KAIST(科学技術院)は、電気・電子工学のユ・フェジュン教授の研究チームが「生成的敵対ニューラルネットワーク(GAN、Generative Adversarial Network)」を低消費電力、効率的に処理する人工知能(AI)半導体を開発したと6日明らかにした。
同研究チームが開発した人工知能半導体は、「多層 – 深層ニューラルネットワーク」を処理することができ、これを低消費電力のモバイル機器においても学習することができるという。今回の半導体チップの開発により、画像合成、スタイルの変換、損傷イメージの復元などの「生成型人工知能技術」をモバイル機器に実装することに成功したとKAISTは説明した。
ユ教授は「今回の研究は、単一のチップで、推論だけではなく学習まですべて可能であり、複数のディープラーニングネットワークを同時にサポートする人工知能半導体を開発したという点で意味が大きい」とし「モバイル機器での人工知能の活用領域を大きく広げ、今後画像スタイルの変換、映像合成、イメージの復元などGANに関するアプリケーションに多様に応用されることを期待する」と述べた。
カン・サンフン博士課程が1著者として参加した今回の研究結果は、去る2月17日、3千余名の半導体研究者が米国サンフランシスコに集い開催した国際固体回路設計学会(ISSCC)で発表されたとのこと。 (論文名GANPU:A 135TFLOPS / W Multi-DNN Training Processor for GANs with Speculative Dual-Sparsity Exploitation)
これまで主に研究されてきた人工知能の技術は、「分類型モデル(Discriminative Model)」であるとされ、与えられた質問に答えるよう学習された人工知能モデルとして物体認識と追跡、音声認識、顔認識などに活用されるという。
これに対し、KAISTの研究チームが開発した「生成的敵対ニューラルネットワーク」は、新しいイメージを作成し再生することができ、画像のスタイル変換、映像合成、破損したイメージ復元など、幅広い分野に活用されるという。また、モバイル機器の様々なアプリケーション(映像と画像内のユーザーの顔の合成)にも使用でき、学界だけでなく、産業界でも注目を浴びているとのこと。
しかし、GANは、既存のディープラーニングネットワークとは異なり、複数の深層ニューラルネットワークからなる構造であることから、個々の深層ニューラルネットワークごとに異なる条件に最適化された加速が難しいという。また、高解像度の画像を生成するため、既存の深ニューラルネットワークモデルより数十倍の演算量を必要とするとのこと。
研究チームは、単一- 深層ニューラルネットワークだけでなく、生成的敵対ニューラルネットワークのような、複数 – 深層ニューラルネットワークを処理することができながら、モバイルでの学習も可能な人工知能半導体「GANPU(Generative Adversarial Networks Processing Unit)」を開発し、モバイルデバイスの人工知能の活用範囲を広げたという。