[特集]サムスン総裁に追い風…検察との闘争、間もなく迎える「最終審判」

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[特集]サムスン総裁に追い風…検察との闘争、間もなく迎える「最終審判」

以前から報じてきたサムスン電子イ・ジェヨン副会長に対する検察の捜査が、意外な形で終結を見る可能性が強まってきた。

イ・ジェヨン副会長が開催を申請し、その後、検察側の逮捕請求(※裁判所は却下)にまで至った検察庁捜査審議委員会は26日、株価操作および粉飾会計などを指示した疑いで検察の捜査を受けていたサムスン電子のイ・ジェヨン副会長について、捜査中断と不起訴勧告を行った。
 

10対3で不起訴に軍配

同委員会は、無作為で選ばれた識者や市民14名で構成される。中央日報(29日)によると、今回選ばれた委員長を除く13名のうち4名は法曹界(弁護士)、5名は学術界(法学者)、1名が報道関係、1名が社会団体、2名が宗教界の出身者だったという。

13名の委員たちは検察側と(イ・ジェヨン副会長の)弁護側の両方からそれぞれ説明を受け、委員たちで起訴妥当性について投票を行ったという。結果、13名のうち10名が不起訴妥当の側に投票した。10対3という「大差」については、韓国各紙から驚きの論調を持って伝えられた。また、検察による捜査の中断も勧告に加えられていることから、前出の中央日報記事では、イ・ジェヨン副会長本人や弁護側も驚いたと伝えられている。

同委員会は、サムスン物産と第一毛織の合併過程およびサムスンバイオロジックス粉飾会計などの過程において、イ副会長が報告を受けたり指示したりするなどの不法行為がなかったとのサムスン側の主張を認めた形になる。

同委員会の勧告に法的強制力はないが、同委員会の勧告をすべて受け入れてきており、不起訴や捜査中断は避けられないとの見方が韓国メディアでは強まっている。

韓国メディアによると、検察はこの件に関し1年7ヶ月間の調査を行い、サムスンの社員を計100回召喚して家宅捜索を50回余り行ったとされる。それ以前に行われた「チェスンシル事件裁判」なども含めると、イ副会長に対する検察の捜査と裁判は、4年近く続いた。特定の企業や特定の企業がこのように長期間検察の捜査対象となったのは、韓国でも類例を見つけるのは難しいとされる。
 

 

「民意」もサムスンに軍配

先週行われたストレートニュース紙による世論調査では、「イ副会長の拘束についてどう思いますか?」という設問に対して、過半数となる58.4%の回答者が反対と答えるなど、風はサムスンに吹いていた。

セグメント別でみると、イ・ジェヨン副会長の起訴については、保守層は8割近く(78.9%)が反対の意を示すのに対し、リベラル層は賛成が約47.5%(反対37.2%)となり、中間層は反対が62.5%(賛成26.5%)だったという。

サムスンやイ・ジェヨン副会長に対して批判的な傾向が強いとされるリベラル層でも、起訴に反対する数が少なくなかったことから、検察による同氏への度重なる捜査や、同氏が5月に出した(子への経営権継承を行わないという)声明などから、「イ副会長の禊は済んだ」とのイメージが徐々に醸成されていたようだ。

また、昨年の半導体不況や日本による輸出規制(輸出管理強化)、米中貿易紛争、そして新型コロナウイルスまで加わった危機的状況において、サムスン総裁が起訴されることは、(サムスン側が検察の逮捕請求に際して述べたとおり)「私たちの経済の未来のためにも決して望ましくない」とのメッセージも功を奏したのかもしれない。サムスン電子1社の売上で韓国のGDPの約8%に相当する。(韓国CXO研究所調べ)

ちなみに、今回の検察庁捜査審議委員会において、サムスン側の弁護士は、仮にイ・ジェヨン副会長が起訴された場合、「裁判が行われる6〜7年間でサムスングループは、致命的な危機を経験するだろう」とし、「合併過程を問題視するエリオット社をはじめとする海外投機資本が再び経営権攻撃を開始することが自明であり、これを防御するのに、数兆ウォンが必要になる」と述べていたという。(29日朝鮮日報)
 

残るは政治という変数

一方で、検察が、イ・ジェヨン副会長を不起訴にするかどうか、まだ確定はしておらず、勧告を退けてでも起訴に踏み込む可能性は依然として残っている。

野党・国民の党のアン・チョルス代表は29日、イ・ジェヨン副会長への対応について、「原則どおり処理されなければならない」とし、「これまでの捜査過程と20万ページにのぼる捜査記録の信憑性を信じるならば、堂々とイ副会長を起訴せよ」と述べた。

同氏はまた、「自由市場経済のモデルであるアメリカをみると、会計不正を犯したエンロン社は分解され、金融危機の主犯であるいくつかの企業は、歴史の裏側に消えた」と述べるなど気を吐いている。「少数野党としての差別化戦略」と評する韓国メディアもあるが、政治の後押し次第では、状況が変わる可能性は残る。

一方で、与党・共に民主党のパク・ヨンジン議員は29日、検察はイ副会長を起訴すべきであると述べつつ、「イ副会長の経済犯罪容疑について、1年7ヶ月も捜査しながら、起訴すらできないレベルの捜査をしたのであればユン総長は辞任すべきである」とし、「チョ・グク事件」などを通して与党と対立関係にあるユン・ソギョル検事総長を批判した。起訴してもしなくても打撃が避けられない状況にユン検事総長を追い込んだ形だ。

様々な利害や思惑が交差するなか、イ・ジェヨン副会長は間もなく「最終審判」を迎える。
 
(参考記事:「[特集]サムスン総裁への逮捕状請求の理由と背景」)
(参考記事:「[特集]サムスン総裁への逮捕状は棄却…今後の流れと経営への影響」)
 
 

執筆:イ・ダリョン=編集長

 
 
 


 
 
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