バッテリーの核心原料である炭酸リチウムの価格が急速に下落している。これに伴い、韓国バッテリーメーカーの原価負担が減るだろうという期待が出ている。しかし、韓国国内企業が主力とする高仕様バッテリー原料である水酸化リチウムの価格は依然として高く、コスト削減効果を期待するのは難しいという分析だ。韓国メディア「マネートゥデイ」が報じた。(写真:マネートゥデイ)
原文記事:https://news.mt.co.kr/mtview.php?no=2023031008491759362
韓国国内メーカー各社は先を争って水酸化リチウムの確保に乗り出した。金融投資業界では、高仕様バッテリーの需要が持続的に増え、水酸化リチウムの価格が再び上昇する可能性があるという見通しが出ている。
10日、KOMIS(韓国資源情報サービス)によると、今月8日の炭酸リチウム価格は前取引日より2.87%下落したキログラム(㎏)当たり304.5元(約5919円)を記録した。今年に入って炭酸リチウムの価格は35.8%下落した。
炭酸リチウムの価格は、2021年に電気自動車の生産が本格化し、急激に上昇し始めた。2021年初め、kg当たり60元(約1166円)水準だった炭酸リチウムの価格は、昨年11月11日、kg当たり581.5元(約1万1千円)まで上昇した。2年足らずで9倍以上跳ね上がったのだ。
しかし、昨年末から炭酸リチウムの価格が下落し始めた。グローバル正極材および完成車メーカーが在庫調整に入った影響だ。さらに、中国バッテリーメーカーのCATLが一部の顧客を対象に、市場価格より低い価格でリチウムを供給することにした点も影響を与えた。CATLの中国市場でのシェアは50%以上である。
炭酸リチウムは低価格電気自動車に主に使われるLFP(リチウムリン酸鉄)バッテリーの原料だ。過去、炭酸リチウム価格が上昇した時は販売価格調整でバッテリー価格が共に上昇したが、今はその逆に作用するだろうという予想が出ている。
SK証券のユン・ヒョクジン研究員は「短期的にセルメーカーは原価改善にともなう恩恵を受けることができるが、長期的にはバッテリー価格下落圧力として作用するだろう」と述べた。
炭酸リチウムと違って、高仕様ハイニッケル三元系バッテリーに使われる水酸化リチウムの価格は依然として高い。9日(現地時間)、LME(ロンドン金属取引所)で取引される水酸化リチウムの価格は、前取引日と同じ1トン当たり7万2239.13ドル(約974万円)を記録した。2ヵ月前より11.67%下落した。同期間、炭酸リチウムの価格は32.7%下がった。
正極材に使われるリチウム化合物は炭酸リチウムと水酸化リチウムに分けられる。水酸化リチウムは炭酸リチウムよりエネルギー密度が高く、国内で主に生産するハイニッケル三元系バッテリーに使われる。ハイニッケル三元系バッテリーはNCM(ニッケル・コバルト・マンガン)、NCA(ニッケル・コバルト・アルミニウム)などだ。
専門家たちは炭酸リチウムと違って水酸化リチウムは長期的な需要増加で価格が上がると見ている。グローバル電気自動車メーカー各社が、中・高価格電気自動車に効率の高いハイニッケル三元系バッテリーをさらに多く搭載するという理由からだ。
ハイ投資証券は、2027年以降は水酸化リチウムの供給が需要に追いつけず、需給不安現象が現れかねないと見通した。ハイ投資証券のイ・サンホン研究員は「水酸化リチウムは現在のリチウム採掘および製錬技術が急増する需要に追いつくには力不足であり、今後の価格が漸進的に上昇するだろう」と述べた。
国内バッテリーメーカーも水酸化リチウムの確保に乗り出した。高まる原価負担に備えるためだと解釈される。ポスコホールディングス(POSCOホールディングス(320,500ウォン、約3万3千円 ▼2,000 -0.62%))はアルゼンチンに水酸化リチウム生産工場を建設している。年間2万5000トン規模を生産でき、2024年上半期の竣工が目標だ。SKオンも昨年10月、豪州資源開発会社のレイクリソースの持分10%を買い入れた。
バッテリーメーカー関係者は「今後、水酸化リチウム価格が上がることに備えてバッテリー関連企業が先を争って鉱山開発企業と業務協約(MOU)を締結し、持分投資を断行している」とし「資源確保に総力を傾ける状況」と述べた。
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