可能性も残して鋭意注視している。
基軸通貨(キーカレンシー)であるドル高現象が続く状況で金利が大幅に上昇する場合、現在市場内の消費心理や需要萎縮で自動車、家電などの商品販売が減少する可能性があるからだ。
さらに、ドル高が長期化し、中国や東南アジアなど新興国内資本の流出による景気低迷の可能性が臨界点に向かっているという点は、尋常ではない。新興国の輸出比重が高い国内産業界に打撃が大きいためだ。
問題は、このようなFRBのステップが今後も続く可能性があるという点だ。サムスン証券はFRBが今年6月に続き7月にも基準金利を0.75%引き上げる歩幅を維持するものと見通した。さらに、今年11月と12月にも0.25%ずつ上げるビッグステップを予想した。結果的に連邦準備制度が今年末までに基準金利上段である3.50%まで引き上げることができるという観測だ。
このような見通しが現実化する場合、米国の景気低迷ないしスタグフレーション(景気低迷と失業、物価上昇が同時に持続する現象)が固着化する恐れも存在している。米国の5月の景気先行指数が4月対比0.4%下落し、2ヵ月連続下落傾向を免れずにいるという点がこれを傍証している。△高物価、△高金利、△高為替レートなどの経済リスクが一気に襲う「パーフェクトストーム」に飛び火する可能性も排除できないという話だ。これは米国だけに限った問題ではないという点で事態の深刻性を増す。
この場合、自動車、家電、石油化学製品など、韓国の主要13大輸出品目全体がこの影響圏に入る可能性があるからだ。最近、国際海運運賃の高止まりなどで息抜きができた海運と、逆にCOVID-19パンデミック直撃弾からなかなか抜け出せずにいる航空業種は外貨借入金が多く金利引き上げで費用負担が加重される恐れが大きい。このうち、外貨負債の割合が高く、航空機リース料や整備費などの営業費用をドルで決済する航空会社各社は、為替レートの騰落による業績変動が大きい。
海運会社もグローバル船主は金融資金を集めて発注する場合が多い。このような状況で金利が上がれば自然に利子費用増加などで船舶発注に負担として作用する。
自動車業界は米国市場内のドル高による価格競争力の向上で販売にも弾みがつく可能性があるが、海外売上で新興国を含む「その他の地域」が占める割合は半分を占める現代(ヒュンダイ)自動車などは悩みにならざるを得ない。
造船業界の関係者は「ドルが強気を示せば原料輸入価格の上昇が負担だが、最近の受注好調局面では大きく悪影響を及ぼさないと見る」としながらも、「長期的に世界景気低迷で受注が凍りつくことはありうる」と話した。
輸出も問題だが、内需も心配だ。COVID-19の余波が依然として残っているうえに、ロシア・ウクライナ戦争の長期化などで原油価格、鉄鉱石など原材料価格の上昇で生産者物価はもちろん消費者物価が大幅に上昇しインフレ憂慮が高まっている。景気低迷の可能性を排除できないという話だ。
この場合、自動車や全体内需萎縮はもちろん、生産、供給、需要など全部門が新型コロナウイルスの時のようにまともに作動せず、製造業萎縮などにつながる危険もある。統計庁によると、今年4月の中小製造企業の生産指数は102.7を記録し、前年同月比1.6%減少した。3月に続き2ヵ月連続下落傾向だ。これは4月の景気同行・先行指数循環変動値が同伴下落した背景と軌を一にする。
これに対し韓国開発研究院(KDI)は今月9日に出した「経済動向6月号」で「製造業鈍化で景気回復傾向は弱化する姿」とし「金利引き上げは景気下方要因」と診断した。グローバルサプライチェーンの撹乱と原材料価格の上昇で製造業景気が鈍化しているためだ。内需の場合、物価上昇の勢いで購買力が低下しているという判断だ。
これはサムスン電子の株価が今月17日、1年7ヶ月ぶりに5万ウォン(約5207円)台まで下落した背景にも一定部分作用していると分析される。単純に今年下半期のメモリ半導体業況見通しがあまり良くないということ以外にも、米国の基準金利引き上げによるグローバル金融および経済リスクが高まった影響も無視できないと見られるためだ。
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