[特集]サムスン総裁への逮捕状請求の理由と背景

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[特集]サムスン総裁への逮捕状請求の理由と背景

韓国の検察が、サムスングループの事実上の総裁である、サムスン電子のイ・ジェヨン副会長の逮捕状を請求した。逮捕の有無は裁判所に判断に委ねられるが、イ・ジェヨン副会長が2016年に続き、再び拘束される可能性が出てきた。

4日、サムスン系列のサムスン物産と第一毛織(Cheil Industries)の合併と、サムスン経営権継承をめぐる疑惑を捜査していた検察が、イ・ジェヨン副会長の逮捕状を裁判所に請求した。韓国各紙も報じた。

ソウル中央地検経済犯罪刑事部は同日午前、イ副会長とチェ・ジソン前サムスン未来戦略室長(副会長)、ギム・ジョンジュン前未来戦略室チーム長(社長)に対する逮捕状請求を裁判所に送付した。韓国メディアの報道を総合すると、検察は2015年のサムスン物産と第一毛織後の合併から、サムスンバイオロジックスの会計変更に至る過程が、すべてイ副会長が安定的に経営権を継承するために行われたと見ている。

このため、イ副会長の保有株数が多い第一毛織の価値を膨らませ、逆にサムスン物産の株価は引き下げる方式で合併比率を正当化しようとしたとみて、資本市場法違反の疑いが適用されたものだ。

キム・ジョンジュン前社長は偽証の疑いが適用された。キム前社長は、2017年にパク・クネ前大統領の裁判に証人として出廷した際、サムスン物産と第一毛織の合併は、第一毛織の提案で推進されたもので、イ副会長の承継とは無関係である旨を証言していた。

これら疑惑に対して、イ副会長は、先週二度検察に出頭し、それぞれ17時間以上の調査を受けたとされる。イ副会長は一貫して「報告を受けたとか、指示したことはない」と答えたとされる。

今回の件を巡っては、韓国各紙で様々な報道がされているが、逮捕状請求の直接的な契機は、2日にイ副会長が検察の起訴妥当性を「検察捜査審議委員会」で判断してほしいと、ソウル中央地検に申請したことにあるとみられている。同申請のわずか2日後の今回、検察側によるイ副会長の逮捕状請求がなされたことから、検察捜査審議委員会の招集を阻止することが目的であるとの分析が有力視されている。

イ副会長は2017年に一度逮捕されている。いわゆる「崔順実ゲート」により、贈賄罪など5つの容疑で逮捕され、懲役2年6カ月・執行猶予4年の判決を受けた。その後、今度は継承権をめぐる疑惑で捜査が進展し、今回の逮捕状請求に至った。検察側は、この1年8カ月の間に、サムスンの経営陣を100回以上に渡り召喚捜査したとされる(※朝鮮日報)。「崔順実ゲート」からの度重なる裁判・捜査などは、サムスン電子などの経営にも少なくない負担を与えたことは想像に難くない。

ちなみに、検察捜査審議委員会というのは約2年前に設置されたものである。同委員会が招集されると、市民団体・法曹界・学会など150~250人で構成されている委員団から無作為に15人が選出され、当該する検察捜査について審議するものだ。検察改革の一環で導入されたものであり、検察に都合のよい制度ではないのは確かだ。
 

(画像:サムスン電子のイ・ジェヨン副会長=同社提供)

 
日本でもチョ・ググ当時法相の疑惑をめぐり、検察改革を目指す韓国現政権と同検察が対立関係にあることが度々報道されている。そのような構図があるなかでの、サムスンのイ副会長による今回の申し立ては、様々な解釈が成り立つだろう。

本誌の性質上、それら解釈には立ち入らないが、いずれにしろ、イ副会長側が「勝負に出た」のは確かなようだ。少なくとも、早く白黒をはっきりしたかったのではないか。検察によって請求されたイ副会長への逮捕請求については、8日に裁判所の方で審査結果が出ると報じられている。結果によっては逮捕されるが、そうではない判断も十分にあり得る。そして、裁判所の判断理由によっては検察の捜査意義が弱まり、不起訴になる可能性も開かれるとされる。

仮に逮捕されれば、サムスングループの経営にも影響を及ぼすだろう。現在、半導体を取り巻く国際情勢は風雲急を告げている。エレクトロニクス界の巨人・サムスンも一つの正念場を迎えている。
 
(参考記事:「サムスン総裁、3日ぶりに再び検察に出頭。不正継承疑惑で」)
(参考記事:「サムスンのイ・ジェヨン副会長「違法継承疑惑」で検察出頭」)
(参考記事:「サムスン総裁「子に会社を継承しない」」)
(参考記事:「サムスン監視のコンプラ委員会が勧告、総裁による謝罪や労組容認など要求」)
 
 

執筆:イ・ダリョン=編集長

 
 
 


 
 
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