サムスンディスプレイが量子ドット(QD)-有機発光ダイオード(OLED)設備投資を急いでいない。家電需要の鈍化と経済低迷を考慮して慎重に接近している様子だ。ただ、業績改善のためにはQD-OLEDの拡大に力を入れるべきだという見方も出ている。韓国メディア「Digitaldaily」が報じた。(写真:サムスンディスプレイが展示したQD-OLED=Digitaldaily)
原文記事: https://www.ddaily.co.kr/news/article/?no=244493
13日業界によると、サムスンディスプレイは今年6月に終了した液晶表示装置(LCD)パネルの生産ラインの用途を確定していない。QD-OLEDラインナップの拡大を予告したが、設備投資は躊躇しているものと見られる。
サムスンディスプレイのソン・ホ副社長は今月11日、「K-ディスプレイ2022ビジネスフォーラム」で「来年上半期にQD-OLEDディスプレイラインナップを追加し、今後も引き続き拡大していく予定」とし、「来年は有意義なQD-OLED出荷量を期待している」と強調した。
これに合わせてサムスン電子も来年上半期にQD-OLED製品ラインナップの追加を検討している。QD-OLEDテレビの販売地域を欧州とオーストラリア、東南アジアにも広げている。サムスン電子は今年3月にQD-OLEDテレビを発売したが、当時は販売を北米地域に限定した。このため、業界ではサムスン電子がQD-OLEDテレビの拡大に消極的だとの見方も示した。しかし、サムスン電子の関係者は「QD-OLEDを漸進的に拡大していく計画」と明らかにした。
現在、QD-OLEDラインは1つが運営されている。65インチと55インチを合わせて年間200万台程度生産できるという。LGディスプレイのホワイト(W)OLED生産能力が年間1000万台以上であることと大きく差がある。QD-OLEDが市場シェアを高めるためには、テレビ大型化傾向によってパネルサイズを拡大しなければならない。既存の生産量を減らさずに大型ラインナップを増やすためには、1つの生産ラインでは限界がある。
ただ、サムスンディスプレイのQD-OLED関連増設は未知数だ。対内外の不確実性による投資負担が大きく、QD-OLED設備の拡大に消極的なものと分析される。これに先立ち、第8.5世代QD-OLED生産ライン構築に3兆ウォン(約3070億円)を投資した。第2四半期のカンファレンスコールでは、QD-OLED関連の初期費用負担が大型パネル事業部の業績に影響を及ぼしたと言及した。これを考慮すれば、QD-OLED事業が損益分岐点に到達するまでは相当な時間が必要だ。
また、QD-OLED設備を拡充するためには、主要顧客であるサムスン電子が一定数量を消化してこそ収益性が確保される。しかし、サムスン電子としても第2四半期に入って家電需要鈍化と在庫増加、物価上昇などの影響でラインナップ追加と物量拡大が容易ではない状況だ。
ディスプレイ業界関係者は「サムスンディスプレイが大型LCD事業を終了したため、業績改善のためにはQD-OLED事業に手をこまねいているわけにはいかないだろう」と述べた。サムスンディスプレイも第2四半期のカンファレンスコールで、下半期以降QD-OLEDの本格的な販売拡大で赤字を記録している大型パネル事業部の収益改善に期待をかけている。
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