[特集]サムスン総裁への逮捕状は棄却…今後の流れと経営への影響

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[特集]サムスン総裁への逮捕状は棄却…今後の流れと経営への影響

逮捕状請求は棄却

韓国の検察より逮捕状を請求されていた、サムスングループの事実上の総裁であるイ・ジェヨン サムスン電子副会長だが、逮捕の必要性有無を審査したソウル中央地裁によって9日棄却された。
(参考記事:「[特集]サムスン総裁への逮捕状請求の理由と背景」)
8日からソウル中央地裁で審査を受け、その後拘置所に移動して審査結果を待っていたイ・ジェヨン副会長は、同じく逮捕状請求が棄却されたチェ・ジソン前サムスン未来戦略室長(副会長)、ギム・ジョンジュン前未来戦略室チーム長(社長)と共に拘置所から出所した。

聯合ニュースによると、サムスンのグループ内では「ひとまず最悪の事態は回避した」と安堵の声が広がったという。

ハンギョレ新聞によると、ソウル中央地裁で本件を担当したウォン・ジョンクス判事は棄却事由について、「基本的な事実関係は疎明され、検察はこれまでの捜査を通じてすでに相当の証拠を確保した。だが、不拘束状態で裁判を行う原則に反して被疑者を拘束する必要性及び相当性に関しては疎明が足りない」と明らかにしたという。また、「この事件の重要性に照らし、被疑者の責任の有無およびその程度は裁判過程で十分な攻防と審理を経て決定するのが妥当だと判断される」と述べたとのこと。

ソウル中央地裁は、逮捕状の請求こそ棄却したが、あくまで拘束する必要はないと判断したものであり、検察の捜査容疑について何かを問題視したわけではない。むしろ「相当な証拠を確保した」などの言葉を使っており、ある種の「お墨付き」とも取れる内容となっている。
 

今後の流れと「世論戦」

今後の流れとしては、イ副会長側が請求し、今回の逮捕請求にも繋がったとされる「検察捜査審議委員会」の招集是非が11日に決まる。同委員会は研究者や市民で構成され、検察の捜査が妥当なものかどうか審議するものである。検察改革の一環でできた制度であり、検察にとって「都合の良い」ものではない。だが、仮に委員会が招集され、不起訴が妥当という判断を出しても、検察側に従う義務はない。なので、起訴は避けられない見通しのようだ。

逮捕請求についても、今回の棄却によって終わったわけではない。2017年の「崔順実ゲート」においても、当時のイ・ジェヨン副会長は、一度は検察による逮捕状が棄却されたが、新たな証拠をもって請求された逮捕状請求は発布された。今回も同じパターンが無いわけではない。

ちなみに、サムスングループは8日、ソウル中央地裁の審査を前に要請文を発表した。同要請文は「サムスンが危機にある」という訴えで始まり、「危機を克服するためには何よりも経営が正常化されなければならない」と主張。

また、「どのような結果が出ても、サムスンは裁判所と捜査審議委員会などの司法判断を尊重」するとしたが、「ただ、裁判所と捜査審議委員会の客観的かつ合理的な判断のために、サムスンは、いくつかの問題について積極的に解明しようとする」と説明した。

また、事実に基づかない報道記事があるとし、「これらの記事は、客観的司法判断を歪曲させるおそれがあるだけでなく、サムスンはもちろん、私たちの経済の未来のためにも決して望ましくないこと」であると指摘した。

なるほど、「私たちの経済の未来」という言葉は、サムスンならではのパワーワードだろう。世はパンデミックに加え、米政権による対中制裁強化、日本による素材三品目への輸出規制(輸出管理強化)など、半導体企業であるサムスンにとっては問題が山積みになっている状況だ。そのようななか、韓国経済の大きな部分を占めるサムスンをこれ以上虐めないでくれともとれる今回の訴えは、一定の世論喚起力があると同社は考えたのかもしれない。(もちろん要請文に批判的な見方もあるが)

いずれにしろ、このような要請が真摯なものであり、さらなるコンプライアンスの遵守がない限り、サムスンという巨人にとって最大のアキレス腱であり続けるだろう。
 

経営への影響は?

KB証券のキム・ドンウォンアナリストは、逮捕状請求棄却後に出したレポートにおいて、「イ・ジェヨン副会長の逮捕令状棄却はサムスン電子、サムスンバイオロジックス、サムスン物産などサムスングループの経営権の不法承継疑惑に関するサムスン系列会社の不確実性を解消するきっかけに作用する見込み」とし、「サムスングループの支配構造改編と経営の透明性強化のための制度的装置を用意するとともに、企業価値の向上に焦点を当てることが予想される」と述べた。

続いて「今後中長期経営戦略に焦点を合わせて、豊富な現金(2020年第1四半期現在純現金97兆5千億ウォン=約8.8兆円)に基づいて、積極的な企業結合(M&A)の試みが見られる」と付け加えた。

サムスングループの筆頭企業であるサムスン電子の株価は、9日、前日比600ウォン高と小幅上昇の(-1.09%)55,500ウォンで取引を終了している。
 
 

執筆:イ・ダリョン=編集長

 
 
 


 
 
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