[特集]サムスンがソフトバンク傘下のARMを買う可能性

半導体 特集

[特集]サムスンがソフトバンク傘下のARMを買う可能性

ソフトバンク傘下で、半導体設計会社として名高い英半導体開発大手アーム・ホールディングス(ARM)の売却が取りざたされている。韓国ではサムスンによる買収可能性が論じられている。

今月14日、ウォールストリートジャーナル(WSJ)は、ソフトバンクがアームの売却などを検討していると報じた。ソフトバンクは4年前、同社にとって当時過去最大となる320億ドルでアームを買収した。

当時、孫正義会長は、アームの買収について、「囲碁でいえば飛び石。10手先、50手先を考えて打った」と述べるなど、大きな期待を持っていた。

WSJは、「孫正義会長兼社長はアーム買収が自社の《パラダイムシフト》になるとし、《モノのインターネット(IoT)》がもたらす可能性を追求することができるようになると述べていた」が、「そうしたネット接続端末向けにアームが開発したソフトウエアの販売は、買収による押し上げ効果を除くとむしろ横ばいとなっている」と伝えた。

ソフトバンクは、ビジョンファンド事業における損失を穴埋めするため、資産売却を進める必要がある。現在、アーム株の75%はソフトバンクが、25%は子会社ビジョンファンドが保有している。

アームは、モバイルアプリケーションプロセッサ(AP)を設計するファブレスを対象に、知的財産権(IP)、つまり設計図を売ることで利益を出している企業であり、「ファブレスのファブレス」といわれる。アップル、クアルコム、サムスン電子などは、アームの「コマンドの集合体(Instruction Set Architecture・ISA)」をベースにAPに搭載される中央処理装置(CPU)やグラフィック処理ユニット(GPU)を開発する。
 

 
内外報道などを総合すると、売却先としてはアップル、エヌビディア、サムスンの名が挙がっている。アップルに関しては、ソフトバンク側が売却をめぐって接触したと23日にブルームバーグが報じたが、「アップルには買収提案を推進する計画はない」と関係者は述べたという。ブルームバーグは同じ日に、米エヌビディアがアーム買収に関心を寄せているとし、「最近数週間のうちにエヌビディアがアームを巡る可能性について打診した」と伝えた。

サムスンについては、主に韓国メディアで取りざたされている。サムスン電子は昨年4月発表した「半導体ビジョン2030」において、「2030年までにメモリ半導体だけでなくシステム半導体の分野でもグローバル1位を達成する」と表明している。しかし同年11月にはCPUコアの開発プロジェクト(Mongoose)の中止を発表した。同社はGPUやNPUへの開発優先のためと説明しているが、システム半導体での競争力向上が容易ではないという印象を与えた。また、今年2月に発表された同社のフラッグシップモデルである「Galaxy S20」には、サムスン製のAP「Exynos」ではなく、クアルコムの「Snapdragon」が搭載された。

そのようななか、半導体設計会社として名高いアームが売りに出されたことから、サムスンが名乗りを上げるのではないかとの見方が韓国メディアでは浮上したのである。アームの持つCPUやGPUの設計図によって、サムスンの「Exynos」の性能を向上させることができるという期待だ。

また、アームの人材補充によって、サムスンのファンドリ事業にもプラスに働くという見方もある。台湾TSMCを追うサムスン・ファウンドリにとって、ファブレスとファウンドリを繋ぐデザインハウス(設計支援サービス)の生態系整備は重要な課題となっているが、アームの人材確保がそれらを解決するという見立てだ。(※APの競合他社が益々サムスンに依頼し辛くなるというジレンマは残るが)

孫会長はイ・ジェヨン副会長と関係が深いとされており、昨年7月の孫会長による訪韓時も二人が同じく車から降りてくる姿が報じられた。そのことが、サムスンによる買収を漠然と期待させる要因になっているようだ。
 

 
しかし、一方で、サムスンによる買収可能性を否定する報道も少なくない。主な理由としては、買収必要額が高すぎるというものだ。孫正義会長は、アーム買収時の320億ドル(約3.4兆円=現在レート)を下回らない価格での売却を希望しているとみられるが、アームが最後に公表した2017年の年間売上は1524億円、営業利益は243億円であり、その後も実績は横ばいであるとみられている。そのため、買収金額の回収が容易ではないという懸念がある。

もう一つは、独占禁止法への抵触懸念だ。モバイルAPの設計分野において世界的に影響力を持つアームを、同じく世界的影響力を持つサムスンが買収するには各国の当局から承認を受ける必要があるが、容易ではないだろうという見方だ。これは、エヌビディアにも当てはまる。ロイターは「アームの設計はコンピューターやスマートフォン、その他の機器であまりに幅広く使われているため、アームを買収した場合、エヌビディアは米クアルコムなどの競合企業に対し、排他的な力を持つことになる」とし、「欧州の独占禁止当局は通常、こうした案件に異を唱えるし、米国の当局も同じかもしれない」と27日に報じた。

上記のような理由から、ソフトバンク側は、アームの売却ではなく、IPOによって資金調達するのではないかとの見方も有力のようだ。
 
(参考記事:「[特集]アップルのCPU独自開発とサムスン・ファウンドリへの影響」)
(参考記事:「サムスン、国内デザインハウス企業にクラウド設計インフラを提供」)
(参考記事:「[特集]アップルのCPU独自開発とサムスン・ファウンドリへの影響」)
(参考記事:「[特集]サムスンの「超格差戦略」とは何か?(上)」)
 
 
執筆:イ・ダリョン=編集長
 
 
 


 
 
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