[特集]”コリアンスリー”によるEV電池・正極材の確保競争

 
電気自動車バッテリー(EV電池)の市場が急速に拡大するなか、韓国のバッテリーメーカーとバッテリー素材企業の提携が相次いでいる。完成自動車メーカーとバッテリーメーカーの間で見られるような戦略的同盟関係が、バッテリー素材分野にも波及している形だ。バッテリーメーカーは急成長する電気自動車市場に備え、原料供給を安定化する必要があるからだ。

通称・コリアンスリーと呼ばれる韓国バッテリーメーカー三社は、昨年より電気自動車バッテリーの核心素材である正極材を得るため、バッテリー素材企業と次々に提携関係を結んだ。

LG科学は昨年9月、正極材の分野で世界1位とされるベルギーのユミコアと合計12万5000tの正極材供給契約を締結した。同契約規模は高性能電気自動車100万台以上のバッテリーを製造できる分量である。今年1月には韓国のポスコケミカルと今後3年間で1兆8533億ウォン(約1711億円)規模の正極材の供給を受ける契約を締結した。

(参考記事:「ポスコがLG化学へのEVバッテリー素材供給を正式発表。1兆8533億ウォン規模ポスコがLG化学へのEVバッテリー素材供給を正式発表。1兆8533億ウォン規模ポスコがLG化学へのEVバッテリー素材供給を正式発表。1兆8533億ウォン規模」

今月3日には、SKイノベーションも、韓国の正極材メーカーであるエコプロビーエム社(ECOPRO BM)と約2兆7000億ウォン(約2487億円)規模の中長期供給契約を結んだ。エコプロビーエムはSKイノベーションに供給するための専用工場を韓国の浦項(ポハン)に建設する予定であり、生産規模は年算2万6000tとみられている。

(参考記事:「SKイノへの正極材供給を正式発表。4年2.7兆ウォン規模」)

サムスンSDIは今月12日に、エコプロビーエム社と合弁会社の設立を発表。当初はSKイノベーション同様、供給契約になるとみられていたが、合弁という、より踏み込んだ形になった。同合弁会社は「エコプロイーエム」という社名となり、サムスン側が480億ウォン(約45億円)、エコプロビーエム側が720億ウォン(約67億円)を投資する。持ち株比率はエコプロ側が6でサムスンが4となる。年内に韓国・浦項(ポハン)の迎日(ヨンイル)湾産業団地に新工場を建設し、2022年第1四半期から正極材の生産が可能になるという。こちらは年算7万トンとされる。サムスンSDIのハンガリー工場にほぼ供給されるものと推測される。

(参考記事:「サムスンSDIが正極材で合弁会社設立、次世代バッテリー「Zen5」に供給へ

エコプロビーエム社はサムスンSDIとSKイノベーションの2社と手を結ぶなど、韓国の正極材供給において重要なプレイヤーとなっている。(※LG化学とは関係が悪いという説がある)。同社はニッケルの割合が高いハイニッケル系正極材の分野でリードしている。ハイニッケル系は走行距離が長いとされる。
 

(写真:正極材イメージ)


 
正極材は電気自動車バッテリーの4大核心素材(陽極材、陰極材、電解液、分離膜)の一つであり、バッテリーの容量および出力に密接に関係する。電気自動車バッテリーは電気自動車完成品の製造原価の約4割を占めるといわれるが、その電気自動車バッテリーの製造単価の同じく約4割を占めるのが正極材とされる。正極材の生産は技術的に参入障壁が高いとされ、製造工場の建設にも数年かかる。

正極材の生産企業は世界的にみても数えるほどしかなく、バッテリーメーカーによる「確保競争」が激しくなるとみられる。韓国ではポスコケミカル、エコプロビーエム、L&Fなどが正極材を生産している。世界では、日本の住友化学や戸田、中国の杉杉集団、欧州のユミコアやBASF(独)などがある。

市場調査機関によると、電気自動車市場の爆発的な成長に伴い、正極材も2025年には最大350万tまで生産が増加すると予測される。昨年は40万t~50万tが生産された。

また、2018年に91億ドル(約1兆円)の規模であった世界の正極材市場は2025年には296億ドル(約3.3兆万円)まで拡大すると予測されている。

反面、コリアンスリーは先行投資もあり、この間、赤字状態であった。昨年バッテリー事業部門でLG科学は4543億ウォン(約419億5551万円)の営業損失を出し、SKイノベーションも3091億ウォン(約285億4600万円)の赤字であった。サムスンSDIも中大型バッテリー事業で大きな赤字を出したと見られる。しかし今年は、売上拡大と収率の改善等により黒字が予想されている。

黒字を実現し、持続するためにも、正極材の確保を確実にしなければならない。バッテリーの注文が増えても、正極材が無ければバッテリーを作れないからだ。そのため、各社ともに動いてきた結果が、昨年から続く一連の大型提携ということになる。韓国の電子系専門家によると、サムスンSDIが韓国の中堅企業と合弁会社を作ることは極めて異例であるという。合弁という、より強い「束縛」によって、正極材を確実に確保したいようだ。

業界では今後、電気自動車市場において、素材・部品メーカー側が供給者優位になるという見方も出ている。
 
 

執筆:イ・ダリョン(編集長)

 
 

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