[特集]韓国の水素経済の現況と課題…水素自動車普及は世界1位も、インフラなど不十分

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[特集]韓国の水素経済の現況と課題…水素自動車普及は世界1位も、インフラなど不十分

日本の経団連に相当する韓国の全経連(全国経済人連合会)は8日、韓国における水素経済(水素産業および同市場)の現状についての分析と政策提言を行った。2050年における世界の水素経済の市場規模は約265兆円とされる。韓国は水素自動車の普及度は世界1位であるが、インフラは最下位レベルであると指摘された。以下に内容を掲載する。
 

韓国は、水素経済(水素電気自動車、燃料電池発電など)の分野において競争力を確保しているが、水素の生産・貯蔵・輸送の分野では主要国に比べ技術力の格差が存在しており、充電スタンドなどのインフラが不足していることが分かった。全経連は、韓国の水素経済の現状と課題を分析し、韓国の水素経済政策がR&Dを通じた源泉技術(水素生産技術など)の確保とインフラの構築拡大に焦点を合わせるべきだと主張している。
 

(写真:現代自動車の水素電気トラック=同社提供)

 
2050年の水素産業の世界市場規模は約265兆円、エネルギー需要の18〜20%を水素が占める

水素経済は、水素をエネルギー源として活用するために必要なすべての産業と市場を意味する。水素経済のバリューチェーンは、水素の生産 – 貯蔵・輸送 – 活用で構成されている。水素は、利用過程で有害物質(温室効果ガス、浮遊粒子状物質など)を全く発生させずに、化石燃料に比べ効率が高く、将来のクリーンエネルギーとして注目されている。

水素経済の規模は急速に拡大する見通しだ。水素委員会(Hydrogen Council)によると、2050年に水素は、最終エネルギー消費量の18%を占め4億台の乗用車と2千万台の商用車で活用される見通しとしている。これは全世界の自動車市場の約20%に相当する。また、市場規模は2.5兆ドル(約265兆円)に達し、3千万件に及ぶ雇用を創出すると予測されている。韓国でも70兆ウォン(約6.5兆円)の市場規模と60万人の新規雇用創出が予想される。また、年間CO2削減目標の約20%が水素活用を通じて削減され、気候変動への対応にも重要な役割をするものと期待される。
 

韓国は水素自動車などに投資と成果が偏重、インフラ・技術力は不十分

韓国は、水素電気自動車および水素燃料電池発電など、水素経済の活用分野で競争力を有している。韓国は2019年に乗用部門の水素電気自動車の普及台数が4,194台となり、全世界1位となった。水素燃料電池発電量も408MWで1位である。現代自動車は、世界初の水素トラック量産システムを備え、2025年までに10トン級水素トラック1,600台をスイスに輸出する契約を締結した。
 

(グラフ:全経連のグラフを基に本紙作成/韓国産業研究院統計)

 

(グラフ:全経連のグラフを基に本紙作成/韓国産業研究院統計)

 
しかし、水素産業投資が活用分野に過度に集中しており、技術力も先進国(米国、日本、ドイツ)に比べ遅れている状況である。世界の水素経済関連の特許出願のうち、韓国の割合は8.4%で、約30%である日本など主要国に比べて低い。また、水素自動車の普及量に比べ充電所が日本の3分の1にレベルに過ぎず、ユーザーの不満が多い状況となっている。
 

主要国、水素生産技術の開発とインフラ構築に注力

主要国は、水素生産技術の開発、海外からの輸入などを通じた水素の確保と充電ステーション、パイプラインなどのインフラ構築に注力している。

EUは環境に優しい水素製造技術の開発に注力している。太陽光、風力などの再生可能エネルギーを活用して、生産過程で炭素が発生しないグリーン水素の開発に集中し、2030年までに20〜40GW規模の水分解発発電(*注1)システムを設置する計画だ。また、2030年までに水素輸送パイプラインを現在の1,600kmから6,800kmにまで拡大し、安定的なサプライチェーンを構築する計画である。

*注1)水の分解発電:水を水素と酸素に分離して水素を生産の発展に活用する技術

日本は2030年までに、オーストラリア、ブルネイで生産する水素を輸入する国際水素輸入網を構築し、十分な水素を確保するための戦略を立てた。また、水素ステーションを、現在112個から900個に拡大して、家庭用燃料電池の発電機も10万台レベルで530万台まで拡大して本格的な水素経済市場の構築に乗り出す計画だ。

米国は風力発電ベースの水素生産技術開発を推進し(Wind2H2プロジェクト)、カリフォルニアを中心に、水素インフラ普及に力を入れている。カリフォルニア州は、2030年までに水素ステーションの建設に2,000億ウォン(約185憶円)を投資する予定であり、充電所設置費を最大90%サポートしている。
 

(画像:iStock)

 

水素経済では後発走者の中国は、水素産業育成のための4大圏域(北京、上海、広東省、大連)を設定し、技術開発と商用化に乗り出している。また、活用分野では、2030年までに水素電気自動車100万台、水素ステーション1000ヶ所設置など挑戦的な目標を設定した。

韓国もまた、水素経済で先頭に立つために、水素経済活性化のためのロードマップ(’19年1月)、水素R&Dのロードマップ(’19年10月)を策定し、水素経済法の制定(’20年2月)によって、水素の専門企業の育成、水素確保のための海外プロジェクトの発掘などに乗り出している。
 

水素活用分野の競争力維持ために源泉技術の確保・インフラ投資の拡大が必須

全経連は、韓国が水素経済の活性化のためのロードマップを備えたが、水素産業の生態系が、水素活用分野に重点を置いているという点を指摘。生産・保存・輸送部門への投資を拡大しなければならないと提言した。

水素経済の構築の目標の一つは、エネルギー自立のように独自の水素生産技術の確保が重要となる。しかし、まだ初期段階である水素経済の構築に重要な役割をする政府の研究開発においても、最近5年(’16〜’20)間のうち52%が水素活用分野に偏っていることが分かった。水素生産とインフラ部門への研究開発投資の割合は、それぞれ22.9%と12.9%に過ぎない。

全経連のユ・ファンイク企業政策室長は、「韓国が強みを持つ水素活用分野での競争力を維持するためには、これを裏付ける水素の確保体制とインフラの構築が不可欠である」と述べた。また、「政府は、水素の生産、インフラ部門への研究開発投資を増やし、水素ステーションの拡充に加え、公共部門の水素車の購入を増やし、初期市場の構築に取り組まなければならない」と強調した。


 
 
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