EVバッテリー業界、銅箔の二強「SKC-ロッテケミカル」が北米市場も狙う

米国のインフレ削減法案(IRA)発効でバッテリー業界が北米市場進出に速度を上げている。バッテリーセルに続き正極材企業の進出が可視化された中で、成長性が高いと見られる負極材部門電池箔(銅箔:Elecfoil)企業進出計画も相次いでいる。韓国メディア「digitaltoday」が報じた。(写真:イルジンマテリアルズ)
原文記事:http://www.digitaltoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=465067

これに伴い、SKC投資会社のSKネクシリスとロッテケミカルが買収を進めるイルジンマテリアルズの二強構図が構築されるか関心が集まる。

銅箔の先頭走者はSKC投資会社のSKネクシリスだ。昨年、SNEリサーチの調査基準で22%のシェアで1位を占めた。中国のワトソン(19%)と台湾のチャンチュン(18%)、イルジンマテリアルズ(13%)の順だ。欧州ハンガリー法人を稼動しているソルース先端素材はまだ順位圏内に入っておらず、銅箔事業進出を可視化した高麗(コリョ)亜鉛もまだ工場新設段階だ。

SKネクシリスは北米圏域内の銅箔製造施設2ヵ所の建設を検討している。バッテリー需要が高まる米国とカナダにそれぞれ工場を建設し、北部・北西部中心のラストベルト、南部サンベルトの完成車およびバッテリー顧客をすべて確保するという戦略だ。

これに伴い、SKネクシリスの中長期生産能力計画は2025年までに25万トンになるものと予測される。国内の井邑(チョンウプ)(5万2000トン)、ポーランド(5万トン)、マレーシア(5万トン)、米国(各施設当たり5万トン)で、銅箔市場需要の主導権を握る計画だ。

ロッテケミカルに買収されたイルジンマテリアルズは、国内とマレーシアの生産基地に続き、スペイン、米国に生産拠点を設ける。これにより、2027年までに22万トン規模の生産能力を確保する計画を準備している。

ロッテケミカルがイルジンマテリアルズを買収し、国内銅箔業界の競争構図は二強体制に進む可能性が高くなった。電気自動車など高性能需要に応じて銅箔の厚さが6~8マイクロメートル(μm)水準に薄くなり、耐熱性を備えながらも広幅で切らなければならないなど進入障壁も高まっており、後発走者が追いかけにくいという観測からだ。

さらに、銅箔事業はチタンドラムをはじめとする初期設備投資費用が大きく、電力消耗が激しく固定費用が高い。一定水準の稼働率を確保できなければ、収益を上げにくい構造だ。さらに、米IRAまで発効し、現地企業の需要が増えており、銅箔後発走者が進入しにくい環境になったというのが業界の見方だ。

ただ、二強体制になりつつあるSKネクシリーズ、イルジンマテリアルズの負担も大きい。景気低迷の憂慮が大きくなっており、高金利・高為替レートが持続し、高い初期投資費用が障害物だ。

SKネクシリスの親会社であるSKCは、事業ポートフォリオへの転換に伴い、財務安定性の負担が拡大した。第3四半期の連結基準負債比率は189%に高まり、短期借入金および流動性長期負債が1兆5692億ウォン(約1642億円)規模に大きくなった。この中でSKネクシリス、米国アブソリックス法人など計1兆2000億ウォン(約1256億円)の投資が執行されるものと予想される。財務安全性を確保しながらも、景気が悪化した状況で投資を持続しなければならないわけだ。

これに関連してSKCはSKネクシリス投資関連資金調達と財務安全性に対しては大きな負担がないという立場だ。

SKCのチェ・ドゥファン最高財務責任者(CFO)は第3四半期カンファレンスコールで「借入に対する負担は12月初めにインダストリー素材事業ディールクロージングになれば売却代金が納入され、第3四半期末に負債比率が190%未満の水準だが現金を考慮すれば純負債比率は150%水準」とし「売却ディールクロージングが完了すれば120%水準に低くなり、銅箔事業投資財源計画はすでに確保されており財務安全性の側面で問題がない」と明らかにした。

イルジンマテリアルズを抱いたロッテケミカルの投資は、まだ疑問視されている。ロッテケミカルは第3四半期末基準で現金性資産が2兆2000億ウォン(約2303億円)規模で買収代金である2兆7000億ウォン(約2826億円)を納入するのに問題がなかった。

しかし、レゴランド発債券デフォルト事態で流動性危機に見舞われているロッテ建設に有償増資で少なくとも875億ウォン(約92億円)、短期資金5000億ウォン(約523億円)を貸与し、財務体力がやや落ちた。化学市況の悪化で営業損失が持続し、ナイス信用評価などが長期信用等級見通しを「否定的(Negative)」に調整した点も負担だ。

買収後もスペイン、米国進出にともなう増設投資費用に約2兆ウォン(約2093億円)程度がかかるものと予想される。

ロッテケミカルは、イルジンマテリアルズ買収代金を内部資金1兆ウォン(約1047億円)と金融機関を通じた外部資金で調達する予定だ。業界はロッテケミカルが最大2兆ウォン(約2093億円)の大規模有償増資を通じて資金を調達するものと観測している。

参考記事:ロッテケミカル、「銅箔の強者」イルジンマテリアルズ買収…2.7兆ウォン規模
参考記事:銅箔大手イルジンマテリアルズへのM&A検討で慌ただしいバッテリー業界
参考記事:SKネクシリス、世界初の4680バッテリー用「V銅箔」を開発…延伸率30%↑

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