サムスン電子とSKハイニックスが米国「半導体および科学法(半導体法)」対応に奔走している。近いうちに公開される細部指針によって、中国生産ラインの運営に支障をきたす恐れがあるためだ。韓国メディア「Digitaldaily」が報じた。(写真:米バイデン大統領)
原文記事:https://www.ddaily.co.kr/news/article/?no=257214
12日、業界によると、米商務省は今月中に半導体法補助金申請手続き、支給日程などを発表する予定だ。現地政府は主要国やグローバル半導体企業と関連議論を進めているという。
昨年8月、バイデン米大統領が署名した半導体法には、自国内の半導体投資企業に527億ドル(約67兆ウォン、約6兆9425億円)規模の補助金と税制優遇などを提供するという内容が盛り込まれている。
韓国企業等が神経を尖らせているのは「ガードレール」条項だ。支援を受けた企業は今後10年間、米国の安保に脅威を与える国家に半導体投資ができないというのが骨子だ。事実上、中国を牽制するために設けられた条項だ。
現在、サムスン電子は米テキサス州テーラー市にファウンドリ工場を建設しており、SKハイニックスは先端パッケージングおよび研究開発(R&D)施設を米国に構築する計画だ。今後の追加投資も有力視されている。両社とも半導体法によって支援を受けることになる。
問題は両社が中国にメモリ工場を稼動している点だ。 サムスン電子は西安、SKハイニックスは無錫にそれぞれNAND型フラッシュとDRAM製造基地を置いている。規模も小さくない。サムスン電子のNAND生産量40%、SKハイニックスのDRAM生産量50%水準を中国事業場が責任を負っている。
昨年、1年猶予期間を受けたうえ、既存施設が正常に稼動しているだけに、直ちに問題はないが、長期的な影響は避けられない。工場のメンテナンスレベルで一部装備の交換が必要であり、メモリ工場の場合、世代交代にともなうライン転換が行われなければならない。ガードレール条項がどのように決まるかによって、中国事業の運命が決まるという意味だ。
このため、サムスン電子とSKハイニックスは、米国内の合法的なロビーを進めているという。これに先立って対米貸館業務組織を強化したりもした。韓国政府とも緊密な議論を続けている。
不確実な環境に対する対策も樹立している。これに先立ってサムスン電子は「中国工場を安定的に稼動させるまで多くの時間がかかった。非常に慎重な判断が必要だ」と伝えた。SKハイニックスは「ファブを運営しにくい状況が来ればファブまたは装備を売却したり設備を韓国に持ってくるなどのシナリオを検討中」と明らかにした経緯がある。
一方、米国半導体法の輪郭が現れる渦中に租税特例制限法など「Kチップス法」は遅々として進まない。先月、政府が半導体施設投資税額控除額を引き上げる改正案を出したが、国会ではまともな議論すら行われていない。
これに対し韓国半導体産業協会は「最近グローバル景気鈍化、金利引き上げ、半導体不況など経済環境悪化で民間投資心理が大きく萎縮している」とし「今回の政府の決定は国や半導体危機克服に大きく役立つと評価する。業界の中長期的な投資計画樹立のために今月中に迅速な立法推進を国会に要請する」と強調した。
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