サムスン電子のファウンドリ事業部が、米国クアルコムの「スナップドラゴンX60」を受注したとロイター通信が18日(現地時間)報道した。スナップドラゴンX60は、クアルコムの第3世代モデムチップであり5ナノメートル(㎚)工程で生産される。 1ナノメートルは10億分の1メートルだ。クアルコムは、「既存の製品(第1世代X50、第2世代X55)より体積を大幅に減らした」とした。これまでの工程(7㎚)よりも微細なプロセスで製造するため、チップサイズが減る利点があるという説明だ。
第5世代(5G)移動通信チップスナップドラゴンX60は、アップルが来年に出す新型iPhoneにも搭載されると業界ではみられている。クアルコムとアップルは昨年4月、6年契約の特許の共有(クロスライセンス)契約を結んだ。同契約には、iPhone用の5Gモデムをクアルコムが提供する内容が含まれた。 X60の前世代格X55は、サムスン電子のギャラクシーS20に搭載された。
クアルコムは、スナップドラゴンX60を「5Gモデムと無線周波数(RF)システム」と紹介した。クアルコムは、RFチップの開発能においてで、サムスン電子のエクシノス(Exynos)、ハイシリコン(中国Huawei社の子会社)のキリン(Kirin)より優れていることで知られている。
韓国中央日報は、サムスン電子がスナップドラゴンX60を受注したのは、ファウンドリ事業の実利を追求したものと分析する。。サムスン電子は大きく、部品・モバイル・家電などの3つの事業構造を持っている。サムスン電子の携帯電話部門の無線事業部は、今年、ギャラクシーS20内需製品もアプリケーション(AP)と5Gチップをクアルコムのスナップドラゴンに統一した。
同紙によると、IT業界の一部では、クアルコムがスナップドラゴンX60生産をサムスンに任せたのは、台湾のTSMCを牽制しようとする目的があるという。チップ設計のみを行うクアルコムが、TSMCの市場支配力を制御するために、極紫外線(EUV)工程を前面に出すサムスンにシェアを与えたとのこと。
これと関連し、米国のウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は、米国商務省がTSMCを狙った新たな貿易規制を検討していると報道した。最終的には、中国ファーウェイ社への部品供給を制限するという意図があるとのこと。世界最大のチップ委託生産メーカーであるTSMCの全体の売上高のうち、10%以上である約350億ドル(昨年基準)がファーウェイ子会社であるハイシリコンとの取引によるとWSJは伝えた。ファーウェイの重要なパートナーであるTSMCが米国政府の規制ターゲットになると、ファーウェイが部品調達に支障をきたすのは必至だ。
ロイター通信は、サムスン電子のクアルコムチップ受注を伝えると同時に、TSMCもクアルコムの5㎚モデムチップを生産すると報じた。クアルコムは通常、APのパートナー格となるモデムチップは同じ会社の同じ工程で製造するとされるが、今回は別々に委託することから、 クアルコムがTSMCとサムスンを競争させているとの見方に繋がるようだ。
ロイター通信は、「多くのモバイル機器が5Gに切り替えたときにX60モデムチップを使用する可能性が高い」とし「今回の受注は、サムスン電子のファウンドリ事業を伸長するきっかけになるだろう」と伝えた。