[特集]トランプ政権の対ファーウェイ半導体輸出規制拡大と展望(上)

半導体 特集

[特集]トランプ政権の対ファーウェイ半導体輸出規制拡大と展望(上)

本特集では、8月17日に米商務省が中国ファーウェイへの制裁を拡大させたことを受けて、韓国の政府系シンクタンクであるKIEP(対外経済政策研究院)が発表した報告書「トランプ政権の対ファーウェイ半導体輸出規制拡大と展望」(ヨン・ウォノ研究員)を日本語訳したもの二回に分けて掲載する。


1.概要

■2020年8月17日、米国の産業安全保障局(BIS:Bureau of Industry and Security)は、ファーウェイと海外子会社による継続的な脅威に追加的に対応するため、輸出管理規則(EAR:Export Administration Regulations)の改正を行った。

■今回の改正は、5月15日の改正を補完するものであり、3つの変更点があった。
– まず、BISはファーウェイの海外子会社38社をEntity Listに追加したが、これは米国の国家安全保障と外交政策の利益に反する活動に参加する危険性が高いからであると主張。
– 第二に、この規則は、ファーウェイとファーウェイの海外子会社に対する一時的な一般的許可(TGL:Temporary General License)を終了し、より制限された権限に置き換えた。
– 第三に、5月15日以降、BISが最近実施した特定の外国産品目(半導体)の規制を補完するために、「海外直接生産規定(foreign-produced direct product rule)」とも呼ばれるEAR§736.2( b)(3)「General Prohibition Three」を再修正した。

■米国政府が再び華制裁強化に乗り出した理由は、既存の規制の抜け穴を補完するためである。
– この改正案は、ファーウェイは、米国のソフトウェアまたは技術で開発され、生産された外国産半導体を獲得することを制限するためである。
– ウィルバー・ロス(Wilbur Ross)商務長官は、「ファーウェイと同海外関連会社は、中国共産党の政策目標を達成するために、米国のソフトウェアと技術で開発され、生産された先進的な半導体を確保するための努力を拡大した」とし、「私たちは米国の技術へのアクセスを制限することにより、ファーウェイとその関連会社は、米国の国家安全保障と外交政策の利益を毀損する方式により、第3者を通じて、米国の技術を獲得した」と述べた。
– マイクポンペイオ(Mike Pompeo)国務長官は、「米国の技術を習得し、世界のネットワークと、米国の個人情報を脅かすファーウェイの能力をさらに制限することにより、ファーウェイと抑圧的な中国共産党に直接打撃を与えた」と言及した。
– したがって、今回の改正は、5月15日の改定を補完し、ファーウェイおよびその関連会社に供給される海外生産の半導体を完全に遮断するものとなっている。
 
 

2. 今回(8月17日)のファーウェイ制裁拡大の主な内容
 

■米商務省の8月17日制裁措置の拡大は、3つで構成されている。
①ファーウェイ海外子会社をEntity Listに追加
②ファーウェイ関連の一時一般許可(TGL)の延長終了
③EAR規定改正を通じた対ファーウェイ半導体輸出規制の強化
 

イ. Entity Listに追加
 

■21カ国に拠点を置くファーウェイの海外系列会社38社をEntity Listに追加
 

ロ. 一時一般許可(Temporary General License)の延長終了
 

■2019年5月から90日ごとに延長してきた一時一般許可をもはや延長しないで終了する。
– 2019年5月にファーウェイがEntity Listに登録されファーウェイとの取引が不可能となったが、アメリカでは、既存のユーザーが他の機器に切り替えるまでの猶予期間を提供するために、一時的一般許可を今年8月までに5回にわたり90日ごとに延長してきた。
– 当初90日の延長は、ファーウェイ端末やファーウェイ機器を使用する通信プロバイダを利用するユーザー(特に地方の居住者)が、代替プロバイダを見つけるまで既存のファーウェイのデバイスとネットワークを一時的に使用する機会を提供することが目的とされた。
– 一時的一般許可が許容するのは、①既存のネットワークや機器の運用②既存の端末をサポート③サイバーセキュリティと脆弱性公開④正式に認定された標準的な機関による5G標準の開発に必要な参加など4項目ある。
– しかし、今回、一時一般許可の期限が満了し、一部内容のみに限定的な永久承認に変更された。今回の改正で、このうち③のみが(限定的)Entity Listに追加された(永久承認)。
 

ハ. EAR§736.2(b)(3)「General Prohibition Three」規定改正
 

■[適用範囲の拡大1]”ファーウェイに輸出されている海外生産製品”という条件は、改正を通じて具体化された。
– 8月17日の規定は、ファーウェイと関連した海外直接生産製品について次に該当する場合、BISの許可なしに再輸出(reexport)、海外からの輸出(export from abroad)、国内移転(transfer in-country)を禁止したものだ。
①海外生産製品が、ファーウェイが生産・開発する部品(part)・コンポーネント(component)、またはファーウェイが生産・購買・注文した機器(equipment)に使用されるか、含まれる場合
②海外生産製品と関連して何らかの形でファーウェイが取引に関与している場合。例:ファーウェイがバイヤー(purchaser)、中間受取人(intermediate consignee)は、最終受取人(ultimate consignee)、エンドユーザー(end-user)である場合には許可が必要

■[適用範囲の拡大2]第二の変化は、脚注1(a)と脚注1(b)のフレーズの削除によって適用範囲を拡大した点である。
– 5月15日版脚注1(a)のうち「ファーウェイとその関連会社が開発や生産をする製品」の部分を削除。
– 5月15日版脚注1(b)(2)のうち「ファーウェイとその関連会社が開発や生産をしたソフトウェアおよび技術を利用し」の部分をすべて削除。
– 再改正された8月17日脚注1(a)と1(b):
(a)改正された8月17日脚注1(a):海外生産製品が、米国の輸出規制リスト(CCL:Commerce Control List)上の特定ソフトウェアおよび技術を直接使用して作成された場合。
(b)改正された8月17日脚注1(b):海外生産品が米国産でありながら、同時に、米国の輸出管理リスト(CCL)上の特定のソフトウェアや技術が重要な役割をする製造装置を使用して生産された場合。
 

ニ.今後の手続
 

■今後の手続は、海外生産品目がEntity List「脚注1(a)」に該当するか、「脚注1(b)」に該当するかに応じて異なる。
– Entity List「脚注1(a)」に該当する場合は、製品が出荷されている場合(「en route」)を除いては、すぐに適用される。
– Entity List」脚注1(b)」に該当する場合は、9月14日の深夜まで許可なしにファーウェイとその関連会社に輸出、再輸出、または移転が可能。
 
 
(下につづく)
 
(参考記事:「韓国研究機関「ファーウェイ制裁、韓国半導体企業にも影響」」)
(参考記事:「米政府がファーウェイ追加制裁発表…系列海外38社を取引禁止リストに」)
(参考記事:「米輸出管理規定(20.8.27)原文」)
 
 


 
 
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