[特集]アップルのCPU独自開発とサムスン・ファウンドリへの影響

半導体 特集

[特集]アップルのCPU独自開発とサムスン・ファウンドリへの影響

今週初め、アップルがMacのCPUを自社製に切り替えるというニュースが内外メディアを賑わした。これまでのインテル製に代えて、アップル自身が開発したものを搭載するというのだ。(設計はARM)
 

アップル、インテルを止める

アップルのティム・クックCEOは22日(現地時間)、米国カリフォルニア州クパチーノにあるスティーブ・ジョブズ劇場で(オンラインで)開催された「世界開発者大会2020」(WWDC 2020)において、今後アップルの全てのPC製品に独自開発した中央処理装置(CPU)を使用すると明らかにした。
 

(写真:アップルのMacPC=アップル)

 
これまで、iPhoneやiPadなどのモバイル機器のみアップルが独自に設計したチップ「Aシリーズ」を使用し、Mac BookなどPCについてはインテルのチップを使用していた。それを、今後はPCについても自社開発のチップを入れるということだ。

アップルは、PCに入れる独自のチップを「アップルシリコン」と名付けた。今年末にアップルシリコンを搭載したPCを披露する予定であり、今後2年をかけて段階的にIntelのチップを交換することになるという。

アップルは2005年から自社製PCにインテル製品を使用しており、両社の提携は15年ぶりに幕を下ろすことになった。ティム・クックアップル最高経営責任者(CEO)は、「今日はMacにとって歴史的な日だ。マックを別の次元に引き上げるだろう」と述べた。

ウォールストリートジャーナル(23日)によると、技術調査会社ムーア・インサイツ・アンド・ストラテジーのパトリック・ムーアヘッド社長は、「チップ内製化によりアップルはノートパソコン1台当たり150ドル節約できる可能性がある」とし、その節約分で新しい機能を追加することで、「アップルは最終的に世界のパソコン販売シェアを現在の約7%から伸ばせるかもしれない」と分析した。
 

生産するのはTSMCか?

アップルが自社製チップを開発はするが、生産は生産専門のファウンドリに委託しなけれればならない。

日本経済新聞は24日、米メディアを基に、「アップルは内製する半導体をTSMCが持つ回路線幅5ナノ(ナノは10億分の1)メートルのプロセスを利用して生産するもよう」であると伝えた。韓国の聯合ニュースなども同様に報じている。
 

(画像:TSMCのロゴ=TSMC)

 
回路線幅は微細になるほど半導体の性能は向上する。5ナノの半導体は7ナノと比べて演算処理性能が2割、省電力性能が3割向上するとされる。現在、5ナノプロセスを量産できるファウンドリは台湾TSMCのみだ。今年の春に量産体制を整えた。ちなみに、競合するサムスン電子も年内に5ナノ量産を始める予定だ。インテルは、10ナノに留まっている。
 

サムスン・ファウンドリにはどう影響するか?

サムスン電子はTSMCとファウンドリ事業で競合関係にある。サムスン電子は昨年4月、ファウンドリ事業を含むシステム半導体分野でも世界トップを目指すという目標を発表し、業界トップのTSMCへの対抗心を露わにした。しかし、ファウンドリ市場は現在のところ、TSMCが全体シェアの50%以上を維持し、20%以下のサムスンに常に30%以上の差をつけている。サムスンは中々その差を縮められずにいる。(第2四半期は小幅縮小の予想もある)

報じられているように、アップルがチップ生産をすべてTSMCに委託するとなれば、TSMCとサムスンのシェア差はさらに広がり、サムスンの掲げる目標も遠のくことになる。

サムスンはファウンドリ業界で唯一、TSMCと同等の微細工程を有する企業であり、生産能力に問題があるわけではないが、アップルを含む主なファブレス(チップ設計)企業はほぼTSMCに生産を委託している。この理由について、内外メディアでは、サムスン自らがチップ(Exynos)を設計・生産する企業であることから、自社のチップ設計図を預けることで技術が流出することを憂慮しての判断であると指摘されている。このような憂慮を打ち消すため、サムスン電子は自社のファウンドリ部門を分社化するのではないかという見方が度々メディアで報じられてきた。

しかし、サムスン電子の関係者が、ファンドリの分社化を肯定するような発言をしたことは一度もない。3月にあった同社の株主総会においても、TSMCに勝てる具体的な戦略を教えてほしいという株主の質問に対し、半導体部門の責任者であるキム・ギナム副会長は「サムスンファウンドリは、台湾の大企業(TSMC)と比べ負けていない。実際、最近になり多くの顧客が当社の側に来ている。端的にいえば、先端プロセスにおける競争力により、サムスンファウンドリが一層発展できるようにする」と、正面突破する構えを表明した。

そうなると、3ナノ以下の勝負で先んじるという話になるが、簡単な話ではないだろう。
 

スピルオーバー効果

サムスンが追い上げようとすればTSMCも同じように投資するため、その差が逆転することはあまり想像しにくい。売上こそ複合企業であるサムスンに劣るが、利益率はTSMCが優り、時価総額はほぼ同額だ。TSMCはファウンドリに専業特化しており、戦略的にも理に適っている。

しかし、「シェア逆転」という視点を取り払ってみるとどうだろうか?

サムスンにとってファウンドリにおけるシェア差は縮まらず、業界1位にはなれないと仮定しよう。しかし、「儲かるかどうか」というシンプルな視点で状況を見直せば、サムスンは悪くないポジションにいる。

例えば、グーグルやアマゾン、フェイスブックなど、アップル以外の企業も自社製チップの生産に意欲を示していると言われる。いずれも生産設備を持っておらず、ファウンドリに委託しなければならない。しかし、これら依頼をすべてTSMCで担うには負担が大きい。韓国メディアなどによると、すでに昨年の時点で、TSMCのキャパが追いつかず、リードタイムが伸びているという指摘があった。また、新型コロナウイルスにより、生産地を一極集中することのリスクが周知されるようになっている。中国に生産が集中するアップルも、その被害を受けた企業の一つだ。
 

(写真:サムスン電子のEUVラインのある華城キャンパス全景=サムスン電子提供)

 
KTB投資証券のキム・ヤンジェ研究委員は、アップルによるTSMCへのチップ委託可能性について「仮に台湾に災害があった場合、アップル関連のすべての製品の発売が止まることになるので、供給源を多様にすることが安全につながる」とし、「負担の増えるTSMCの代わりにサムスン電子を選ぶ企業が増える可能性があり、サムスンもまた、今回のアップルの宣言で利益を見ることができる」と述べた。

つまり、ファウンドリ市場そのものが大きくなれば、自然とサムスンに発注が回ってくるという計算だ。TSMCと同等の微細工程を持つファウンドリはサムスン電子のみであることから、いわゆるスピルオーバー効果を最も受けるのはサムスンということになる。(「2位でも良い」と割り切れるかどうが問題だが)

ちなみに、韓国アジアトゥデイ(昨年12月)は、サムスンがファウンドリ事業部を分社化しない理由として、「ファウンドリ事業部がサムスン電子に所属している限り、100兆ウォンに達するキャッシュをもとに極紫外線(EUV)プロセス技術の開発に積極的に投資することができる」と指摘。また、「サムスン電子の多くの特許や有能な人材をフルに活用できるが、独立すれば、このようなすべての利点を放棄しなければならない」と伝えている。

今後の展開に注視した。
 
 
(参考記事:「サムスン・ファウンドリが独立すべき理由、しない理由」)
(参考記事:「調査会社「サムスンファウンドリがTSMCとのシェア差縮小」と予想」)
(参考記事:「[特集]SoCでクアルコムに完敗のサムスン。ファウンドリには利点も?」)
(参考記事:「[特集]サムスンの「超格差戦略」とは何か?(上)」)
(参考記事:「[特集]サムスンの「超格差戦略」とは何か?(下)」)
 
 

執筆:イ・ダリョン=編集長

 
 
 


 
 
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