世界的な需要鈍化で半導体市場が酷寒期を迎えている中、早ければ来年上半期中には業況が反騰するだろうという見通しが出ている。これに伴い、国内メモリ半導体のツートップであるサムスン電子とSKハイニックスがこのような需要に備えて激しい技術競争を繰り広げている模様だ。韓国メディア「dailian」が報じた。(写真:超低電力LPDDR5X=SKハイニックス)
原文記事:https://www.dailian.co.kr/news/view/1172958/
14日、業界によると、半導体業況の改善時期は来年第2四半期以降と予想されている。今年第4四半期から企業の強力な在庫調整でメモリ半導体需給および価格安定化が可能だという観測のためだ。これに対し、NAND型フラッシュは早ければ来年第2四半期、DRAMは第3四半期以降に入り、業況改善になるものと予測されている。
ただし国内外の主要半導体企業の今年第3四半期業績は昨年同期よりさらに悪化した状況だ。エンデミック転換と米国高金利政策などで需要不振が続いたためだ。しかし、このような容易でない経営環境にも業界は来年以降、需要を創出できる新技術研究・開発(R&D)に全力を尽くす姿だ。
特に、その中でもSKハイニックスの激しい追撃が目を引く。最近、次世代低電力・高仕様モバイル半導体(LPDDR5X)量産計画を明らかにしたのだが、世界で初めて「ハイケイメタルゲート(High-K Metal Gate・以下HKMG)」工程を導入したことが特徴だ。
HKMG工程は半導体工程の微細化にともなう漏洩電流を防ぐために誘電率定数(K)が高い物質(High-K・ハイケイ)を採用したという意味だ。今回ハイニックスが言及した製品は、国際半導体標準協議機構が定めた超低電圧範囲である1.01~1.12Vで作動する。前世代に比べて消費電力を25%減らし、業界最高の電力効率性を確保した。
モバイル用DRAMに分類されるLPDDR5Xは、主にスマートフォンやノート型パソコン、タブレットなどに使われる。一般DRAMに比べてサイズも小さく、電力もさらに少ない。規格名にLP(Low Power)が付くほど「低電力」消費が最大のカギだ。また、LPDDR5Xの場合、低電力だけでなく、前世代対比33%速い8.5Gbps(1秒当たりギガビット)の動作速度を誇る。
これはサムスン電子が先月にLPDDR5Xで業界最高動作速度である8.5Gbpsを実現したと発表してから1ヵ月ぶりのことだ。半導体業界では今後、このような低電力DRAMを巡る技術競争がさらに活発になるものと観測されている。これまでモバイル機器だけに搭載されていたのとは異なり、今後人工知能や電気自動車など活用範囲が広がる見通しだからだ。
SKハイニックスがこのようにモバイル用DRAMで追撃を加えてくると、サムスン電子はまた別のメモリ半導体であるNAND型フラッシュ領域で技術力を誇示している。最近、サムスン電子は世界最大容量の1Tb(テラビット)、第8世代V(バーティカル)、NAND型フラッシュの量産に入った状態だ。
昨年末、176段第7世代VNANDを発売してから約1年ぶりだが、業界では今回のNAND型フラッシュ製品の積層段数を236段と推定している。「段」はデータを保存するセル(Cell)層数を意味するが、何層でこのセルを積めるかによってデータ保存量が決定される。さらに、積層自体も高度な技術力を必要とする。
これに先立ち、米国メモリ半導体メーカーのマイクロンテクノロジーが世界で初めて200段以上のNANDを量産した経緯があるが、サムスン電子は今回の新製品が業界最高水準のビット密度の高容量製品でウェハー当りビット集積度が前世代より大幅に向上したとし原価競争力に自信を持っている姿だ。
これは米マイクロン、SKハイニックス、中国TMTCなど後発走者の激しい追撃の前でもサムスン電子が市場支配力を維持できる踏み台になるものと見られる。一方、市場調査機関であるオムディアによると、今年第2四半期基準でサムスン電子のNAND市場シェアは33.3%、SKハイニックスは20.4%を記録した。続いてキオクシア16%、ウェスタンデジタル・マイクロンが各々13%水準だ。
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