[特集] サムスンの次世代ディスプレイの研究 (上)

ディスプレイ 特集

[特集] サムスンの次世代ディスプレイの研究 (上)

 
最近、サムスンがLCD(液晶表示装置)事業からの撤退を正式に表明したことで、同社の次世代ディスプレイ技術が注目される。

(参考記事:「サムスンディスプレイ、LCD生産ラインを整理へ」)

LCD事業は、中国メーカーの低価格攻勢に追いやられ、サムスンにとっては生産そのものが損害を生み出していたとされる。サムスングループのディスプレイ専業企業であるサムスンディスプレイ社は、中国蘇州にあるLCD生産ラインを近いうちに整理する予定だ。韓国内ではすでに縮小しており、次世代ディスプレイのラインに置き換える。

サムスンディスプレイは今後、次世代ディスプレイの開発・量産に着手する構えだ。ちなみに、同社の次世代ディスプレイとしては「QD」ディスプレイが挙げられており、韓国のLCDラインもQDに置き換わる予定だ。一方で、「QNED」という名の次世代ディスプレイについても量産が近いとの報道が出ている。さらには「マイクロLED」というディスプレイについての報道も多く、すこし話がややこしくなっている。

なので、今回の特集では、サムスンの次世代テレビ事情について整理してみたいと思う。
 

まずは現在地の整理
サムスンの次世代ディスプレイについて語るには、まず現在のディスプレイ市場について知る必要があるだろう。2019年の世界のディスプレイ市場において、サムスン(電子)は約30%のシェアを占め1位となっている。主力は「QLED」ディスプレイであり、昨年一年で約532万台を販売した。

(参考記事:「サムスンの世界TV市場シェア30%突破、QLED好調」)

QLEDディスプレイはLCDのカラーフィルターにクォンタムドット(QD)を使用したディスプレイのことである。色表現に優れているとされているが、あくまでベースは液晶テレビだ。それをサムスンの強力なマーケティングにより、あたかも次世代のディスプレイのように演出され、実際にはQLEDより技術的に優位にあるはずのOLED(有機EL)ディスプレイを抑え、世界1位の販売台数を記録してしまった。

OLEDディスプレイは、まだ同大型パネルを独占するLGディスプレイ社の量産体制が整っていないこともあり、昨年、全世界で約110万台に留まった。LGとしては面白いはずがない。サムスンのQLEDディスプレイの説明が誇大広告であると主張し、一時、動画などを介した論争が繰り広げられた。

サムスンの「QLED商法」は、マーケティング的には大変興味深いものだが、ここでは深入りしない。いずれにしろ、QLEDディスプレイは既存の液晶テレビがベースだ。それに対して、OLEDの技術的優位は明らかであり、LG側は着々と量産体制を整えている。実際、LGから大型パネルを仕入れるテレビメーカーは(確認できているだけで)世界約20社に及んでおり、OLEDの時代が到来している。サムスン側もOLEDに対する危機感は明らかだ。

サムスングループの事実上の総裁である、イ・ジェヨンサムスン電子副会長は、2018年当時「競合社であるLGが有機発光ダイオード(OLED)で次世代大型テレビ市場に進出する間、サムスンは何をしていたのか」と部下に詰問口調で尋ねたとのエピソードもある。

(参考記事:「サムスン総裁が重視するQDディスプレイ」)

サムスンは、昨年10月、次世代ディスプレイとしてQDディスプレイを掲げ、約13兆ウォン(約1.2億円)を投じると発表した。量産開始時期は来年2021年とされる。
 

QDディスプレイとは?
QDディスプレイとは、自発光量子ドット材料を活用したディスプレイを意味する。量子ドット(Quantum dot)は、物質の大きさがナノメートル(㎚=10億分の1m)のレベルに減少すると電気・光学的性質が変化する「半導体ナノ粒子」のことだ。この量子ドットをテレビに適用することで、色表現の幅が増し、消費電力も減らせるという。無機物による発光であることから、有機発光によるOLEDよりも寿命が長い。

ただ、実際はまだ自発光QDは実現できていないとされる。サムスンが量産を準備しているのは、ブルーOLEDを発光源とし、その上にカラーフィルターを被せ、色表現を高めたものであるとされる。技術的にはOLEDをベースにしていることから、「QD-OLED」と呼ぶ識者もいる。しかし、サムスンはあくまでQDディスプレイという名称で押す。LGへの対抗心からOLEDという単語を使いたくないという見方もあるほどだ。マーケティング的には正解なのだろう。

サムスンはQDディスプレイを来年2021年から量産開始し、本来の意味での(自発光する)QDディスプレイについては長期的に取り組む構えのようだ。今年初めにはサムスンディスプレイ社内にQDディスプレイの特別チームが組まれたと報道されている。技術確保のための研究開発(R&D)だけでなく、プロセスの開発、顧客マーケティングなどQD量産と関連したすべての業務を遂行するという。

(参考記事:「サムスンがQDディスプレイの正式組織を新設へ。来年量産に向け」)

サムスンディスプレイは韓国の牙山(アサン)にある自社第1工場にQDディスプレイの量産ラインである「Q1ライン」を構築。第8.5世代サイズ基準で月3万枚規模のライン稼働を2021年上半期から始め、65インチの製品を量産する計画であるとされる。サムスンディスプレイは、QD量産のための機器を導入している。ディスプレイのインクジェット印刷装置についてはサムスンの子会社であるセメス社の装置が採用された。これについては、当初は米企業のものが有力視されていたが、韓国における核心技術の国産化の流れも影響し、最終的にセメスになったという見方もある。インクに関しては日本のJSRが開発に参加するという報道もあった。

(参考記事:「サムスンQDディスプレイ装置は韓国セメス社から導入。内製化すすめる。」)
(参考記事:「サムスンのQDディスプレイ、JSRがインク開発参加か」)
 
 

執筆:イ・ダリョン=編集長

 
 
[下につづく]
 
 


 
 
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