EVの競争力は価格…安価な中国LFPバッテリーに韓国各社の対応が急がれる

世界の電気自動車(EV)市場の競争の中心が性能から価格に移動し、中国バッテリーメーカーが主に生産するLFP(リチウムリン酸鉄)バッテリーが市場主導権を急速に確保するという見通しが出ている。韓国メディア「BUSINESS POST」が報じた。(写真:中国CATLのEVバッテリーパックイメージ=CATL)
原文記事:https://www.businesspost.co.kr/BP?command=article_view&num=285083

LFPバッテリーと比べて価格競争力が劣る三元系バッテリーを生産するLGエナジーソリューションとSKオン、サムスンSDIの韓国バッテリー3社が対応戦略を講じることがさらに急がれる。

米国IT専門誌のテッククランチは6月27日、「中国の電気自動車市場を支配しているLFPバッテリーが、今や世界市場の勢力図を変えようとしている」とし、「米国や欧州などでシェアを急速に伸ばしている」と報じた。

テッククランチは、市場調査機関APC分析を引用して、現在欧州で生産されている電気自動車のうち25%は、中国メーカーのLFPバッテリーを搭載していると推定した。

中国以外の北米と欧州の顧客企業がこれまで三元系バッテリーを好んできたが、最近はバッテリー原価上昇と素材供給不足に不安を感じ、LFPバッテリー搭載を拡大しているということだ。

特にテスラとフォード、フォルクスワーゲンが積極的にLFPバッテリー採用計画を明らかにし、主要電気自動車メーカーがLFPバッテリーへの技術転換に拍車をかける際の先頭に立っている。

テッククランチによると、市場調査機関のアリックスパートナーズも最近の報告書で、現在世界の電気自動車市場で約17%の割合を占めるLFPバッテリーが急速に大衆化していると分析した。

2030年までに米国で発売される電気自動車のうち250モデルがLFPバッテリーを搭載し、価格競争力を前面に出して電気自動車の普及拡大に重要な役割を担うという分析も出た。

LFPバッテリーは最近、バッテリー素材の供給支障の長期化に伴い、さらに注目されている。生産支障で価格が急激に上昇するニッケルやコバルトなど金属原材料を使わないためだ。

中国バッテリーメーカーが全世界生産量の95%以上を占め、事実上独占しているLFPバッテリーの採用増加は、自然に現在韓国バッテリー3社がリードしているバッテリー市場の主導権を脅かすしかない。

LGエナジーソリューションとSKオン、サムスンSDIの韓国バッテリー3社は、エネルギー密度と効率性がLFPバッテリーより高い三元系バッテリーを通じて電気自動車市場の初期から欧州と北米の顧客企業を確保し、支配力を育ててきた。

しかし、韓国バッテリーメーカーの主要顧客だったフォルクスワーゲンやフォードなどの企業が相次いでLFPバッテリー採用拡大に強い意志を示し、立場が不安になっている。

さらに、電気自動車バッテリー1位の中国CATLが新型「キリン」LFPバッテリーを通じて三元系バッテリーより高いエネルギー密度と効率性を実現するなど、技術発展にも速度を上げ、脅威がさらに大きくなった。

韓国バッテリー3社がLFPバッテリー需要増加に対応する効果的な方法を用意できなければ、電気自動車市場が急成長する過程で顧客企業の需要を大挙奪われるしかない状況に置かれたわけだ。

APCは、大型SUVや高価セダンなど性能が重要な電気自動車車種で、LFPバッテリーの採用が拡大する可能性は高くないと見込んだ。

しかし、普及型モデルには急速に搭載が拡大し、電気自動車市場の成長を導くのに重要な役割を果たすものと予想された。

アリックスパートナーズが行ったアンケート調査の結果によると、電気自動車を購入する際、内燃機関車より25%以上高い価格を支払う意思があると回答した消費者の割合は10%にとどまった。

結局、電気自動車需要に価格が重要な要素として作用するという意味であり、したがって電気自動車原価に最も大きな比重を占めるバッテリーの価格競争力も今より高くならなければならないということだ。

このような市場状況で自然に原価が相対的に高い韓国バッテリー3社の三元系バッテリーが需要を確保しにくい状況が続くしかない。

LGエナジーソリューションなど一部のメーカーがエネルギー貯蔵装置(ESS)などに使われるLFPバッテリーを開発中であり、今後電気自動車分野に採用を拡大する可能性もあるが、これを短期間に実現することは容易ではない。

すでにCATLをはじめとする中国バッテリー企業が莫大な生産投資を通じてLFPバッテリー市場を支配しており、彼らの原価競争力と生産能力に追いつくことは容易ではないためだ。

結局、韓国バッテリー3社が三元系バッテリーで勝負をしなければならないだけに、顧客企業にLFPバッテリー対比三元系バッテリーの長所を十分に説得できる競争要素を確保しなければならないという分析が出ている。

LFPバッテリーは根本的に三元系バッテリーと比べて走行距離とエネルギー密度、重さなどの側面で技術発展に限界がある。

韓国のバッテリーメーカーがこのような点を考慮し、三元系バッテリーの長所をより明確に表せるようにバッテリー性能の改善に十分な成果を出せば、顧客はもちろん消費者も三元系バッテリー基盤の電気自動車をさらに好むようになる可能性がある。

バッテリー生産設備投資を増やし、規模の経済効果で原価を削減し、ニッケルとコバルト使用量を減らすなど、三元系バッテリー原価を下げることができる新技術を開発することも、韓国バッテリー3社が推進していける課題に挙げられる。

アリックスパートナーズは報告書で「世界の電気自動車市場は性能中心から価格中心の市場に急速に変わっている」とし、電気自動車およびバッテリーメーカーがますます価格競争力に集中するしかないと見通した。

参考記事:グローバル攻勢かける中国CATLをけん制する韓国バッテリーの切り札「特許」
参考記事:韓国バッテリー各社、ニッケル価格急騰を受けLFPバッテリー導入を急ぐ
参考記事:グローバル完成車メーカーがLFP採用…Kバッテリー各社が事業戦略修正へ

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