サムスン電子のイ・ジェヨン副会長(サムスングループの実質総裁)が20日、韓国京畿道・華城(ファソン)にある自社事業所を訪問。今月から稼動に入った同社初となる極紫外線(EUV)専用の半導体生産ラインを視察し、経営陣とシステム半導体事業戦略を議論した。今年に入りイ副会長が同現場を訪問するのは二回目。昨年提示した「2030年システム半導体グローバル1位」達成するための意志を表わした行動であると、韓国各紙は報じている。
この日、イ副会長は、デバイスソリューション(DS・半導体)部門長であるキム・ギナム副会長とジョン・ウンスン=ファウンドリ事業部長(社長)、パク・ハクギュDS経営支援室長(社長)など、サムスン電子の主要経営陣と共に同事業所内の「V1ライン」を訪問した。こイ副会長は生産ラインを点検し、その後、半導体部門の幹部たちと戦略会議を行った。
V1ラインは、サムスン電子にとって初となるEUV専用ラインである。 EUV露光技術は、波長の短い極紫外線光源としてウェハに半導体回路を刻む技術であり、従来の工程では不可能だった超微細回路の実装が可能となる。高性能・低消費電力の半導体を製造するために不可欠な設備だ。
サムスン電子は昨年、2030年までにシステム半導体分野で世界1位を達成するという「半導体ビジョン」を発表し、2030年までに133兆ウォン(約12.4兆円)をシステム半導体に投資するとした。システム半導体は、イメージセンサー、モバイルAP、CPU、など、さまざまな製品があり、また、ファブレス(半導体設計専門)、ファウンドリ(半導体受託生産)などの事業分野がある。このなかで、サムスン電子は、イメージセンサーおよびファウンドリ事業においてグローバル市場2位のシェアを占めている。
サムスン電子は同日、V1ラインを本格的に稼働し、EUVプロセスベースの7ナノ以下次世代ファウンドリ製品を生産する計画であると発表した。
サムスン電子は、V1ラインにおいて超微細EUVプロセスベースの7ナノから革新的なGAA(Gate-All-Around)構造を適用した3ナノ以下次世代ファウンドリ製品を主力に生産するとのこと。V1ラインは、5G・AI・自律走行など4次産業革命の時代を加速する次世代半導体の生産核心基地としての役割をするようだ。
サムスン電子は、最先端のプロセス技術をもとに、クアルコム、百度(バイドゥ)などの大型ファブレス(Fabless、半導体回路設計)企業との協力を推進し、モバイルからHPC(High Performance Computing)分野までファウンドリ領域を拡大している。
(参考記事:「サムスン・ファウンドリ、クアルコムの5Gモデムチップ生産へ」)
サムスン電子は、2019年4月、業界初となるEUV工程を適用した7ナノSoC製品を出荷したのに続き、2019年下半期から6ナノ製品の量産を開始したという。5ナノ工程は2019年下半期製品設計を完了。4ナノ工程は2020年上半期プロセス開発を完了し、下半期に製品設計終える計画とのこと。
また、システム半導体産業の生態系を強化するための「SAFE」プログラムなどを通じて、国内の中小ファブレス半導体メーカーとの共生協力を継続推進しているとした。SAFE(Samsung Advanced Foundry Ecosystem)」は、サムスン・ファウンドリとエコシステムパートナー、顧客との間の協力を強化して、優れた製品を効果的に設計することができるように支援するプログラムであるという。顧客が複雑な半導体チップの設計の難しさを克服し、より簡単に設計検証を行うことができるよう自動化設計ツールと設計方法論を提供しているとのこと。
(参考記事:「サムスン電子が半導体設計支援部署を一元化」)
サムスン電子の様々なファウンドリ設計資産(IPアドレス、ライブラリ)へのアクセスを高め、顧客、およびパートナーがより簡単かつ迅速に設計することができるように支援しているという。
(参考記事:「サムスンと中小ファブレスがIP共同開発へ」)
また、国内の中小ファブレスメーカーの開発活動に不可欠なMPW(Multi-Project Wafer)プログラムを工程ごとに年3〜4回拡大運営することにより、より多くの機会を提供しようと努力している。
(写真:V1ラインのあるサムスン電子の華城事業所=同社提供)