[特集]ファーウェイ制裁強化による韓国企業への影響

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[特集]ファーウェイ制裁強化による韓国企業への影響

トランプ政権が中国ファーウェイへの制裁をさらに強化する措置を行った。それを受け、台湾TSMCはファーウェイとの取引を停止したと報じられているが、サムスンやSKハイニクスといった韓国企業への影響はどのようなものになるだろうか?

米商務省は15日、1年前に実施したファーウェイへの制裁をさらに強化する旨を発表した。ファーウェイへの禁輸措置を海外企業にまで含める内容だ。米国の技術やソフトウェアが一部でも含まれた半導体のファーウェイへの輸出が禁じられる。現時点でまだ細則は発表されていないが、これまで25%以下であれば輸出可能とされていた基準が10%以下となる可能性が高いという。

今回の措置は、ファーウェイから半導体を受託生産する世界最大のファウンドリ企業・TSMC(台湾)を狙い撃ちしたものであるといわれたが、当のTSMCはすぐさまファーウェイとの取引を停止したと報じられた。(日経新聞5/18)また、TSMCは米アリゾナ州に自社工場を建てる旨も同じタイミングで発表しており、大口取引先であるファーウェイを失ってでも米国の顧客を取ることを一応は鮮明にした形だ。
 
(参考記事:「TSMC、米国アリゾナに工場建設を発表」)
 

メモリ半導体への影響

サムスン電子とSKハイニクスはファーウェイに対してDRAMなどのメモリ半導体を多く供給している。

各社の企業別売上は公表されていないが、朝鮮日報は19日、サムスン電子が8兆ウォン(約7000億円)で全体売上の3%、SKハイニクスが5兆ウォン(約4400億円)で全体売上の18%をファーウェイから得ていると報じた。

制裁の対象になるのはAP(アプリケーションプロセッサー)という非メモリ半導体であり、DRAMなどの非メモリ半導体は対象ではない。そのため、サムスンやSKの取引に直接の影響はない。ただし、APという重要部品が入手できなければ完成品を作ることも困難となり、そうなるとメモリを仕入れる意味が無くなる。なので、サムスン電子とSKハイニクスへの影響も不可避であるという見方が韓国の報道では多い。

ソウル経済新聞は16日、ファーウェイがTSMCの代わりに、中国のファウンドリであるSMICにAP生産を委託するだろうと予想した。しかし、SMICは14ナノレベルの製造技術にあるとされ、TSMC(5ナノ)に比べ技術的に数段落ちることは知られている。そのため、ファーウェイがAPの供給を間に合わせても、同社製品のクオリティが低下することは避けられない状況だ。

しかし長期的に見れば、ファーウェイ製品の品質が落ちれば、そのシェアを奪う中国企業が必然的に出てくるので、その分のメモリがサムスンとSKから供給されれば、ファーウェイの穴は埋められることになる。サムスンとSKの両社で世界のDRAM市場の7割を占めており、その可能性は高いだろう。
 
(参考記事:「韓国企業によるDRAM世界シェアが70%超え」)

ただし、メモリ半導体についても楽観はできない。朝鮮日報は19日の記事において、「今後(制裁措置が)DRAMなどメモリ半導体に拡大する可能性を排除できない」と伝えている。ファーウェイ制裁は米中の覇権争いの側面があり、中国も報復する可能性が高い。そうなれば制裁の範囲が広がる可能性も出てくるだろう。
 

スマートフォンと5G基地局への影響

一方、スマートフォン販売の分野においては、サムスン電子にとってむしろ好機ではある。ファーウェイはサムスンの世界シェア1位を脅かす企業であり、近年猛追していたが、今回の制裁強化でシェアを落とす可能性が一気に高まった。ファーウェイが強い中国市場ではシャオミやオッポなども強く、サムスンがファーウェイから奪えるシェアはそう多くないかもしれないが、欧州など他の地域では既にファーウェイのシェアを少しずつ奪い返しているとされ、「世界シェア1位」の座は当面も維持できそうな状況だ。
 
(参考記事:「[特集]ファーウェイ抜きサムスンに迫るBBK」)
(参考記事:「[特集]サムスンの中国スマホ市場奪還は可能か?(上)」)
(参考記事:「[特集]サムスンの中国スマホ市場奪還は可能か?(下)」)

また、5G通信基地局の分野ではサムスンにとってより大きな追い風になるだろう。かつてこの分野はファーウェイが世界シェアトップであった。市場調査機関デルオロ(Dell’Oro)によると、昨年はファーウェイが全世界で31%の同シェアを占め首位となり、サムスン電子は6.6%の5位だった。しかし、昨年第4四半期と今年第1四半期の合算数字を見れば、サムスンが37%となり、28%のファーウェイを抜き首位に立ったという。大型受注などによる一時的影響も考えられるが、制裁が強化されれば、ファーウェイ製品の競争力低下は避けられず、その穴をサムスンやノキア、エリクソンなどが奪うだろう。
 

ファウンドリへの影響

しかし、ファウンドリ(受託生産)分野ではサムスンは厳しい状況に置かれると予想される。この分野の世界最大手だったTSMCは今回、ファーウェイとの取引を停止するという明確で速い判断を示した。さらに、米国に工場(5nm)を設立する案も発表。これにより、インテルやクアルコムなど米半導体の大手顧客との関係を維持した。韓国メディアでは、顧客企業の多い米国に工場ができれば、彼らの発注をさらに得るとの見方もある。

ファーウェイとの取引はTSMCの約一割を占めていたとされるが、今回のスピード感のある展開などをみるに、不利益を補うためのイメージがすでに出来ているのかもしれない。ウォールストリートジャーナル(WSJ)は先日、トランプ政権が、半導体生産の国内回帰を画策しているとし、TSMCの米国誘致を進める旨の政府筋情報を報じていた。

ファウンドリ事業での世界1位を目標にしていたサムスン電子は、TSMCとの差を埋めるため、様々な努力をしてきた。最近はシステム半導体から「一歩引いた」ことから、少しずつ大手ファブレスの受注を増やすなど活路は見えつつあった。
 
(参考記事:「米ファブレスの韓台二元化で韓国ファウンドリ業界に特需か?」)
(参考記事:「[特集]SoCでクアルコムに完敗のサムスン。ファウンドリには利点も?」)
(参考記事:「サムスンとTSMCを競わせるクアルコム」)

しかし、TSMCの米進出が本格的なものであれば、その差はさらに開く可能性があるだろう。制裁があるためTSMCが手放したファーウェイの取引も奪うことはできない。そのため、サムスンがTSMCに対抗しようとすれば、同じように米国にファウンドリ生産ラインを拡げるしかないように思える。
 
 
 

執筆:イ・ダリョン=編集長

 
 
 


 
 
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