サムスン電子、3DイメージセンサーがGalaxy未採用で事業縮小か

サムスン電子が2020年に紹介した3次元(3D)飛行距離測定(ToF)イメージセンサー「アイソセルビジョン」が最近製品リストから消えたことが確認された。拡張現実(AR)・仮想現実(VR)・混合現実(XR)の浮上でサムスン電子もやはりこの分野の必須半導体である3D ToFセンサー市場に挑戦したが、最も大きな顧客であるサムスンGalaxyに採用されず事業が大きく萎縮したと業界は見ている。韓国メディア「ChosunBiz」が報じた。(写真:アイソセルビジョンのkeyイメージ=サムスン電子)
原文記事:https://biz.chosun.com/it-science/ict/2022/10/17/3NLK2LVQXVHGZAP25XZQ5GUAPM/

17日、電子業界によるとサムスン電子が生産する半導体製品と事業が見られる「サムスン半導体ホームページ(https://semiconductor.samsung.com/kr)」のイメージセンサーリストには3D ToFセンサーが入っていた「ビジョンセンサー」項目が抜けた。イメージセンサーリストに残っている製品は「モバイル」と「オートモーティブ(自動車)」だけで、それぞれ「アイソセル」と「アイソセルオート」を主力とする。韓国語ページだけでなく、グローバルおよび各地域のページでも該当項目は削除されている。

ただしインターネット検索サイトで「アイソセルビジョン」や「ISOCELL VISION」を検索すれば出てくる製品ページがあることはある。公式ホームページからは項目を外したものの、個別ページを削除できなかったものと考えられる。サムスン電子側は「製品リストから抜けたのは事実だが、事業は持続中だ」と明らかにしながらも現在顧客会社や応用先は公開できないと明らかにした。業界関係者は「中国スマートフォンなどに制限的に供給がなされていると見られる」と述べた。サムスン電子側は「まもなく新しい製品も出てくる予定であり、ホームページでも新しいページを用意する計画だ」と述べた。

3D ToFセンサーはカメラで物体に光を当てて反射して戻ってくるのにかかる時間を測定し、カメラと物体の間の距離を測り、これを基盤に3Dデジタル映像を作る技術だ。メタバースプラットフォームで仮想空間を実際とほぼ同じように実現するのに重要な役割を果たす。スマートフォンの生体測定やゲーム、自律走行車など、様々な分野でも活用が予想される。

市場の成長性は明るい。市場調査会社のヨブデベロップメントによると、2020年3Dセンサー市場は約65億ドル(約9674億円)から2023年は80億ドル(約1兆1907億円)に成長する見通しだ。さらに年平均14.5%成長し、2026年には150億ドル(約21兆4650億ウォン、約2兆2325億円)まで市場規模が拡大する。この市場のモバイル比重は46%、自動車分野22%であることが分かった。

サムスンシステムLSI事業部が開発した3D ToFセンサー「アイソセルビジョン」がまともに花を咲かせなかった背景としてはサムスンMX(モバイル経験)事業部がスマートフォンGalaxyにこのセンサーを採用することを否定的に考えたためだ。業界関係者「サムスンMX事業部は3D ToFセンサーがない現在のカメラシステムに消費者が満足していると把握している」と述べた。

サムスン電子は2019年第1四半期に発売したGalaxy S10に3D ToFセンサーを初めて採用した。続いてGalaxyNote10、Galaxy S20などに採用範囲を広げた。このセンサーを採用しながら関連モジュールを供給する協力会社の数も増やしたというのが業界の説明だ。ただ、当時3D ToFセンサーは主にソニーから納品された。サムスンシステムLSI事業部はこれを内製化するために「アイソセルビジョン」ブランドを作り製品を発売した。

サムスンMX事業部は2020年秋頃に発売したGalaxy Note20からカメラに3D ToFセンサーを除外した。当時、AR市場が思ったほど成長しなかったため、活用度が低いという判断を下したのだ。しかし、ほぼ同じ時期にアップルがiPhone12に3D ToFセンサーを採用し、サムスンもセンサー再装着を検討したが、最終採用が失敗に終わった。ちょうどグーグルはToFがなくてもAR機能を使えるデプス(深さ)アプリケーションインターフェース(API)を開発して配布したのもセンサー未採用の背景になった。

結果的にサムスンシステムLSIが作った3D ToFセンサー事業は支障をきたすことになった。最大顧客が使ってくれない場合、事業性が低下するのが主な理由だ。積極的に事業に参入する理由がないということだ。業界関係者は「ホームページの紹介が抜けたということは製品を積極的に販売する意志がないと解釈される」とし「スマートフォン需要が減少しているとしてもサムスン電子は年間2億台以上のスマートフォンを販売しており採用可否が事業性を分けた余地が大きい」と述べた。

参考記事:サムスンが開発した2億画素のイメージセンサー、シャオミのスマホに搭載
参考記事:2億画素 vs 1インチ…サムスンとソニー「イメージセンサー競争」火ぶた
参考記事:「我々が最高」サムスン電子VSソニー、イメージセンサー競争で更なる進化

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