[特集]行き先が「迷走」するサムスンDの次世代ディスプレイ・QD-OLED

ディスプレイ 特集

[特集]行き先が「迷走」するサムスンDの次世代ディスプレイ・QD-OLED

韓国政府が、サムスンディスプレイによる量子ドット(QD)ディスプレイパネルへの事業転換を支援すると発表した。

23日、韓国産業省(産業通商資源部)は、「第27次事業再編計画審議委員会」を開き、サムスンディスプレイなど15社の企業の事業再編を承認したと発表した。事業再編企業に承認されると、企業の活力促進法(企活法)に基づいて事業転換計画から実行まで、政府の支援を受けることができる。韓国政府が大企業の事業再編を承認したのは、2017年7月以来、3年2ヶ月ぶりとなる。

今回の事業再編計画の承認によって、サムスンディスプレイおよび5社のサプライヤー企業(インジディスプレイ、Fine DNC、FINE TECHNIX、LTC、フェミョン産業)は、液晶表示装置(LCD)からQD OLEDへの事業移行を本格的に開始する。

韓国産業省の発表によると、インジディスプレイはLCDシャシーフレームからQD OLEDのボトムプレートに事業を転換する。Fine DNC 社はディスプレイモジュールからQD OLEDのベゼルプレートに、FINE TECHNIX社はモバイル機器・器具部品からフォルダブルフォンヒンジに、LTC社はLCD材料からQD OLED用隔壁材料に、フェミョン産業はLCD工程用洗浄剤からQD OLED用洗浄剤にそれぞれ事業を転換する。

QD OLEDに事業を転換するには、莫大な費用がかかると予想されるが、今回の承認による、サプライヤー企業の負担が軽減される見込みである。
 

サムスンディスプレイの脱LCD

サムスンディスプレイは、中国の低価格攻勢に押され、「脱LCD」を決意した。年内にLCD事業をすべて整理する。先月、中国のディスプレイメーカーTCLの子会社であるCSOTにLCDモジュールを製造する蘇州サムスンディスプレイの生産ラインの株式をすべて売却した。

サムスンディスプレイは、LCDの代わりに、QDディスプレイとQNEDに集中するツートラック戦略をとっている。

QDディスプレイは、自発光ディスプレイという点でOLEDに似ているが、発光材料として有機物の代わりにナノメートル(nm)サイズの無機物である量子ドットを使用いる。QNEDは青色LEDを発光素子とする。OLEDよりストが安く、OLEDのバーンイン問題も解決することができると評価されている。

サムスンディスプレイは、7月に韓国の忠清南道にある牙山(アサン)事業所において、「QD設備搬入式」を開催し、QDディスプレイへの転換を世間にアピールした。

昨年10月の同投資発表以来、TV用LCDを生産するL8ラインの一部設備を撤去し、QDラインを構築するためのクリーンルーム工事を進めており、8.5世代蒸着機を始め本格的な設備のセットアップに突入した。サムスンディスプレイは、来年から段階的なテスト稼働を経て、本格的な製品生産に突入する計画だ。

来年中に65インチのQD-OLEDパネルを月3万枚生産し、2025年までに生産量を徐々に増やす予定としていた。
 

親会社がまさかのスルー?

しかし、最近の報道では、サムスンディスプレイの親会社であるサムスン電子が、QDディスプレイを採用しないという見方が出ている。

朝鮮日報系の専門紙であるITチョソンは3日、「サムスン電子は、サムスンディスプレイが2021年に量産に乗り出すQD-OLEDパネルを適用したTVの発売を現時点で検討していないことが分かった」と報じた。

その背景について、同紙は、「サムスン電子は、世界TV市場においてQLED TVで利益を得ている」と分析。同紙はオムディアの調査結果を基に、「サムスン電子は第2四半期QLED TVを140万台販売した。 2019年の同期間(109万台)と比較すると28.2%増加した数値だ」とし、昨年比7%減のOLED TVに比べQLED TVが成功していると説明した。

ITチョソンの報道が正しければ、サムスン電子は「うまく行っている流れを変えたくない」と考えていることになる。実際、サムスン電子はQD以外にも、QNEDやマイクロLEDなど次世代ディスプレイも並行して研究開発を進めていることが知られている。タイミングによって採用が左右されるポートフォリオの可能性も、当紙では以前指摘したことがある。

ITチョソンの報道を裏付けるように、15日には中央日報が、「中国TVメーカーTCLが来年上半期(1〜6月)ごろに、サムスンディスプレイからQDパネルの納品を受けることを決めた」と報じた。

やはり朝鮮日報系のチョソンビズ紙も、すでに8月、サムスンディスプレイがQDの「評価用パネルをサムスン電子、ソニー、パナソニックなどテレビメーカーに送った」と報じていた。

QDディスプレイにもう一つ乗り気ではない親会社の代わりに、サムスンディスプレイが中国TCLなどをQDパネルの有力供給先に見定めた可能性がある。

今年上半期、サムスンディスプレイは、売上高13兆3100億ウォン(約1.2兆円)、累積営業利益115億ウォン(約10億円)を記録し、昨年上半期比でそれぞれ3.17%、93.86%減少している。
 
(参考記事:「[特集] サムスンの次世代ディスプレイの研究 (上)」)
(参考記事:「[特集] サムスンの次世代ディスプレイの研究 (下)」)
(参考記事:「サムスンD、QDディスプレイの生産設備を搬入…LCDラインは売却公募」)
 
(写真:QDディスプレイの生産設備搬入式を行うサムスンディスプレイの役員たち=同社提供)
 
 


 
 
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