[特集]相次ぐ事故、LG化学で何が起こっているのか?

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[特集]相次ぐ事故、LG化学で何が起こっているのか?

電気自動車バッテリーで世界1位(今年第一四半期)に躍り出たLG化学だが、直後に国内外で立て続けに事故を起こし、死者も出た。一体何が起こっているのだろうか?

世界1位に

LG化学は、今年第一四半期における世界の電気自動車バッテリー市場において1位を記録したことがわかった。新型コロナウイルスによる中国メーカーの生産支障という要因もあったが、テスラの「モデル3」への採用なども後押しし、使用量ベースで前年同期比2.2倍増という高成長を見せての結果だ。
(参考記事:「[特集]LG化学の現在地 EVバッテリーで躍進」)

同社の躍進は、米中欧など世界各国に生産拠点と営業網を展開してきたことにも支えられており、投資額も多く、バッテリー事業に社運を賭けた姿勢がやっと結果に結び付きはじめたとみられる。

 

(写真:LG化学提供)

 
絶好のタイミング

ちなみに「バッテリー世界1位」が調査機関から発表されたのは5月7日だ。奇しくも同じ日に、LG化学は、「2006年以来14年ぶり」とされる新たな同社のビジョンを発表した。まるで狙ったかのようなタイミングだ。偶然か否かは知る由もないが、絶好のタイミングであったのは間違いないだろう。(メディアや人々の反応は?)

LG化学は今回、“We connect science to life for a better future”という新ビジョンを掲げた。日本語で「より良い未来のために科学と人類の命をつなげる」という文言になるだろう。

また、‘We connect science’(科学とつなげる)という新スローガンについても発表した。LG化学のプレスリリースをみるに、石油化学など既存の事業から、電気自動車バッテリーやバイオなど、より科学ベースへと事業ドメインが変化していることの現われであることがわかる。

同社のトップであるシン・ハクチョルLG化学副会長(CEO)は、「これまで私たちは、私たちを取り巻く科学(の力)と、我々が蓄積した科学(の力)によって壊れない化粧品の蓋から、(今では)最高のバッテリーを作るなど、夢を現実にしてきた」と語った。1946年の創業時は化粧品や同容器などを家内工業で作っていた会社がここまで成長したという自負が伝わる。
 

(写真:7日、LG化学の新ビジョンについて話すシン・ハクチョル同社副会長=同社提供)

 

最悪のタイミング

しかし、「世界1位」、「新ビジョン」というLG化学のメモリアルデーは、インドでのガス事故により一転した。

同日、インド東部ビサカパトナムにあるLG化学の子会社・LGポリマース・インディア(LG Polymers India)の工場でガス漏れ事故が発生。これまで12人が亡くなり、周辺住民多数が避難し、治療を受けたと伝えられている。
(参考記事:「LG化学のインド工場でガス流出事故、死者11人、避難多数」)

韓国メディアの報道によると、原因は「スチレンモノマーからのガス漏れ」とされる。聯合ニュースは13日、LGポリマース・インディア側が、設備拡張に際して有効な承認をインド当局から得ていなかったという英ガーディアンの報道を紹介。また、LGポリマース側が承認を得る前に稼働に入ったとするインド環境省の主張も伝えた。

LG化学は、遺族・被害者のサポートや治療、専門機関を通じた健康および環境への影響調査、地域社会との中長期的CSRの推進などを発表。非常対策委員会を設け、シン・ハクチョル自らが委員長に就任し、危機感を見せた。
 

(写真:LGポリマースインディアのガス漏れ事故について報じるニュースキャプション=Sakshi TV)

 

相次ぐ事故

正確な原因については、調査結果を待つ必要がある。しかし、その後、今度は韓国の工場で火災事故が発生したことは、同社の安全管理に疑問を抱かせるものだった。

韓国各紙によると、19日午後、韓国・瑞山(ソサン)にあるLG化学の工場において火災が発生し、一人が死亡し、二人が負傷した。出火したのはLG化学触媒センターの触媒パッケージ室からで、触媒製造工程における触媒移送中に過度の圧力で爆発が起こり、出火したと現地警察および消防は発表したと伝えられている。
(参考記事:「LG化学、今度は国内施設で出火。問われる安全管理」)

問題は、今年1月にも同センターにおいて爆発事故があったことだ。触媒センターの配管内清掃作業中に配管内部の圧力が上昇して安全弁が作動し、爆発したという。幸いにもその時に人的被害は無かったというが、LG化学の安全管理に疑問を抱かせるには十分な状況証拠だろう。

原因について、確かなことは分からないが、電気自動車バッテリーなどの「科学事業」への最近のシフトが、既存の石油化学事業における管理の低下に繋がったとすれば、本末転倒だろう。
 

(写真:LGグループのグ・グァンモ会長=同社提供)

 

悩める総裁

このような状況に危機感を抱いたのか、LGグループの総裁であるグ・ファンモ会長は20日、瑞山にあるLG工場を訪ね、被害者への哀悼を表した。

そしてに、LG化学の幹部陣に対し「安全と環境を整えることは当然守るべき基本中の基本」とし「企業が一瞬にして崩れることがあるのは、経営実績が悪いからではなく、安全な環境・品質・事故などで危機管理に失敗したとき」であると叱咤し、経営陣に対し根本的な解決を命じた。

グ会長は、先代であるグ・ボンム前会長の甥であり、前会長の養子となってLGグループを継ぎ2018年に就任したばかりだ。まだ42歳と若い。

LGグループは、他にLG電子やLGディスプレイなどを擁する、韓国を代表する財閥企業だ。しかし、最近芳しくない出来事が多い。15日には、不正採用の疑いでLG電子に韓国警察の家宅捜査があったばかりだ。LGディスプレイは中国南京にあるOLED工場をいまだ正常稼働させられずにいると伝えられる。LG化学も借入金が増え財務体質は必ずしも健全とはいえない。LG化学がバッテリーを供給する現代自動車は、13日に(LG化学のライバルである)サムスンSDIを訪ねた。

まだ42歳と若いグ会長には、心穏やかでない日々が続いている。ただ、就任後の同氏の働きに関しては韓国メディアなどでも評価する向きもある。韓国の電子系メディアであるZDNet KOREAは、同氏の就任一年目に際し、「革新を主導し、積極的で攻撃的に(グループを)変えた」と評価している。LG化学の現CEOであるシン・ハクチョル副会長も、元は米スリーエム(3M)で主席副会長を務めていた人物であり、グ会長が就任直後に引っ張ってきた意中の人物とされる。安全管理を固めながらも、積極姿勢は維持すると思われる。

(参考記事:「LGDが国内工場に露光装置を導入か? 広州工場は未だ本格稼働せず」)
(参考記事:「LG電子に韓国警察が家宅捜査、採用で不正の疑いか?」)
(参考記事:「現代自動車、水素電気自動車にサムスンのバッテリー搭載か?」)
 
 
 

執筆:イ・ダリョン=編集長

 
 
 


 
 
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