[特集]拍車のかかる米の対中制裁、困る日韓の半導体企業

半導体 特集 通商・特許

[特集]拍車のかかる米の対中制裁、困る日韓の半導体企業

米トランプ政権による中国エレクトロニクス企業への圧力が止まらない。ファーウェイを筆頭に、その海外子会社が取引禁止リスト(エンティティーリスト)に追加された結果、ファーウェイは最新スペックの半導体を入手できなくなった。米政府はそれでも飽き足らず、今度は中国の半導体受託製造(ファウンドリ)企業であるSMICにも制裁を科した。

SMICは現在のところ、ファーウェイのように、米国商務省によって取引禁止リストに入れられたわけではない。しかし、米政府からSMICの取引企業に対し、取引継続には許可が必要であるとの通知が行ったとされる。輸出管理の強化、つまり事実上の取引制限であるとみるべきだろう。SMIC側も米政府によるこのような動きを認めている。

中国SMICは、台湾TSMCや韓国サムスンが持つ微細工程に比べ大きく後れを取っているとみられるが、ファーウェイへの供給可能性がある企業は許容しないという姿勢が米政府の動きから伝わってくる。中国解放軍との繋がりという名分が唱えられてはいるが、巷間言われているとおり、「米中間の覇権争いの一環」との見方も否定できないところだ。
 

ファーウェイへの輸出許可を申請した日韓半導体企業

ファーウェイへの制裁は、日韓の企業にも無視できない損失をもたらすと予想されている。先月韓国では、サムスン電子とSKハイニクスが米政府に対しファーウェイへのメモリ半導体輸出の許可を申請したと報じられていたが、今月には日本でも、ソニー(イメージセンサー)やキオクシア(メモリ半導体)がファーウェイへの輸出許可を米に求めたと報じられた。先月末にはキオクシアが東京証券取引所へのIPOを延期すると発表しており、ファーウェイへの制裁影響も取りざたされている。
 

米制裁は中国メモリ企業にも拡大?

米政府の矛先はファーウェイとSMICに留まらず、中国のメモリ半導体製造企業にも拡大するとの見方が出ている。韓国のアジアトゥデイ紙は5日、中国や台湾メディア報道を基に、米商務省が中国のNANDフラッシュ製造企業であるYMTC(長江存儲科技)と、DRAMを製造するCXMT(長鑫存儲技术有限公司)を取引禁止リストに追加する可能性があると報じた。

いずれもSMIC同様、世界的に影響力のある企業ではないが、多くの予算を割いて半導体産業を育成している中国にとっては大きな損失だ。取引禁止リストに入れば、中国企業は米国をはじめとする海外の最新設備を導入することができず、産業の発展を事実上断たれることになる。

さすがに、ここまで制裁が飛び火すると、武力衝突など不測の事態も頭によぎるが、今のところ中国側は自制しているようにみえる。米大統領選の結果を見据えているとの見方も出ている。トランプ現大統領はバイデン民主党候補に対して劣勢である。対中強硬策を一種の選挙対策のように駆使するトランプ政権を刺激するように、次期政権まで事態を静観しようという狙いなのかもしれない。
 

バイデン政権でも対中強硬か

しかし、バイデン候補側の対中国政策も、トランプに劣らず強硬であると内外で指摘が出ている。日本の経団連に相当する韓国の全経連の分析レポート(28日)によると、対中制裁において「民主党の態度の変化が目立つ」とし、「’16年の民主党政綱に明示された《一つの中国》(One China Policy)を認めるというフレーズが削除され、南シナ海、香港の課題などに言及している」と分析。続けて、「民主党は、(共和党にくらべ)強度は低いが、《中国の不公正慣行からの米国の保護》などを明らかにした」と指摘している。

リカードの比較優位論よろしく、対中強硬によって米中経済がデカップリングすれば双方に(そして世界に)不利益をもたらすのは必至だが、国際覇権が絡めば、物事はウィンウィンからゼロサムへと変容する。どれだけ経済的に非合理でも、政治(闘争)としては合理的なことが展開されることになる。

上で挙げた全経連のレポートでは、「大統領選挙の結果にかかわらず、韓国経済界は、引き続き緊張状態を維持しなければならない」と提言している。続けて、「中国への依存度が高い韓国は、過去’17年触発された米中貿易紛争とアメリカの強化された輸入規制措置によって直接‧間接的な被害を見るしかなかった」と嘆きのような言葉が並ぶ。

日本は中国への依存度こそ韓国ほどではないが、米中という超大国同士の対立構図のなかでは似たような立ち位置にある。どちらについても損失は免れ得ず、どちらも怒らせたくない。しかし、踏み絵を踏まされるというのが今起こっていることだろう。日韓間で争っている余裕はないはずだ。
 
(参考記事:「[特集]日韓分業正常化で半導体など8.7兆円の効果…韓国の「経団連」が関係改善を提言」)
(参考記事:「米国が自国半導体産業に巨額補助金、中国SMICには輸出規制か?」)
(参考記事:「[特集]トランプ政権の対ファーウェイ半導体輸出規制拡大と展望(下)」)
 
 

執筆:イ・ダリョン=編集長

 
 


 
 
あなたの感想をSNSでシェアする


この記事について、あなたの感想は?
  • 強い関心がある
  • 関心がある
  • どちらでもない
  • 関心がない
  • 全く関心がない