味の素社が製造するABFの調達懸念で韓国半導体業界は非常事態に…なぜ?

高性能コンピューティング(HPC)半導体の需要供給不均衡が崩れていない。人工知能(AI)、電気自動車市場の拡大でデータ量が急増したうえ、これを超高速で処理しなければならないためだ。同じ脈絡で、該当チップ専用パッケージ基板も供給難に直面しているという。韓国メディア「Digitaldaily」が報じた。(写真:味の素によるABF供給懸念=Digitaldaily)
原文記事:https://www.ddaily.co.kr/news/article/?no=240736

問題は半導体基板業界の増設作業が円滑でないという点だ。主要製造装備リードタイム(注文から納品までの期間)が2年を超えており、核心素材を日本の特定企業が独占しているため、生産能力(キャパ)の拡大が制限的だ。日本と印刷回路基板(PCB)市場で競争する韓国国内メーカーはさらに非常事態だ。数量が不足し、自国の顧客企業に優先配当するためだ。

27日、業界によると、味の素ビルドアップフィルム(ABF)の需要が供給量を超えた。

ABFは絶縁素材だ。半導体で発生する電流問題を解決し、電子が安定的に流れるように誘導する役割をする。剛性(変形に抵抗する程度)と耐久性の高いABFを使えば、半導体基板内の微細パターンを実現するのに有利だが、厚さが厚くなりスマートフォンなどモバイル機器には適していない。

したがって、中央処理装置(CPU)、グラフィック処理装置(GPU)など相対的にサイズが大きくても良い高付加価値チップ用基板に投入される。ABF採用基板としてはフリップチップ(FC)-ボールグリッドアレイ(BGA)が代表的だ。

現在ABFは名前から分かるように、日本の「味の素」が事実上独占・寡占している。市場シェアは98%以上と推定される。味の素は世界で初めて人工調味料(MSG)を製作した会社だ。グルタミン酸にナトリウムを結合したのがMSGの始まりだ。同社はグルタミン酸を構成するアミノ酸を電子材料分野に活用し、1990年代からABF事業を本格化した。世界有数の化学メーカーがABF開発に参入したが、歩留まり(完成品のうち良品の割合)と絶縁性向上に困難を来たし、味の素の牙城を崩せずにいる。

最近、BT(Bismaleimide Triazine)レジンを使用するBT系列基板よりABF系列基板市場が急速に成長し、味の素の地位が次第に高まっている。ちなみにBT系列ではアプリケーションプロセッサ(AP)などに装着されるフリップチップ(FC)-チップスケールパッケージ(CSP)が代表的だ。

味の素によると、会計年度2020年(2020年4月~2021年3月)から2025年(2025年4月~2026月3月)までのABF出荷量が年平均約18%増える見込みである。味の素が毎年キャパを増大しているが、日本、台湾、韓国顧客のFC-BGA投資規模に及ばない。ABF供給難が発生せざるを得ない構造だ。

半導体業界の関係者は「味の素がABFを独占したため、業界全般に供給支障が避けられない」としながらも「どうしても自国企業であるイビデン、新光電気などを優先順位に置くことになる」と話した。結果的にサムスン電機をはじめ大徳(テドク)電子、コリアサーキット、LGイノテックなどはABF確保戦で押されるという意味だ。最近、兆(千億円)単位の投資を断行したサムスン電機を除いた残りの企業の状況はさらに良くないという噂だ。

また別の関係者は「代案がなく供給先多角化が不可能な部分が否定的」とし「ABFを最大限多く需給できるよう味の素との交渉および関係維持が重要な時点」と伝えた。

一方、味の素は2021年(2021年4月~2022年3月)の業績でもABF上昇の勢いが分かる。味の素は4つの事業部に分かれるが、該当期間ABFが含まれたヘルスケアおよびその他の製品部門だけ営業収益が前年比65.1%上昇した。残りの部門はマイナス成長となった。

参考記事:熱を帯びてきた半導体基板市場…サムスン・LGは大規模投資と人材採用加速
参考記事:韓国、PCB分野でも内製化目指す…半導体基板・設備の国産化「加速」
参考記事:韓国進出日系企業…軒並み売上減も電気・電子は善戦、半導体素材は収益悪化

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