SKハイニクスが次世代メモリ技術の一つである「HBM2E(High Bandwidth Memory)」の量産に近づいているという。韓国デジタルタイムス紙が報じた。HBM2Eは同時多発で押し寄せる膨大なデータを高速に処理することができる高帯域幅のDRAMであり、主に高付加価値市場である高性能サーバやスーパーコンピュータに入る。
現在、同製品は、サムスン電子が昨年から量産に入っているが、それ以外に競争相手がいないという。
米国の半導体メーカーであるシノプシスは、SKハイニクスのHBM2に、独自のパッケージング技術を適用したメモリシステム・オン・チップ(SoC)インターフェイスのIP(知的財産権)ソリューションを提供すると最近発表した。
同SoCは、台湾TSMCの7ナノ工程を適用し、JEDEC(国際半導体標準協議機構)のHBM2E SDRAMの規格に合わせたものであり、毎秒409GBの処理速度を実現するとメーカー側は説明した。フルHD級映画(3.7GB)110に対応するデータをわずか1秒で処理することができる速度である。
同紙によると、SKハイニクスが当初JEDECに提案したHBMは、DRAMを垂直に積み上げ、柱形にし、その間に数千個の微細な穴をあけ、電極に接続する(TSV:Through Silicon Via)パッケージング技術であるという。数千個の穴にデータに対応する電力を同時多発に送信することができ、従来のパッケージング方式と比較してサイズを30%以上、消費電力は50%以上削減することができる。
ただし、既存のDRAMパッケージと比較して単価が2〜3倍高く、体積もLPDDR4より大きいという。主に大規模なデータセンター(IDC)やスーパーコンピュータなど、超高性能の需要のみがあり、市場規模自体は大きくないとのこと。サムスン電子のDRAM事業全体においもてHBMが占める割合は一桁に過ぎないという。しかし、プレミアム市場で主導権を握ることができるという点で、波及効果が大きく、収益性も確保することができると同紙は指摘する。
また、第5世代移動通信(5G)と人工知能(AI)、IOTの時代の到来で高性能サーバの需要が増えていることから、今後の市場の見通しは明るいという。特に自律走行車が本格商用化される場合、車両内部で膨大な画像や交通情報などを瞬時に処理できるHBMは利用率が上がる可能性が高いようだ。
次世代規格であるHBM2Eは、サムスン電子が今年の初めに最初の量産を開始し、SKハイニクスは昨年8月に開発したが、量産には至ってなかった。
しかし、シノプシスが設計ベースを用意したことから、SKハイニクスの量産も近づいていることが予想される。
シノプシスは、半導体回路の設計のために必要な電子設計自動化(EDA)ツール市場でシェア1位のメーカーであり、SKハイニクスをはじめ、サムスン電子などとも様々な協力関係を結んでいる。このツールを活用しIDCやスーパーコンピュータなどに入るSoCを作ることができる。
(写真:SKハイニクスが開発したHBM2Eメモリ=同社提供)