韓国内で唯一、半導体ウェハー(原版)を生産するSKシルトロンが、本格的な人材雇用と設備拡大に乗り出す。高物価・高金利でグローバル景気不確実性まで重なるなどメモリ半導体価格下落憂慮が大きくなっている状況でも、予定通り挑戦的な投資を決めたのだ。業界は長期供給契約を締結し、需要下落から相対的に自由なウェハー企業の業績向上が期待されると予測している。韓国メディア「マネートゥデイ」が報じた。(写真:SKシルトロン)
原文記事:https://news.mt.co.kr/mtview.php?no=2022072113431427262
24日業界によると、ロシア・ウクライナ事態の長期化とインフレなどで半導体が使われるIT機器の需要が萎縮し、メモリ半導体価格の下落が現実化した。市場調査会社のトレンドフォースは、今年第3四半期のDRAM価格は10%、NAND型フラッシュは最大13%まで下がりかねないと分析した。ストラテジーアナリティクス(SA)も今年のグローバルスマートフォン需要予測値を昨年9月の14億2000万台から今年6月は12億8400万台へと下方修正した。
しかし、ウェハーメーカー各社は半導体需要減少の見通しにも関わらず、我先に投資拡大計画を発表している。ウェハーは半導体の基板を作る核心素材で、ハードルが高く、日本信越化学とSAMCO、韓国SKシルトロンなど全世界主要5企業が90%以上を寡占している。SKシルトロンは本社が位置した亀尾(クミ)3公団に3年間、計1兆495億ウォン(約1090億円)を投資し、1000人以上を採用して300㎜(12インチ)ウェハー製造設備を増設することにした。
ウェハーメーカーが投資を拡大するのは、半導体メーカーと長期供給契約をすでに終えた状態であるためだ。通常、長期契約は2~3年以上の物量をあらかじめ供給することにする契約であり、短期的な需要変化に対応できる一種の安全装置だ。韓国信用評価は最近、SKシルトロンが長期供給契約で数千億ウォン台の前受金を受け取るとし、企業信用等級予測を「安定」から「肯定」に上方修正した。
今回のメモリ半導体の冬が短期的な変化に止まるだろうという見通しも作用した。特に、SKシルトロンのように非メモリ半導体部門のウェハーも一緒に生産する企業の場合、他の部門間のヘッジング(価格変動の危険を防ぐ取引)が可能で、相対的に影響が少ない。業界関係者は「主要企業等は今回の半導体価格下落が一時的に小幅に止まると見通している」とし「ウェハー増設競争が深刻化するのも同じ理由」と述べた。
SKシルトロンの大衆依存度が低く、米中対立や中国封鎖など外部の悪材料に動揺しないのも長所だ。SKシルトロンは、ウェハー原材料であるポリシリコンの安定的な需給のため、米国やドイツ、日本、韓国など多くの国と調達契約を結び、対中国依存度を最小限に抑えた。台湾ウェハー製造会社であるグローバルウェハースが公開的に韓国投資に言及したのも肯定的な要因だ。国内に生産基地が増設されれば、業界の声が力を得て、政策的な支援が拡大する可能性がある。
SKシルトロンは今後、ウェハーASP(平均取引価格)をライバル会社の信越化学・SAMCOと似た水準に引き上げる見通しだ。これら企業は最近ウェハー価格を20~30%引き上げると発表し、SKシルトロンの引き上げ率は公開されなかったが、似たような水準で決定されるものと見られる。
業界関係者は「2026年までにウェハー需要拡大が続くものと見られるうえに半導体価格下落に関係なくウェハー在庫を確保しようとする動きも見せている」とし「メモリ半導体サイクル下落がウェハー需要を減少させるほど強くなくSKシルトロンなど主要ウェハー製造会社の今年の業績が改善されるだろう」と述べた。
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