[特集]さらなる対中制裁、「最悪の事態」を想定した韓台企業の動き

半導体 特集

[特集]さらなる対中制裁、「最悪の事態」を想定した韓台企業の動き

米商務省は15日、1年前に実施したファーウェイへの制裁をさらに強化する旨を発表した。ファーウェイへの禁輸措置を海外企業にまで含める内容だ。米国の技術やソフトウェアが一部でも含まれた半導体のファーウェイへの輸出が禁じられる。
(参考記事:「[特集]ファーウェイ制裁強化による韓国企業への影響」)
 
さらなる制裁

これについては、先日(19日)本誌でも特集記事を書いたが、その後にも立て続けに中国企業(機関)への制裁が発表された。20日には米に上場する中国企業の経営の透明性を求めるとされる「外国企業説明責任法」が米上院で可決。同法は米規制当局による会計監査状況の検査を義務付けるもので、3年間検査を拒否した場合は上場廃止となる。日本経済新聞は21日、同法案について、「実際に法律が執行された場合、中国企業の上場維持は難しくなる可能性がある」との見方を示した。

22日には、米商務省が、中国・新疆ウイグル自治区の少数民族弾圧や米国技術の軍事転用に関わっているとして、計33の中国企業や機関をエンティティ―リスト(Entity List/取引制限名簿)に掲載すると発表した。ロイター通信によると、セキュリティー大手の奇虎360科技や、ソフトバンクグループも出資したロボット・人工知能(AI)のクラウドマインズなども名簿に入った。
(参考記事:「米、ファーウェイに続き中国企業など33か所に制裁」)
 
なぜ制裁?

内外メディアなどでは、新型コロナウイルスへの対応で支持率を落としたトランプ大統領が、大統領選に向け、中国への強硬策で挽回を狙っているとの説も聞こえてくる。米ウォールストリートジャーナル(WSJ)は先月23日、「トランプ氏が2021年1月以降も大統領の地位を維持するための唯一の方策は、恐らく大統領選挙を中国に対する国民投票とすることだろう」と伝えた。(※ウォルター・ラッセル・ミード氏のコラム)

一方で、今年2月に発刊された『アメリカの制裁外交』(杉田弘毅著/岩波文庫)では、制裁の端を発する2019年1月のファーウェイへの起訴について、「忘れてはならないのは、この起訴の背景には、米中の覇権争いがあることだ。米国は中国封じ込めの最初の標的にファーウェイを周到に選んだ」(p16)と分析されている。

同書ではまた、「さまざまな利害を持つグループがトランプ政権の中国に対する貿易強硬政策にその主張を組み込ませることに成功している。このため、追加関税やファーウェイへの制裁、中国からの投資の審査の厳格化、科学技術研究者の締め出し、人権弾圧の停止など、トランプ政権の対中政策は極めて幅広いものとなり、真の目的が見えにくい」(p194)との分析だ。制裁される側は、何をすれば制裁が解除されるかもわかないという、トランプ政権の制裁の特徴についても触れられている。
 

 
米中両国は今年1月にひとまず「休戦」をした。中国による知的財産の厳格管理や農産物の購入などを盛り込んだ(第一段階)合意を交わし、事態の収束に期待がかかった。しかし、ここに来て再び事態は悪化する様相を呈している。先が読みづらい展開だ。
 
企業は最悪の事態を想定するしかない

こうなると、企業からすれば、「最悪の事態」を想定して動かざるを得なくなるだろう。

韓国企業への考えられる影響については、前回の記事で書いた。その後、米高官も述べたとおり、ファーウェイへの制裁については、「ファーウェイが設計し、ファーウェイに入る」半導体が対象である。従って、サムスン電子やSKハイニクスによるメモリ半導体は制裁の対象外だ。つまり、15日に発表されたファーウェイへの制裁強化は、台湾のファウンドリ企業・TSMCを狙い撃ちしたものであることが明確になった。
(参考記事:「ファーウェイ制裁、韓国企業のメモリは対象外か。「米高官が説明」と韓国紙」)

そのTSMCは、すでにファーウェイとの取引を停止したと報じられており、米国への工場建設を発表するなど、「恭順」の意は示している。他の台湾企業も動いている。日経新聞は26日、台湾企業が中国から回帰する動きを紹介。脱・中国依存を掲げる蔡英文政権による優遇策などもあり、2019年1月からの累計で、ハイテク分野を中心に7600億台湾ドル(約2兆7000億円)の投資が台湾企業によってなされたという。まさに、「最悪の事態」を想定したかのような動きだ。

中国に半導体工場を持つサムスン電子やSKハイニクスの経営陣は気が気ではないだろう。「最悪の事態」を想定し、工場を撤収するという選択肢もあるだろう。しかし、サムスンなどは西安にある工場の生産能力を増設するなど深くコミットしており、そんな簡単な話ではないはずだ。おそらくは、米国オースティンにある工場への投資を拡大することで、「バランス」を取るしか方法は無いように思われる。
 
コロナ禍を凌駕するリスク

ビジネスの世界では「カントリーリスク」という概念がある。周知のとおり、政情不安や制度の違いなどから、国ごとの(商業リスクとは無関係の)投資リスクを分析するものであり、開発途上国や紛争国などが主対象となる。しかし超大国が争うと検討すべきリスクの範囲や度合いは一気に広がることになる。戦争、あるいは経済対立は、「増やして分かち合う」という経済活動とは真逆のベクトルを持つものであり、国際分業を崩壊させるものだ。(※これは日韓間にも当てはまる)企業にとっては、場合によってはコロナ禍を凌駕するリスクだ。早期に解消されることを願いたい。
 
 

執筆:イ・ダリョン=編集長

 
 
 


 
 
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