米国と中国の貿易戦争がディスプレイ分野にまで拡大するものと見られる。
米国の制裁がなされれば、中国がOLED技術開発で困難を経験する可能性があるだけに、LGディスプレイのチョン・ホヨン代表取締役社長はOLEDで中国との技術格差を広げる機会をつかむことができるようになる。韓国メディア「BUSINESSPOST」が報じた。(写真:BUSINESSPOST)
原文記事:https://www.businesspost.co.kr/BP?command=article_view&num=301182
20日、ディスプレイ業界によると、米国の中国に対する貿易制裁がディスプレイ産業に拡大する可能性があるという観測が提起されている。
台湾市場調査機関のトレンドフォースは「米国政府はディスプレイ技術開発とパネル生産能力増強において中国が優位を占有する可能性に注目している」とし「半導体産業に続きディスプレイ分野にも部品および装備輸出規制が加えられるだろう」と見通した。
トレンドフォースは、米国が中国企業に対する技術輸出制限規定の範囲を拡大することに備え、中国ディスプレイ企業がディスプレイ用半導体(DDI)をはじめとする原材料供給先を多角化する計画を立てていると伝えた。
特に、米政府の中国ディスプレイ産業に対する制裁は、先端技術であるOLED分野で行われるという見方も出ている。
IT専門メディアのデジタイムズは「米国政府が中国ディスプレイ企業を対象に先端ディスプレイ技術であるOLED分野で素材と装備を販売できないよう制限する内容を盛り込んだ規制措置を近いうちに発表する」と報道した。
中国ディスプレイ企業に対する米国の制裁は、大型OLED市場でシェア90%を超え、圧倒的な先頭圏を走っているLGディスプレイには好材料になりうるという分析が提起されている。
中国企業に制裁が加えられる場合、チョン社長としてはOLEDをはじめとする先端技術で格差をさらに広げられる時間を稼ぐことができるということだ。
電子業界ではOLED技術で韓国企業が中国企業を少なくとも1~2年ほどリードしていると評価している。
しかし、中国政府がLCD市場で集中していた自国企業に対する支援をOLED分野でも施行すれば、LGディスプレイとしては危機感を感じるしかない。
LGディスプレイはテレビ向け大型OLEDで強者として位置づけられているが、現在、グローバルテレビ向け大型OLED市場はまだ年間1千万台に達していない。今年、全世界のテレビ出荷量が約2億台程度であることを考慮すれば、テレビ向け大型OLEDは今まさに胎動する市場であるわけだ。
それだけに、自国政府の補助金を基に、中国企業がOLEDでも価格攻勢に出れば、LGディスプレイは進んだ技術力にも中国ディスプレイ企業に市場を奪われかねないという懸念が多かった。
しかし、米国の制裁措置が現実化すれば、LGディスプレイは価格攻勢を超える品質競争力を守る余裕を持つことができるものと予想される。
LGディスプレイは、中国の自国企業に向けた補助金のため、テレビ向けLCD市場で苦戦しているが、米国の制裁が現実化すれば、テレビ向けLCD事業から撤退するのに必要な時間もさらに稼げる。
ただ、LGディスプレイは中国広州と南京、煙台などにディスプレイ生産工場を持っており、米国の制裁が中国地域にある生産施設に広がる様相を見せる場合、困難に直面する可能性も排除できない。
ディスプレイ業界のある関係者は「国内ディスプレイメーカーは米国と中国の対立局面で受ける否定的影響を最小化するためにグローバル市場の経済的・政治的状況を鋭意注視している」とし「国内ディスプレイメーカーは中国と国内に工場を保有しているだけでなく顧客会社も多様に構成されているだけに市場状況に適切に対応する方案を立てていると理解している」と述べた。
LGディスプレイのチョン・ホヨン代表取締役社長は、生産効率化と人材運営の弾力性を確保し、LGディスプレイの財務構造を改善しているが、これを土台に中国とOLED技術の格差を広げる準備をしているものと把握される。
LGディスプレイは今年第3四半期に大規模な営業損失を出し、テレビ向けLCDパネルの国内生産工場の稼動を中止する計画を検討している。また、国内の坡州(パジュ)OLEDラインも一部の生産量を稼働率調整を通じて調整していることが把握される。
合わせてチョン社長は生産職全社員を対象に一部給与を支給する自律休職を実施する方案も検討している。休職申請は少なくとも3ヵ月から最大7ヵ月程度に決まるものと把握される。
LGディスプレイ関係者はビジネスポストとの通話で「生産効率化のために生産職職員を対象に支援を受け一時的に自律休職を実施する方案を検討している」とし、「LGディスプレイは市場変化に機敏に対応し業績を改善できるよう最善の努力を尽くす」と述べた。
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