[臨時特集]コロナ禍における半導体産業への影響やいかに?

半導体 特集

[臨時特集]コロナ禍における半導体産業への影響やいかに?

世界的混乱を巻き起こしている新型コロナウイルス。日本においては依然と感染拡大を続け、緊急事態宣言が全国へと拡大している。今後新型コロナウイルスがさらに長期化した場合、半導体業界においてはどのような影響を及ぼすのであろうか。

新型コロナウイルスにより、半導体工場の稼働が停止する可能性は現時点においては低いと思われる。理由は以下3点だ。

1.緊急事態宣言化でも稼働可能
 国際半導体製造装置材料協会(SEMI)と主要半導体生産国である日本、韓国、中国、アメリカ、台湾、EU諸国の半導体協会は、半導体は必須産業(Essential businesses)として分類されるよう、共同声明を発表している。日本では、2020年4月7日に緊急事態宣言発令にあわせ、3月28日に発令された基本方針が改正され、新たに「緊急事態宣言時に事業の継続が求められる事業者」が例示された。そのなかで、半導体工場等は「医療、製造業のうち、設備の特性上、生産停止が困難なものとされ、現状は稼働を存続可能な状態である。

2.作業工程の自動化
 半導体作業工程はコードで半ば自動化されているため、他の産業に比べ労働力不足や人の移動の制限による影響が少ない。中国や韓国において、すでにコロナ感染状況はピークを超え、収まりつつあり、台湾では抑制に成功している。各国のコロナピーク時においても、半導体業界の工場は稼働を続けていたところが多い。中国に工場を持つSKハイ二クスやサムスン電子がまさにその例だ。

3.設備上の特性
 半導体素子が製造されるクリーンルーム内は、自動化された部分が多く、作業員同士が密接な接触をすることは極めて少ないとされる。空気循環設備も整っている。クリーンルーム入室時は、エアシャワー、マスク等防備装を着用するため、ここから感染が広がる可能性は極めて低いと考えられているようだ。SARSやMARS等過去の感染病事態時にも、半導体工場の稼働が停止する事例はなかった。

(参考記事:COVID-19 Business Report 코로나19로 인한 반도체 산업의 변화
(参考記事:“アフター・コロナ”の半導体産業を占う ~ムーアの法則は止まるのか
(参考記事:緊急事態宣言下でも半導体工場は事業継続可能
(参考記事:【経済産業省からのお知らせ】「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」の改正について
 
 
 
 
コロナが及ぼすエレクトロニクス業界にとっての危機
 半導体工場の稼働停止可能性が極めて低いと思われる中、新型コロナウイルスによって半導体業界に引き起こされる危機的条件とはなにか。

1.都市封鎖(ロックダウン)及び長期化による影響
 既に復帰を始めた中国・韓国に対し、アメリカでは現在カリフォルニア州都市封鎖により、半導体産業の関連工場も大きな影響を受けている。世界最大の半導体製造装置メーカーであるアプライド・マテリアルズやラムリサーチの本社のカリフォルニアだ。在宅勤務では対応不可能な検査業務があるため、次世代開発も進まなくなっている可能性が高い。

 既にコロナが収束しつつある韓国では、5月7日時点で累計約65万人以上が検査を受けた。それも、国民安心病院(院内感染を防ぐために、呼吸器疾患を抱えている患者を病院の訪問から入院まですべての過程において、他の患者と分離して診療する病院)や「ドライブスルー検査」や「ウォーキングスルー検査」を設けることで、医療従事者を完全に守りながらの実施であった。感染経路不明率も3%以内に収め、感染が確認された感染者の感染経路や自己隔離中の移動経路に関する情報を国民に提供した。結果、都市封鎖することなくコロナの収束に成功している。

 日本は現在、緊急事態宣言が全国に広がったものの、依然としてコロナ感染者拡大は収まることなく、5月末まで延長が決定した。実際に公表されている数字以上の感染者数が存在するとの予想もある。これまでは医療崩壊を恐れ、クラスターを潰す政策が行われた。しかし、これからは感染者拡大を阻止するため、WTOが指し示す「検査」と「隔離」の徹底が政策として打ち出すべきという専門家の意見が多い。

 基板であるシリコンウエハの形成からチップ完成までの400~600もの製造工程を、複数企業により役割分担して作られる半導体の特性上、いずれかの製造装置メーカーが生産不能に陥った場合、その影響は半導体生産ライン全体、および世界の半導市場に及ぶ。世界の半導体製造の中心は東アジアであり、日本が供給する製造装置(その部品および設備)が、韓国のメモリや台湾のロジック半導体などと一緒に台湾ホンハイの中国工場に集積され、各種電子機器が製造されている。日本の場合、中小零細企業が多く存在するため、都市封鎖がされないとしても、長期化による経営悪化、倒産リスクは高く、いつ半導体生産ラインへの影響が出る可能性がある。

2.経済低迷による影響
 コロナによる経済低迷の影響により、結果として半導体価格の需要が縮小する可能性が高い。半導体業界で一番需要の高いスマートフォンのほか、プリンターやテレビ等の電化製品の購買意欲低下、買い替え時期の見直しが確実だ。また、企業の経営状況や運営状況も影響し、全体的に需要が低下するだろう。

 緊急事態宣言が発表された4月7日同日、安倍政権は事業規模総額108兆円の緊急経済対策を発表した。現金給付案は当初、「減収世帯に30万円」だったが、公明党などの強い要請を受けて一転、全国民を対象に一律10万円を「特別定額給付金」として支給することが決定した。これにより、補正予算案の総額が当初の16・8兆円から26兆円程度に増加、108・2兆円だった緊急経済対策の事業規模も117兆円ほどに増加する。日本政府は「短期決戦」を基本姿勢とし、当初は緊急事態宣言を5月6日までと設定したが、現状コロナの感染拡大は留まるどころか、全国に拡大している。緊急事態宣言が長期化された場合、企業への休業や在宅勤務要請が続く。この状態が仮に半年や、1年、それ以上続いた場合、確実に倒産ラッシュとなってしまう。

 東京商工リサーチによれば、5月1日時点で「新型コロナ」関連の経営破たん数が全国114件に達した。また、全上場企業で新型コロナの影響を開示した1929社のうち、下方修正した業種別の最多が製造業(146社、約41%)である。有限会社「アイエムティ」は、新型コロナウイルスの影響で倒産してしまった半導体製品部品加工企業の一例だ。主要取引先である中国企業からの受注が大幅に減ったことで、9100万円の負債を抱えたことが原因である。売上減少をほかの部門でカバーできる大手企業とは異なり、単一事業のみを行う中小零細企業は、立て直しができない。こういった状況が増え続ければ、1人当たり一律10万円の給付や、中小・小規模事業者向けの最大200万円の給付策では到底不十分だ。

(参考記事:코로나바이러스감염증-19(COVID-19)
(参考記事:安倍政権のコロナ対策、ますます「世界の常識」から遠ざかっている…!
(参考記事:日本が韓国の新型コロナウイルス対策から学べること──(1)検査体制
(参考記事:追い風吹く半導体製造装置に死角はあるか
(参考記事:「新型コロナウイルス」関連倒産状況【5月1日17:00 現在】
(参考記事:コロナ関連倒産100件超す 資金枯渇、連休明け増加か) 
 
 
 
 
経済対策によって生まれる半導体需要の可能性
今後もコロナ感染拡大が収まらないと仮定した場合、エレクロニクス産業に求められる需要は何か。

1.サーバー・クラウド用半導体(在宅勤務、オンラインストリーミング、動画、ゲーム)
 外出自粛に伴い、ゲーム、映画、動画配信ツール等、自宅の暇な時間を潰すことができたり、オンラインを通じてコミュニケーションをとることのできるツール需要が高まっている。在宅勤務やオンライン教育に必要なクラウド設備やネットサーバ需要はもちろん、オンライン会議ツール等オンライン上での需要が高まることでデーターセンター拡大、メモリー半導体需要増加へとつながる。

2. PC用半導体(在宅勤務/オンライン教育ツール用)
 在宅勤務推奨に伴い、一部ノートPCの供給が高まっている。緊急事態宣言が出されて1か月経つ今でも、23区のテレワーク率はわずか26%に留まっているが、今後緊急事態宣言の延長に伴い、新たに在宅勤務用の設備を購入する企業が増えるであろう。また、9月入学が検討されるなど、教育の遅れも懸念される中、オンライン教育の需要は高まるだろう。また、今回のコロナをきっかけに多くの企業が在宅勤務導入に踏み出したことで、コロナ収束後の需要継続が予想される。

 サムスンのQ1実績発表によれば、ディスプレイ、IT・モバイル、消費者家電部門はコロナの影響で売上が減少したにもかかわらず、サーバー・パソコン用需要の増加で半導体事業が全体を牽引し、前年同期比では売上高と営業利益が小幅上昇した。サーバーの需要が今後も堅調に推移するかは、新型コロナウイルスの推移とデータセンターの設備投資計画により変動すると考えている、としてる。

3. 医療用半導体(人工呼吸器)
  新型コロナウイルス感染者の監視や治療に使用される医療機器には、多数の半導体が使用される。特に、医療用人工呼吸器は、内蔵されたさまざまな半導体コンポーネントの働きで、患者の呼吸をサポートする気流を継続的かつ正確に調整できる。しかし、医療用半導体市場はスマホ等に比べ小規模なため、在庫も少なく、コロナ拡大による世界からの発注殺到に追いつけていないと思われる。

 マイナビニューステクノロジーによれば、既に台湾のファウンドリ大手である台UMCは、台湾のファブレスベンダであるPhison Electronicsから医療用人工呼吸器で使用される半導体の緊急注文に対してスーパーホットラン(SHR)を採用することで、通常は2か月ほどかかるリードタイムを1か月強に短縮していると市場動向調査会TrendForceが4月10日付で伝えている。

(参考記事:韓国SKハイニックス、1~3月期の純利益41%減)
(参考記事:23区のテレワーク率26%、課題は社内体制–「PCなど10万円未満のみ」は厳しい
(参考記事:「サムスンがQ1実績発表 市場予想上回る」)
(参考記事:「サムスンのQ1実績発表後に話されたこと」)
(参考記事:高まる医療機器向け半導体ニーズ、台湾ファウンドリが最優先製造を実施
 
 
 

 半導体業界においては、製造や供給過程よりは需要供給の調節、すなわち「市場の不確実性」にどう対応していくかが重要となってきそうだ。引き続き移動制限の継続が予想される中で、仮に自国の特定地域や生産拠点である国でロックダウンとなった場合にも、供給支障を最小限に抑えることができるよう、複数拠点での製造を行う必要がある。また、市場の変化に先制対応できるよう、需要のある製品製造への切り替え等、今後のリスクに備えた準備を徹底しておく必要があるだろう。特に単一分野を扱う中小零細企業は、現在扱う製品以外の検討も進めるべきであろう。そしてなにより、従業員の感染予防を防ぐため、生産設備の防疫管理と予防措置を徹底して行い、政府はそれに対応する形でできる限りの支援を進めるべきであると考える。
 
 

執筆:塩野愛実

 
 
 


 
 
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